2009,7.18 20:45
今日も暑くて、なかなか外に出る気にならなかった。
名古屋はまだ梅雨明けしていないというのに、全然雨が降らない。
雨が降ると、少しだけ落ち着く事がある。何故だか彼に会えるような気がしてならない。
どうか雨が降りますように。 彼に会える訳ではないけれど。
今はこれくらいしか考えられない。
そうそう、コンビニに行ってからの話しだったね。
ガソスタの向かい側にあるコンビニ行き、プリンとお菓子をぶらさげて帰ってきた。どうしても彼の事ばかりが気になって、竹ちゃんの顔がまともに見られない。
「寒かった?風邪ひかんように気をつけなかんよ」
彼は何気なく私に言った。そんな一言さえも嬉しくて仕方なかった。顔が自然とにやけてしまいそうになる。けれども私はぐっとこらえ、ただただ、平然を装う事しか出来なかった。
プリンを食べて少し時間がたった頃
「そろそろ帰るぞ~」
竹ちゃんが言った。もう少し彼と同じ空間にいたかった。そんな事を思いながら私は何も感じないようなふりをして帰り支度をした。彼と他のアルバイトの人達に軽く別れの挨拶をして、私は竹ちゃんと車に乗り込み、竹ちゃんの家に向かった。車の中では、学校の話や家族の話をした。どうしても彼の話から話題を遠ざけたかった。自分の気持ちを隠しきる自信がなくて、とにかく彼の話題を竹ちゃんと話す事だけは避けたかった。
家に着くと私は先にお風呂に入り、竹ちゃんがお風呂に入っている間、ずっとベランダで星空を見ていた。
彼もこの空を見ているだろうか。火照った身体に寒い風が心地よく感じた。この時私はまだ気付いていなかった。自分の体があんなにも汚れていたなんて。
彼に出会って初めて感じたこの気持ちに、戸惑いと驚きを感じた。彼は人の物だけど、初めて恋をした私にとって、この先に待ち受ける世界が何故だか明るい物にしか思えなくて、初めておもちゃを買ってもらった子供みたいにはしゃいでいた。
「風邪ひくよ?」
竹ちゃんがお風呂からあがり、2人でベッドに入り他愛もない会話をしながら朝を向かえ、いつの間にか眠っていた。気付いた時には昼の12時を過ぎていた。
重たい身体を起こして洗面台へ向かう。竹ちゃんは隣でまだすやすやと寝ていた。じっと竹ちゃんの寝顔を見つめ、ため息をついた。この人がいなければ、私はきっと生きていないだろうと思う事が多々ある。竹ちゃんがいなけれ、今の私はいない。この人がいてくれたから、乗り越えられた事がある。だけどそれも昨日までの話しだ。あまりの急な心の変化に、自分自身でもどうしていいのか分からなかった。ただ今はもう、この存在が無くなってしまえばいいと、そう願う事しか考えられなかった。
鏡を見て、昨日の夜を思い出す。彼の顔が浮かんだ。彼の声を思い出す。ただそれだけでなんとなく嬉しくなり、学校に行く足取りも軽くなった。
その時は、ただこれだけで満足できた。人はどうして欲が出てしまうのだろうか。人間はどうしてこんなにも我儘なんだろうか。大好きな物に程我慢が出来ない。大事なもの程大切にできない。
当時、17歳の私が好きになった人は、私が初めて本気で恋をした人でした。優しくて強くて、周りの人達を自然と笑顔にさせる。誰からも好かれるような、そんな人でした。
眠っている竹ちゃんを起こさないように、私はそっと竹ちゃんの家をあとにした。竹ちゃんの家から千種駅まで歩いた。
昨日の出会いは夢?現実?
彼は本当に竹ちゃんの彼氏なのだろうか。
などと、有り得ない事を考えながら学校へ向かった。
戻る事の出来ないこの気持ちを、あの頃の私はどうして手に負えられると思ったのだろう。
彼と初めて会ったあの日から、ちょくちょく彼とご飯などを食べに行くようになった。もちろん竹ちゃんも一緒なのは言うまでもない。3人で何を食べようかと話し、飲みつぶれるまで飲んで、他愛のない会話や将来の話し、自分の家族の事や悩み事。何でも話し合える仲だった。
私と彼は、初めて出会った日とは全く変わり、とても仲良くなった。竹ちゃんの家でDVDを見ている時も、彼が私の膝枕で寝る事だってあった。それでも竹ちゃんは
「こいつ馬鹿だから頭軽いでしょ」
なんて言っていた。私の気持ちも知らないで。この2人はもう7年の付き合いになるらしい。信頼関係があってこそそういう事が言えるものなのだろうか。それともただ単に焼きもちを焼かないだけなのだろうか。
私の気持ちは爆発寸前だった。彼の体温が直接伝わってくる。彼の寝顔も見られる。そこまでの距離にいるのに、どれだけ近くに感じていても、どれだけ彼に触れたとしても、彼が私のものになる事はなかった。それどころか、彼の携帯番号さえも聞く事が出来なかった。私は本当に竹ちゃんの生徒としてしか見られていなかった。