09 恩師との再会 | あるハラスメントの告発

あるハラスメントの告発

ある市役所内で実際に起こった「係長の乱」に着想を得て執筆したもので、いわゆるバブル世代の市役所の管理職(バブル時代に市役所にしか就職できなかった人たち)と、一人の中堅市役所職員との壮絶な職場内バトルを綴ったものです。

 自分たちの新規プロジェクトを越智に潰されはしたが、企画政策部門の私のチームには、日常的に市役所内の様々な部門から政策調整の相談が寄せられており、それに優先順位を付けて対応しようとしていた時、粟林が「都市計画の部門から新規の道路計画の協議の申し入れが来ていますが、急ぎの要件ではなさそうなので、後回しでいいですか?」と聞いてきた。

 都市計画部門と聞き、ある考えが浮かび、「いや、ほかの部門の案件も優先順位的には大差がないから、その案件を先に片付けよう。私と粟林の2人で対応しよう。」と伝えると、粟林は素直に「了解です!」と答えた。

 都市計画部門には沢村部長がいる。


 沢村部長は私がヒラ職員として初めて企画調整課に配属された時の直属の係長であり、私にとって仕事の恩師ともいえる存在である。そして彼は越智と同い年で同期という間柄だ。

 私が仕事をしている庁舎から車で30分ほどのところにハード整備部門が集まる庁舎があるため、そこに我々が出向き都市計画部門と協議をする事となった。

 都市計画課の担当者からの話をじっくりと聞いてはみたが、ハード整備部門らしい金に無頓着な提案であったため、市役所の財政への影響の再検討や整備予定地域の住環境の向上がアピールできる計画に修正するようアドバイスをし、継続的に協議するということに落ち着けた。

 協議を終えたところで、粟林に地図や関係資料のコピーをもらってくるように指示を出し、自分の裏の目的を果たすため、沢村部長のデスクに向かった。

 沢村部長のデスクには、両サイドに袖机があり大量の資料が積まれており、地震が起きようものならいつでも山が崩壊するような状態だった。山崩れが怖いのか、同じフロアのほかの職員のデスクとはかなり距離があけられている。

 沢村部長のデスクの前に立ち、こちらから声をかけようとした瞬間に、沢村部長の方から「おう!林口、久しぶりだな。今日はウチの担当と打合せの予定だったな。」と声をかけられ、さらに「そろそろ俺のところに来る頃だと思っていたよ。越智のことだろう。」と先手を取られた。

 さすが恩師である。私の状況はすべてお見通しという表情だ。



つづきます