昨年11月に施設実習に行っていた学生Aのこと。
アセスメントができなくてカンファレンスのたびに指導者とともに私に質問を浴びせられていた。
目にしたこと、聞いたことなど、表面的に見えることはつかめているが、なぜそうなのかの考え方ができない。
自分の考えは言うが、なぜそう思うのか、そこに根拠がない。
対象者がなぜそのような言動をするのか、どんな心情の表れなのかが考えられない。
手を替え品を替え、いろんな角度から誘導質問をしてみるのだが、対象者の心情を慮ることができない。
例えば・・・と学生自身のことに当てはめて誘導してみても、「この先こうなることが予想されるからこう考える」と言う発想ができない。
ついには「わからない!」と言ってもう考えるのをやめてしまった。
できないのはまだ許すが、放棄するのは許さない。
だから合格させず14日間の追加の実習を課した。
ものすごく不満を言ったが、考えることを放棄する者に単位はやらないと突っぱねた。
国家資格を持つ専門職になりたいのであれば、できるようにならなければならないし、何より放棄する態度が問題であることをとくとくと説明した。
不満は解消されていなかったが、渋々追加の実習を受け入れた。
2月に課された実習を行ったが、カンファレンスの時に聞いた誘導質問に初めて対象者の心情に関する考察が返ってきた。
さらに突っ込んで聞いていったら、「もしかしたら〜〜ってこと?」と根拠のある考えを述べた。
「なんかわかった気がする」と言い、「例えば〜〜とか、〜〜とか」と自分主体でなく対象者主体の考えが出てきた。
バラバラだったものが繋がった瞬間だと思った。
たまたまかもしれないが、次の実習で確認すればいいレベルにあると判断し、追加の実習を合格にした。
今A君は最後の長期実習に出ている。
先週のカンファレンスで彼が示した資料には、しっかりと根拠のあるアセスメントが記されており、対象者の心情を汲み取った考えが書かれていた。
何がきっかけかはわからないが、彼はもう考え方と方法を理解したようだ。
一昨日彼は考えに行き詰まったので助言が欲しいと、実習が休みの日に学校に来た。
半年前にはわからないと言って考えることを放棄した彼が、今は休み返上で自ら助言を求めに訪ねてくる。
教員として、学生の成長を目にするのはこの上ない幸せだ。