ガッサーン・カナファーニーの「まだ幼かった、あの日」 | akhiltype6さんのブログ

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松尾 和子 さん

11時間前 · 

5月15日(火)15日目 参加しました。
パレスチナ連帯!ガザと共に!15日間行動(5/1~5/15)

@梅田ヨドバシカメラ前 18:00~18:30

 

多くのかたと共に声をあげることができました・・・・

トリニダード・トバゴのお二人に今日またお会いできました。
今回、パレスチナを想う、いろんな「外国」のかたたちと出会えたことは、

大きなおどろきであり、喜びでした。
イスラエルの女性たちとも・・・・。心は通いませんでしたが・・・

2014年の時でしたか、パレスチナのかたから、「出でよ!世界市民!」という発信がありました。
あまりにも民族浄化、植民地支配のなんたるかを知らなさすぎる自分ではあるけれど、

いつか、本物の世界市民となって繋がっていければなと思います。

 

松尾 和子 さん

昨日 10:18 · 

 

終了日: パレスチナ連帯!ガザと共に!15日間行動(5/1~5/15)

昨日 10:17

5月10日にてっちゃんが朗読しました、

 

ガッサーン・カナファーニーの

「まだ幼かった、あの日」(岡真理さん訳 前夜2005夏より)

です。
(ガッサーン・カナファーニー‹1936年4月9日~1972年7月8日›は

 パレスチナの小説家でジャーナリスト。PFLPの広報官でもあった。1972年に爆殺された。)

 

 

―朝の太陽の朱に染まって、きらめく飛沫が、銀色の岸辺の砂を洗い清めていた。

 

身をよじったような棗椰子の樹々が、気だるげに垂れ下がった羽状の葉から夕べの眠りを振り払い、

刺に覆われたその腕を空の彼方へと持ち上げていた。

その向こうにアッカーの街の市壁が暗い藍色を見下ろすように聳えていた。
右手にはハイファーから来た道。左手には、丘陵の背後から姿を見せ始めた日輪が、

うら若い朝のはにかみで樹々の頭を、水面を、道を、赤みがかった紫に染めていた。

 

アフマドは、砂糖黍の茎で作った笛を籠から取り出すと、

車の片隅にもたれかかり、永遠の恋人の、あのもの寂しく恨めしげな調べを奏で始めた。

このガリラヤ地方全体に静かな地上の星のように散らばる村々なら、どこであろうと彼は暮らすことができただろう。

 

 バスは明け方の息づかいの中を密やかに走っていた。

物寂しげな調べは、その雰囲気にふさわしかった。まさにそれゆえに、

乗客の誰一人として、その調べを意外に思うものはいなかった。

自分たちをとりまく物たちのことごとくから、

そのような調べが湧き上がることをみな、期待していた。

実際のところ、それが起きないことの方が驚きだった。
右手には畑がどこまでも続いていた。

血のような赤みを帯びた緑がさざ波のように揺れていた。

銀色の砂の上にあがろうと波は永遠にやむことのない努力を続けていた。

 

金属の板で囲まれたその小さな世界 ―バスー のなかで、

物寂しげな調べが、その朝、

ハイファーの街のキング・ファイサル通りでバスを待ちながら、

はじめて挨拶を交わすまでは見ず知らずの他人だった二十名ほどの人間たちをある種の絆で、

声に出して発することもできなければ目にも見えない絆で結びつけていた。

 

その小さな世界には雑多な者たちが混在していた。

ガリラヤ地方の穴という穴から、壊れたチューブのように港湾が吸い込んだ労働者たち、

もはやいつとは思い出せない昔に、結婚によって縁ができたハイファー出身の農民たち、

サファド出身の男たち、女たち、

それから、ウンム・アル=ファラジュからやって来た幼い男の子が一人。

 

