折り合いとバランス。ー過食を続ける30000日ー

折り合いとバランス。ー過食を続ける30000日ー

死にそうになる恋をしたかった。
失ったことで、愛おしい、を知った。
死んだ時、迎えにきてくれるのは、あなたがいい。

過食症と愛に悩まされるひかりの物語。人生をどう生きてゆくか、どう生きてゆけるのか、そもそも生きてゆきたいのか・・・。何度も過食症に向き合おうとし、現実から逃避し、愛を求め、人を傷つけ、自己嫌悪と少しの希望の中で生きている10000日間。
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部活帰りに買った、おやつ系の甘いパン・・・。

 

それが、ひかりの過食の始まりだった。

でも、その時は、それに気づかなかった。

 

「そういえば、海外のあるミュージシャンが、拒食症になって亡くなったな」なんて、ぼんやり思い出すくらいで、“摂食障害”なんて、自分とはまったく関係ない、別世界のことだと思ってた。

 

 

 

今年で、ひかりは48歳になる。

結婚し、こどもも2人いる。

 

「部活で運動したあとに、小さなおやつパンを食べるくらい、問題ない。むしろ、疲れた体にエネルギー補給するべきだ」と、普通の人なら考える。

 

「食べたいなら、食べてから、運動すればいい。

たががパンひとつ、ケーキひとつ、簡単にカロリー消費できるよ」

 

ひかりだって、そんなことは分かっている。

分かっているが、そう簡単な問題じゃないんだ。

 

「食べたい」っていう欲求が抑えられない、その突発的な行動を引き起こす“気持ち”が問題なのだ。

 

落ち込んだとき、傷ついたとき、寂しいとき、

緊張するとき、恐怖にかられたとき、焦ったとき、

 

その不安定な心を打ち消したくて、ただ、ひたすら食べる

食べて、何も考えられないようになりたいんだ。

 

「食べたって、そんな不安を打ち消すことはできないよ。

自分にちゃんと向き合って、解決しなくちゃ」

 

そんなことは分かってる。

でも、自分に向き合うのが怖いから、食べる。

自分の弱さを知りたくないから、認めたくないから、食べる。

 

摂食障害になってしまった人は、きっと、みんな分かっているんだろう。

自分がどうすべきで、自分がどうありたいのか。

 

だけど、何かがトリガーになって、我を忘れてしまう。

 

食べて、落ち着いて、正気に戻ると、「また、食べちゃった・・・」と、

自分の弱さに直面し、落胆し、傷つく。

 

自分で自分に傷ついて、そして、そのつらさや不安を打ち消したくて、また食べる。

まるで、負のスパイラルだ。

入り込むと、二度と抜け出すことはできないのかもしれない・・・

 

ひかりのその後の30年近くの人生を変えてしまった、「たったひとつのおやつパン」

 

 

 

48歳になろうとするひかりが、今、考えること。

 

「この負のスパイラルに対し、抗わずに受け入れる」ということ。

 

ひかりは、ずっと治したいと願ってきた過食症を治すのではなく、「過食症と一生付き合おう」と覚悟を決めていた。