人生初のダイエットで-4㎏ | 折り合いとバランス。ー過食を続ける30000日ー

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死にそうになる恋をしたかった。
失ったことで、愛おしい、を知った。
死んだ時、迎えにきてくれるのは、あなたがいい。

「ねえ、海行かない?」

 

その時は突然やって来た。

 

彼は海が好きだ。春休みもオーストラリアへ行って、ビーチでワーホリで来ていた女の子と遊んだって話を聞いたことがある。

でもサーフィンをやるわけでもないし、ダイビングをやるわけでもない。ただ、ビーチでのんびりするのが好きみたい。

 

なんて返事したかは忘れた。でも、海に行くことは決まっていた。複雑だ・・・。

 

好きだから一緒にいたい、遊びに行きたい。

でも彼の前で水着になるなんていやだ。彼だけじゃなく、誰の前でもいやだ。

 

私はいわゆるぽっちゃり体型だ。小学校からずっとそうだった。太っていると言われれば納得しそうなくらいのぽっちゃり。

実際はいうほど太ってはいなかったと思う。今ならわかるけど、ちょうど男好きしそうな肉感的な感じ。

でも、思春期の私はそんなの知らないから、体育着になるのすら嫌だった。

体系は、性格に次ぐコンプレックスだった。

 

大学に入るまで、ぽっちゃりな私がモテるなんて夢にも思わなかった。

キレイ系でもカワイイ系でもなく、ちょうどよい可愛さ加減で、ちょどよいぽっちゃり加減だったんだと思う。

くわえて、内向的な性格が、つつましやかでおっとりしてるって受け取られ、正直相当モテた。

 

藤森さんと海に行くためにダイエットしなきゃ、水着も買わなきゃ、新しいサンダルに洋服も買わなきゃ。

あっ、美容院にも行こう。バッグも欲しいな。アクセも新調しよう。口紅も新しい色買おう。

で、一番やらなきゃいけないのがダイエット・・・。海へ行くまであと1週間・・・、お腹だけでも引っ込めないと。

 

そこから鬼のようなダイエットを始めた。

 

大学では、同級生やアーチェリー部の同期がいれば、一緒に大講堂や学食でランチした。

「ダイエットしてる」とは言えず、友達はチョコレートとか「ひかりちゃん、これおいしいよ!」って分けてくれる。いらないのに・・・。

 

でも誰もつかまらないことも多くて、そんな日はお母さんの作ってくれたお弁当をトイレの個室で食べてた。

「ひとりごはん」が恥ずかしかったんだ。

男の子たちは誘ってくれるけど、男の子の前でご飯を食べるという行為も恥ずかしかった。

でも、トイレご飯はやめた。お弁当の中身は捨てた。痩せなきゃいけないから。

 

アーチェリー部の部活からバイト先へ向かうあいだのパン屋に寄るのもやめた。

お腹がすいてしかたないけど、バイトに入れば、忙しさで空腹も紛れる。

それに、パントリーのおばちゃんが半強制的にまかないを食べさせてくるから。

 

海に誘われた日から、バイトのまかない一食の生活が続いた。

おかげで人生で初のダイエットは成功した、4キロ体重が落ちた。

毎日体重計に乗って数字が減っていくのを見るとわくわくした。あんなにコンプレックスだったおなかもだいぶぺったんこになった。

まだまだ足りないけど仕方ない。海は明日に迫っている。

 

「ねえ、水着ってどんなの?俺さビキニとか好きなんだよね」

 

無理だよ、それはさすがに・・・。察してよ・・・。