抵抗性又は難治性白血病治療薬「アイクルシグ®錠」が製造販売承認を取得 | 好奇心の扉

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大惨事の陰に隠された知られざる真実に迫ります。
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大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区神田司町)は9月28日、既存の分子標的薬であるBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)と、再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療薬「アイクルシグ®錠15mg(一般名:ポナチニブ塩酸塩)」の、国内における製造販売承認を取得したと発表した。

この「アイクルシグ®錠」(一般名:ポナチニブ塩酸塩)について厚生労働省は9月29日、国内での治験症例が極めて限られている事から、使用に当たって、心筋梗塞などの血管閉塞性事象、肝毒性といった重篤な副作用が表れる事がある旨の、留意事項を周知する通知を発出した。



アイクルシグ錠15mgポナチニブponatinib
「アイクルシグ®錠15mg(一般名:ポナチニブ塩酸塩,ponatinib)」


慢性骨髄性白血病(CML)及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)は、どちらもフィラデルフィア染色体異常によって発生する血液腫瘍です。

慢性骨髄性白血病は、殆どの場合、第9番染色体と第22番染色体が途中で切断され、それぞれ相手方の染色体と結合する「染色体転座」によって、異常なタンパク質を生じる事で発病します。


フィラデルフィア染色体
この転座した異常な染色体を「フィラデルフィア染色体」と呼び、
発症原因は、この異常な染色体からBCR-ABLタンパク質が産生され、
これが造血幹細胞を無制限に増殖させ、白血病の原因となります。

しかし何故、染色体転座が起こるのかは分かっていません。


一方、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病は、リンパ球が癌化し増殖する血液腫瘍の中で、成人の約30%に認められる、「染色体転座」によってフィラデルフィア染色体を有する急性リンパ性白血病の症状の事を言います。

既存の3種類のチロシンキナーゼ阻害薬
既存のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療効果。
3剤とも治療効果は高いが、副作用がひどく、薬を飲み続けられない「不耐容」が生じる。
治療抵抗性によって薬剤を変えても、最終的に投与が中止される場合も。


抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)や、再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療には、第一選択薬として、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が使用されます。

チロシンキナーゼ阻害薬の作用機序
しかし治療中に、BCR-ABL遺伝子変異による、変異型のBCR-ABLチロシンキナーゼが発現します。

この変異型のBCR-ABLチロシンキナーゼは、既存のチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性を示す為、十分な治療効果が得られなくなる場合がある。
また、既存のチロシンキナーゼ阻害薬の治療で発現する副作用により、約8%の患者で治療を継続出来ず、投与が中止される場合もあります。


従って、これら治療抵抗性や不耐容の患者においては、これまでと異なる新しい治療薬が望まれていました。



ポナチニブ作用機序
「アイクルシグ®錠15mg(一般名:ポナチニブ塩酸塩)」の作用機序。


「アイクルシグ®錠」は、米国アリアド・ファーマシューティカルズ社が創製した経口BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で、特に既存のTKIへの抵抗性の原因となる、『T315I』変異による変異型チロシンキナーゼを阻害します。

『T315』が『T315I』に変異したBCR-ABLチロシンキナーゼを有する、慢性骨髄性白血病、及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に効果を示します。




「ポナチニブ」Iclusigアイクルシグ
Iclusig®(FDA=米国食品医薬品局)
米国では15mg錠と45mg錠が販売。
本薬剤は2012年に「Iclusig®」として米国で、2013年に欧州で承認を取得しました。
大塚製薬は、2014年に米国アリアド・ファーマシューティカルズ社から、アジア10カ国/地域における本剤の共同開発・商業化の権利を取得。

尚、「アイクルシグ®錠」は国内において希少疾病用医薬品の指定を受け、2016年1月に製造販売承認を申請していたものです。



今回、異例の早さで承認を取得した背景には、9月23日に国立がん研究センター・先進医療評価室が公表した、『国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品について』と言う“未承認薬データベース”の結果が表れているのではないか…?
とも思われる。

それが『米国か欧州で承認され、日本未承認である、がん領域の医薬品数の推移~領域別~』と言う下表のデータ。


米国と欧州で承認され日本未承認薬の数
“ドラッグラグ”とも呼ばれている承認医薬品の時間差。
海外で開発・承認された薬が、日本国内で厚生労働省に承認され
医療現場で使用可能になるまでの期間や時間差の事。

この中で最も“ドラッグラグ”が深刻なのが、血液がんの治療薬で25品になり、日本で発売されていない為、海外から取り寄せるケースも多い。

未承認薬・適応外薬は基本的に米国での価格が反映されるので、一カ月当たり600万円を超す例もある。


このような背景から、大塚製薬は「アイクルシグ®錠15㎎」について、治療の選択肢が限られている患者に、倫理的観点から一日でも早く本剤が届けられるように、承認後から薬価基準収載までの期間、本剤の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験実施施設の内、薬剤提供が受け入れ可能である一部の施設にて、「アイクルシグ®錠15㎎」の無償提供を実施する。

本剤の承認条件に従い、製造販売承認後、一定期間全ての症例で使用成績調査(全例調査)を実施し、使用実態下での有効性、安全性に関する情報を蓄積し、本剤の適正使用を更に進めるとしている。



【効能・効果】
◆ 前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病
◆ 再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病

【用法・用量】
◆ 通常、成人にはポナチニブとして45mgを1日1回経口投与する。尚、患者の状態により適宜減量する。

「アイクルシグ®錠15㎎」の薬価収載前無償提供に関するお問い合わせ先は…
◆◆ 電話番号:0120-983-688 ◆◆
◆◆ 受付時間:9時~17時(土・日・祝日・休業日を除く)◆◆







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