どうして我慢しなくてはいけないものほど我慢できないのでしょう。

 

何かを禁止すると、ますますその対象に執着し、自制心を失うほどその対象に溺れてしまうことがあります。

Wegner DM, Schneider DJ, Carter SR 3rd, White TL,”Paradoxical effects of thought suppression.“,J Pers Soc Psychol. 1987 Jul;53(1):5-13.

 

心理学界で広く知られている「シロクマ実験」は、1987年に心理学教授のダニエル・ウェグナー氏らによって発表されました。

 

  1. 被験者: 34人の学生

  2. 指示:

    • グループ1: 「5分間シロクマについて考える」→「シロクマについて考えない」

    • グループ2: 「5分間シロクマについて決して考えない」→「シロクマについて考える」

  3. 結果:

    • グループ1は、「考えないでください」と指示された後、シロクマについて考えるように指示されると、シロクマについてより多くのことを考えました。

    • グループ2は、「考えるように」と指示されたため、その後は考えないように指示されると、シロクマのことが頭に浮かぶことはありませんでした。

 

禁止されると、かえってシロクマのことが頭に浮かんでしまうようになったことがわかります。


これをウェグナー教授らは「皮肉過程理論(皮肉なリバウンド効果)」と呼んでいます。

 

皮肉な、というのは考えではいけないのに逆にそこに集中してしまう状況をうまく表現していますね。

 

つまり、私たちが避けたいことが、逆に私たちの意識に引っかかることがあるのです。

 

 


対処法は?

 

実はシロクマ実験には続きがあります。

 

シロクマについて考えそうになったら「赤いフォルクスワーゲン」についてだけ考えるように指示すると、皮肉なリバウンド効果が起こらないことが報告されています。

 

別のターゲットを作り、そこだけに意識を集中させることが有効だということです。

 

実際に食べ過ぎを防止するとしたら、


ポテトチップスが食べたくなったら、ナッツを片手分ほど食べてみるなど違うターゲットに意識と行動を移すとストレスなく過ごせるでしょう。

 

 


 

まとめ


私たちは本来、一般的に健康に悪いとされるものに対して、無意識のうちに心を奪われます。

 

実は、それら「ダメ」とされたものこそが、私たちにとって最も魅力的であり、堪え難い存在となるのです。



食べ物の甘さ、脂肪の美味しさ、老化をもたらす要素に対して私たちは魅了され、ついつい制約を破ってしまうのです。

 

人間は禁じられたものに触れることで、一時的な安らぎや喜びを感じ、「ダメ」が増えれば増えるほど、逆にその魅力に引き寄せられてしまうのです。

 

対策としては、
禁止されたものと違う別のターゲットを作り、そこに意識を集中させる方法が有効です。

 

この心理の奥深さに気づき、うまく対処することで、普段の食事管理もストレスなくできるかもしれませんね。