クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制薬「ジーンプラバ」が製造販売承認を取得 | 好奇心の扉

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MSD株式会社(本社:東京都千代田区)は9月27日、抗クロストリジウム・ディフィシルトキシンBヒトモノクローナル抗体「ジーンプラバ®点滴静注625mg」(一般名:ベズロトクスマブ〈=bezlotoxumab、遺伝子組換え〉)について、クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制を効能・効果として製造販売承認を取得した。

ジーンプラバ点滴静注625mg
米国、及び欧州でも昨年末から本年に掛けて承認されましたが、
未だ発売準備中のため、製剤の商品写真はありません。


クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI=Clostridium difficile infection)は、抗菌薬(抗生物質)投与などによる腸内細菌叢(さいきんそう)の撹乱に伴い発症する下痢症の、主な原因菌種で、致死的な重症に至る例もある。

クロストリジウム・ディフィシルは、人間が元々腸内に持っている細菌で、通常、人間の腸内では種々の腸内細菌がバランスをとって共存し、クロストリジウム・ディフィシルの増殖を抑制しています。


クロストリジウム・ディフィシル細菌
クロストリジウム・ディフィシル細菌

しかし、長期に入院していたり、長期間抗菌薬を使用していると、腸内細菌の量と種類のバランスが崩れてしまうため、特定の病原性の細菌が増殖して、他の種類の細菌と置き換わってしまいます。
過剰に繁殖し感染の原因となる最も一般的な細菌が、クロストリジウム・ディフィシルです。
この細菌の増殖によって感染症を引き起こし、大腸の保護粘膜に炎症(大腸炎)を起こす2種類の毒素「Toxin-A(A毒素)、Toxin-B(B毒素)」が放出され、下痢などの症状を発症します。

クロストリジウム・ディフィシル細菌よる偽膜性大腸炎
クロストリジウム・ディフィシル感染症よる偽膜性大腸炎。


通常は、クロストリジウム・ディフィシル腸炎が軽度であれば、原因となっている抗菌薬の服用を中止して、別の抗菌薬に切り替えれば、殆どが軽快します。

発症に関与している抗菌薬は、クリンダマイシン、ペニシリン系(アンピシリンやアモキシシリンなど)、セファロスポリン系(セフトリアキソンなど)、フルオロキノロン系(シプロフロキサシンなど)が最も多く関わっています。


良い腸内細菌と悪い腸内細菌バランス
良い腸内細菌と悪い腸内細菌バランス
▲米国医学図書館国立衛生研究所文献によると、乳酸桿菌-乳酸菌は病原性微生物に対する防御作用があり、胃腸管や泌尿生殖器や膣に存在する事で、有害ウイルスの増殖を抑制しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15156050


クロストリジウム・ディフィシル感染症による腸炎の発生リスクは、年齢とともに上昇し、•重度の基礎疾患、•長期にわたる入院、•介護施設の入居者、•消化管の手術歴なども危険因子に含まれ、幼い乳児や小児でもリスクが高くなっています。

特に高齢者では、院内感染に注意を払う必要があります。

クロストリジウム・ディフィシル感染症は1度再発すると、その後の再発率は大きく増加するとされ、特に重症な基礎疾患や、免疫力が低下している患者で再発リスクが高いと言われています。



今回承認された「ジーンプラバ®点滴静注625mg」は、クロストリジウム・ディフィシルより産生されるトキシンB(B毒素)に高親和性に結合し、トキシンB(B毒素)を中和し、再発を抑制するヒトモノクローナル抗体です。

細胞傷害作用を持つトキシンB(B毒素)を中和する事で、腸管壁の傷害を抑え、抗菌薬治療と併せて単回投与する事でクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の再発を抑制します。


ジーンプラバ点滴静注625mgの作用機序
「ジーンプラバ®点滴静注625mg」の作用機序


「ジーンプラバ®点滴静注625mg」は、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の再発リスクの高い患者が投与の対象となります。診断には便サンプル内の毒素の特定が必要です。

尚、「ジーンプラバ(ZINPLAVA)」は、米国では2016年10月、欧州では2017年1月に承認を取得しています。




【製品概要】
【製品名】:ジーンプラバ®点滴静注625mg
【一般名】:ベズロトクスマブ=bezlotoxumab(遺伝子組換え)
【効能・効果】:クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制

【用法・用量】:通常、成人にはベズロトクスマブとして10mg/kgを60分かけて単回点滴静注する。

【使用上の注意】:
(1)クロストリジウム・ディフィシル感染症に対する治療は、別途適切に行うこと。
(2)本剤は、クロストリジウム・ディフィシル感染症に対する治療施行中に投与すること。
(3)本剤を複数回投与した場合のベネフィット・リスク(効き目&副作用)は不明である。
(4)18歳未満の患者に対する安全性及び有効性は確立していない。
(5)うっ血性心不全を有する患者[心不全が悪化するおそれがあるので、慎重に投与すること。]  




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