日本の社会的な動向

 

・1998年頃厚生労働省(当時厚生省)が自治体に向けて化学物質過敏症についてのパンフレットを配布した。

 

・2009年医師国家資格試験出題基準に環境疾患として化学物質過敏症が盛り込まれた。同年保険病名認可。

 

・この20年間の間に文部科学省が各自治体、学校に対し「化学物質過敏症の児童・生徒に対し特別な配慮をするように」という内容の通知文書を何度も出している。また、過敏症のため教科書が使えない子どもたちへ特別な対応をしている。

 

・2017年2月22日第139回国家予算委員会において内閣府が認めた内容は次の通りである。①災害時の避難行動要支援者名簿に過敏症患者も登録すること②災害避難所に患者用のクリーンルームの設置を積極的に対応すること③経済的に困窮する患者は生活保護の加算が認められること④障害者差別解消法で定める障害者の対象になること⑤障害年金の対象になること

 

・相模原病院が中心となり(計6つの病院・盛岡病院・東京病院・相模原病院・南岡山医療センター高知病院・福岡病院)、2018年から過敏症患者の遺伝子解析が始まっている。

 

・化学物質過敏症についての看護教育における厚生労働省の見解(2021年6月29日 厚生労働省 医政局看護課)

 化学物質過敏症を含め、様々な症状を抱える患者に対応できるよう、症状や生活に及ぼす影響とその対応等必要な知識や技術を有する看護職の養成を行っているところである。具体的な教育の内容や方法については、養成所毎に教育目標を設定し、カリキュラムを構成している。その詳細な内容については各養成所の裁量によって決定されている。

 

保健師・助産師・看護師国家試験において、化学物質過敏症に関連のある項目は次の通りである。

①          疾患と徴候―主要な症状と徴候―感覚過敏、鈍麻

②          神経機能―感覚器系の疾患の病態と診断治療

③          身体防御機能の障害のある患者の看護―病期や機能障害のある患者の看護

④          公衆衛生における生活環境と問題への対策―住環境

 

・障害年基礎金・障害厚生年金申請の際は、血液、造血液疾患の診断書を使用できるようになった。化学物質過敏症専用の書式もできている。

 

・厚生労働省、内閣府等5省庁による香害ポスター作成

消費者庁ホームページ

http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/

 

・2017年日本消費者連盟では香害をなくす連絡会設立。日本消費者連盟が事務局となり、2022年超党派の議員により香害をなくす議員の会が結成された。

 

・化学物質過敏症患者へのヘルパー派遣についての国会質疑

2023年11月に、化学物質過敏症患者へのヘルパー派遣についての天畠大輔参議員議員の委員会質問

 

【 概要 】

天畠大輔参議員議員

化学物質過敏症は環境中の化学物質に過敏に反応して、多臓器の症状を呈し重症化すると仕事や日常生活にも支障が出てくる疾患である。国内では少なくとも70から100万人程度の患者がいると推定され、2009年10月に健康保険の適応が認められたが国としての対策は未だ十分ではない。

介助者の衣服の柔軟剤の香り等で頭痛やめまいが起きるため、衣服を無香料のもので洗濯する等の配慮が必要だが、化学物質過敏症に対応したことがない、介助者にそこまで求められないとして、事業所がヘルパー派遣を断っているという実状がある。ヘルパー派遣の拒否は障害者の社会参加を妨げ、命さえも脅かす。

今年度の主管課長会議資料で周知するのはいかがか。

 

厚労省

厚労省としては、化学物質過敏症の方も含め、正当な理由がなくヘルパーが派遣されないということがないようにしなければならないので、その旨自治体に対し周知していく。

柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするとの相談をふまえ、関係省庁と香りへの配慮に関する啓発ポスターを作成し周知広報活動を進めている。障害福祉サービス事業者への周知も進めていきたい。

障害福祉分野の主管課長会議資料で周知していくことを検討したい。

 

*化学物質過敏症によるヘルパー派遣拒否の問題を取り上げた質疑の文字起こしと字幕付き動画はこちら

Xユーザーの天畠大輔(参議院議員)(@skyfarm1229)さん

 

https://twitter.com/skyfarm1229/status/1772933475034640407?s=61&t=AAuyb-1moNjtkQatE4TU8w

 

 

・環境疾患過敏症患者・障害者に対する合理的配慮

2024・2・27 衆議院予算委員会第5分科会における質疑(厚生労働大臣・内閣府等)

①今年4月1日から、改正障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供が義務化されるが、化学物質過敏症も障害者差別解消法の対象である。改正後の障害者差別解消法 第8条第2項に則って、意志の表明があった場合には、柔軟仕上げ剤等、香料に対する配慮も合理的配慮の提供にあたる。前例がありません、特別扱いできません、といったことは発言をしてはならない。対話をしながら措置をとること。

②ケアプランがあるにも関わらず介護サービスの提供がされないという事態があってはならない。提供が困難であると認める場合には居宅介護支援事業者へ連絡適当な他の事業者の紹介等の必要な措置が速やかに講じられなければならない。

③過敏症は障害者であり、香りによって症状が悪化することは間違えない。香りに対する合理的配慮は必要である。内閣府では、障害者差別に関する事例データベースに化学物質過敏症に関係する合理的配慮、不当な差別的取り扱いなど今後加えていく

④厚労省では平成29年度から過敏症の研究をしており、化学物質過敏症のうちの70パーセントが柔軟剤等の香料が症状出現の契機であったと報告がある。香りでお困りの方がいるのは事実。

 

・化学物質過敏症患者へのヘルパー派遣拒否の問題について

 

化学物質過敏症患者へのヘルパー派遣拒否が起きないよう厚労省が周知

 

障害保健福祉関係会議資料

 

令和6年3月25日:主管課長会議資料

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigi_shiryou/index.html

 

主管課長会議資料 5、125,126ページ

https://www.mhlw.go.jp/content/001231508.pdf

 

【 概要 】

・市町村においては、管内の障害福祉サービス事業者等に対し、化学物質過敏症のある利用者へのサービス提供にあたっては、香り付き製品の使用について配慮したサービス提供に努めるよう情報提供をすること。

・訪問系サービス等の指定事業者は、正当な理由なく化学物質過敏症のある利用者へのサービス提供を拒んではならない。

・訪問系サービス等の指定事業者は、化学物質過敏症のある利用者へのサービス提供にあたっては、香り付き製品の使用について配慮したサービス提供に努めること