抗悪性腫瘍剤「レンビマカプセル」が切除不能な肝細胞癌の適応で追加承認を取得 | 好奇心の扉

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山下さん――あなたがあの日、待ち望んだ「レンビマ」が、承認され、薬価収載されましたよ‥‥。そうです、保険適応になったんです――



肝細胞癌治療薬レンビマカプセル
抗悪性腫瘍剤/切除不能な肝細胞癌の適応追加承認
「レンビマ®カプセル4㎎(一般名:レンバチニブメシル酸塩)」


エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)は3月26日付けで、抗悪性腫瘍剤「レンビマ®カプセル4㎎(一般名:レンバチニブメシル酸塩)」について、新たに「切除不能な肝細胞がん」に係る効能・効果の追加承認を取得したと発表した。

「レンビマ®(lenvima)カプセル4㎎」は既に、「根治切除不能な甲状腺がん」の適応で承認を取得しており、エーザイ株式会社が3月に、米メルク社(MSD社)と締結した『レンビマ®』の共同開発・共同販促提携契約後、初の承認となった。



肝細胞癌の腫瘍
肝細胞癌の腫瘍細胞

肝細胞癌の一次療法に対して、承認されている全身化学療法は限られており、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法の確立されていない治療分野)の高い疾患の一つです。

進行・切除不能な肝細胞癌(HCC)に対して、承認されている薬剤は、これまで2008年4月薬価収載の「ソラフェニブ(製品名・ネクサバール)」が唯一の保険承認薬でしたが、2017年に「レゴラフェニブ(製品名・スチバーガ◇2013年結腸がん)」が追加の保険承認され、2剤となりました。(但しスチバーガの評価は、重篤な肝機能障害が発現する事があり、使用可能な患者が限られている)

そのため、ソラフェニブ(又はレゴラフェニブ)投与後に進行・増悪(ぞうあく)した患者や、薬剤耐性が発現した場合の、新たな2次治療薬の登場が永らく待ち望まれていました。



肝細胞癌は、腫瘍血管網が発達した典型的な多血性腫瘍である事から、VEGF(Vascular endothelial growth factor=血管内皮細胞増殖因子)およびFGF(Fibroblast growth factors=線維芽細胞成長因子)誘導性の血管新生が、重要な役割を果たしていると考えられています。
肝細胞癌の新生血管網

また、肝細胞癌はFGFR1~4を発現しており、FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)シグナルの亢進が、癌細胞の悪性化や予後不良に関連することが示唆されています。





レンビマカプセル作用機序
「レンビマカプセル(レンバチニブ)」の作用機序

「レンビマ®カプセル4㎎」は、VEGFR(血管内皮増殖因子・受容体)1~3やFGFR1~4などの受容体チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有しており、腫瘍血管新生や、悪性化を阻害する事により、切除不能な肝細胞癌に対する治療効果が期待されます。

本剤は、エーザイ株式会社・筑波研究所で研究開発された薬剤で、これまでに甲状腺癌に係る適応で、米国、日本、欧州など50カ国以上で承認を取得している。

切除不能な肝細胞癌に係る効能・効果の追加は、2017年6月に承認申請を行い、迅速審査を経て、2018年3月23日に日本で、世界に先駆けて承認を取得した。




【~以下は、福島県総合南東北病院外科勤務のがん治療認定医:
中山祐次郎氏が寄稿された
日経メディカルの記事から引用抜粋し再構築しました~】



山下弘子さんは、肝細胞がんのため亡くなりになりました。
19歳で肝臓がんが見つかって3年――22歳の彼女は、肺転移もあり、抗癌剤治療中でしたが富士山登山に挑みます。
下山は馬に乗せてもらうサービスを利用したと言います。
彼女は今年2月末に容体が急変。この文章は、容体が急変し集中治療に入る数日前に書いています。

19歳の時、余命半年と言われた山下弘子さんは、これまでいくつかの臨床試験に参加し、最終的には参加できる臨床試験が無くなってしまいました。
本人もブログやツイッターで発信していましたが、それからいくつか保険適応外の治療を行なっていました。

「ソラフェニブ」を一次治療で使用すると、二次治療でプラチナ製剤は使えません。

そのため、効果が確実とは言えない臨床段階の薬剤や、海外での臨床試験が進んでいるものの、日本人に効果があるか不明な薬剤を――。

‥‥こうした積極的な治療姿勢が、結果的に山下弘子さんの予後をかなり延長してくれました。
承認された治療薬はこの時、1剤のみでした。
当初(2012年)、余命半年と宣告された山下弘子さんが、その後幾つかの治験に参加し、6年近くの間、充実した人生を送り、尚且つ、治療薬の治験に参加したのは、治療に尽力した医師や家族のサポートだけでなく、新たな治療薬の開発に携わり、『少しでも医学の時計の針を前に進めることができるのなら』という思いでした。


【中山祐次郎氏のことば】より
標準治療が終わってしまった後の患者さんに対して、我々癌の専門家は無力です。
いえ、正確にいえば「標準治療が全て無効になってしまったが、もっと積極的治療をしたい」患者さんには無力、ですね。

彼女は正にここに当てはまりました。そういう人がどこに行けばいいのか。
おそらく殆どの場合、自由診療(保険適応外)の癌治療を行っている処へ行っているでしょう。
その中には、インチキで、超高額な処もあります。

この人たちのキチンとした受け皿が無いのは、非常に大きな問題だと思っています。

  


山下弘子さん、あなたがあの日、喜んだ新薬「レンビマ」は、2017年1月25日に国内第Ⅲ相臨床試験が終了し、2017年6月23日「肝細胞癌に係る適応追加の承認」を申請、今年3月23日、承認されました。

そしてもう一つ、米国イーライリリー社が2018年4月4日(米国現地時間)に、肝細胞癌の患者に対する二次治療として、「サイラムザ®(ラムシルマブ)」の肝細胞癌に対する二次治療の有効性を評価した第3相臨床試験で、全生存期間の評価項目を達成したと発表しました。


サムライザ

「サイラムザ®(ラムシルマブ)」は、2016年6月20日までに日本国内で、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん/胃がん/結腸・直腸がん」の適応でに承認された、プラチナ製剤使用の有無を問わない治療薬で、2018年後半にも肝細胞癌の適応で、米国で承認申請される可能性が出てきました。


山下弘子さん――、あなたが病巣に挑み続けた魂の意思は、少しずつ‥‥しかし確実に、医学の時計の針を前に進めていますよ。

――ありがとう――。



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