承認申請間近?デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「DS-5141」第2相の追加試験を実施 | 好奇心の扉

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大惨事の陰に隠された知られざる真実に迫ります。
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第一三共株式会社(本社:東京都中央区日本橋)は4月25日、株式会社希少疾病治療研究所(ODTI/本社:東京都品川区)と共同開発中の、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤『DS-5141』の国内第1/2相臨床試験の結果を公表しました。

この投与試験は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者7人を対象に、慎重に投与量を漸増させた上で、週1回を12週間連続皮下投与して、『DS-5141』の安全性と有効性を評価した最初の臨床試験です。


筋ジストロフィーのタイプ別患者割合


デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD=Duchenne Muscular Dystrophy)は、筋ジストロフィーの中で最も多く見られる最も重症なタイプで、幼児期に発症します。
X染色体伴性劣性遺伝で、基本的に男性のみに発病し、国内に於いては、4700人に1人(DMDの場合)の割合で見られます。

2~3歳で発症し、主な症状は筋力低下で、心筋や呼吸のための筋肉の筋力低下が起こります。呼吸筋の筋力低下が進むと、肺炎などの病気に罹かりやすくなり、殆どの患者が心不全によって20歳前後で死に至ります。(MSDマニュアル日本語版/筋ジストロフィーと関連疾患より)




デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、筋肉細胞の構造を維持するために重要な、ジストロフィン遺伝子の欠失・欠損のため、“ジストロフィンタンパク質”が産生されず、筋細胞に“ジストロフィンタンパク質”がほぼ全くありません。

X染色体にあるジストロフィン遺伝子
X染色体にあるジストロフィン遺伝子(DMD,Xp21.2)の位置。

正常なジストロフィン遺伝子配列
正常なジストロフィン遺伝子配列

「ジストロフィン遺伝子(Dystrophin gene)」は、79個のエクソン(構造)配列ならなり、このうちエクソン19、44、45、46、50、51、53または55のエクソンのいずれかが欠損すると、欠損したエクソン番号以降がmRNAに転写されなくなり、全て無効となり、正常なジストロフィンタンパク質が産生出来なくなり、筋力低下を来たします。


筋肉細胞とその他の神経細胞の遺伝子構成

ジストロフィン遺伝子は、79個のエクソン(構造)で構成されるヒトで最大の巨大な遺伝子です。
筋肉細胞を作るために79個のタンパク質配列を必要とします。
その他の脳神経や脳細胞、腎臓や眼底網膜を維持するためのタンパク質の産生と比較しても、筋肉細胞の産生が、いかに巨大な遺伝子を利用しているかが分かります。






『DS-5141』は、第一三共株式会社独自の修飾核酸である「ENA®オリゴヌクレチド」を有効成分としており、患者の筋細胞内に於いて、ジストロフィン遺伝子からメッセンジャーRNA(mRNA)が作られる過程で、欠失(変異)した遺伝子による情報を読み飛ばすこと(エクソン45スキップ)で、機能する後方のジストロフィンタンパク質を発現させ、結果として筋力機能の改善を期待する核酸医薬品です。

DS-5141はエクソン45スキップ核酸医薬品

『DS-5141』の国内第1/2相臨床試験では、投薬中止や臨床上問題となる有害事象など、安全性上の懸念は認められなかったと言う事です。
また、有効性の主要評価項目である“ジストロフィンタンパク質”の発現については、「一部の患者で発現が確認されたものの、全体として明らかな発現を確認することは出来なかった」、とする試験結果概要を発表した。

このため第一三共株式会社は、第1/2相臨床試験で実施した、週1回、12週間投与ではタンパク質の発現に十分な期間では無かったとして、48週間投与の第2相継続追加試験を実施し、効果を見ることにしたと言う。


一方、副次評価項目の、ジストロフィン遺伝子のエクソン45をスキップする事によって得られるメッセンジャーRNA(mRNA)の産生については、全ての患者で産生が確認できた事から、第2相継続試験で良好な結果が得られた場合、「新薬」として承認申請するか、更なる第3相臨床試験を実施するかは、今後の試験結果や、当局との相談を踏まえて検討するとしている。

当初、2020年度までに承認申請を実施したいとしていたが、遅れるかどうかは現時点では分からないとしている。





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