ハイファーの父親がまだ生きているかどうか確かめるために、母親が少年を寄こしたのだった。

男の子は手紙をたずさえて戻るところだった。

アル=カーブリーの土地に関する訴訟について、

法廷での審議の前に調査するよう任命された弁護士もいた。

一人息子の縁談をまとめようとしている女性。

食料やら、平たいパンやら、煉瓦の釜で調理した鳩やらが詰まったいくつもの籠。

子どもの玩具、笛、見知らぬ人々がほかの人々に宛てたたくさんの手紙。

砂糖黍でできた笛。持ち主の青年は昨日、学校が休みになったばかりだった。

運転手は女房を知り尽くしているように道を知り尽くしていた。

 

ハイファーから、ネックレスのように湾を取り囲む曲がりくねった道を上っていくと、

棗椰子の樹々が生い繁り、当惑したように身をよじらせながら、

海から吹き渡る風と無言のまま懸命に闘っている。

その下ではナアミーン川が侘しげに、物憂げに、

だが澄みきった水を、賑やかに泡立つ波へと注いでいる。

波は、穏やかな頑固さでもって、それを後ろに押し返そうとする。

そこから車は道を上っていく、

アッカーへ、マンシーヤへ、サミリーヤへ、マズラアへ、ナハリーヤーへと。

 

東へ曲がり、何十もの村々を抜けて。

その旅のあいだじゅうずっと、そこここでその荷を降ろすのだった。

あるときは乗客を、あるときは籠を、またあるときは手紙を待ち望んでいた男にその手紙を、

そして、夫を待つことができなかった女にその亭主を。


男が近くに座っていた男に言った。
「この青年は、笛がうまいねぇ。」
だが、相手の男はそれに応えず、

上等なクリームを作る素焼きの壺のなかで自分も一緒に攪拌されているかのように、

笛の調べに身を任せたまま、窓の向こうをまなざしていた。
男の子は傍らに座っている年かさの女性の胸に頭をあずけ、眠りに落ちていた。

別の女性が、その子を知っているわけではなかったが、

艶やかなゆで卵をパンに挟んで、男の子が目覚めたら食べさせてやろうと待っていた。

運転手は笛の調べに合わせて口ずさんでいた。

 

山を持ち上げ、思いを寄せるあの娘の家を潰していまおう。

もし彼女が、ぼくといっしょに駆け落ちするのをためらったならば、

あの洞窟へと、そこにあるのは敷物とパンとオリーブの実とぼくの胸だけ・・・・

 

車窓の向こうはアッカーの街。

最初に墓地が道の右手に、続いて駅が左手に、

やがてエルサレム産の石でできた、パンのようにふくらんだ家々、

その後ろには、背の高いキナの樹に黄色く縁取られた公園。

はるか向こうに茶色い石でできた壁や塔の天辺がいくつも見える。

その石の割れ目から緑の草がのぞいている。

右手には真新しい小さな家々が、

贅沢に咲きほころぶ棗の花とともに、何列にもわたって建ち並んでいる。

視界の彼方にはアル=ファハールの丘の荘厳な姿。

平らな山頂部。安寧に包まれた麓には兵士たちの墓が並ぶ。

ただ死のみがその抵抗を挫きえた勇者たちも今は壁の外の世界について知るよしもない。

 

やがて左手には石造りの検疫所の建物。

そして、眠りを知らない修理工場の軒が連なる。

機械油にまみれたそれらの扉の前には、

何列にもわたってタイヤが樽のようにうず高く積み上げられている。

潰れた車には雑草がはびこり、

修理されるか、解体されて計り売りされるか、

あるいはそのまま錆にのみつくされるのを待っていた。

 

一人の男が外套を脱ぐと男の子にかけてやった。

別の男は、サラーフという名だったが、自分の籠からオレンジを一つ取り出すと、

皮を剥き、伝統が命じるとおりにまず隣の男に勧めた。

別の男たち二人が、オリーヴの収穫の季節についておしゃべりしていた。

 

太った女が話していた 

ー彼女は一年ほど前、メッカに巡礼に行っていたー 

ヤーファーでユダヤ人が孤児院を爆破し、

イスカンダル・オード通りの穴の中に子どもたちの遺体が、

潰れたオレンジの実と混ざり合って散らばっていたと。

オレンジを満載したトラックに爆弾が仕掛けられ、

孤児院の玄関の正面に停められていたのだった。

ターバンをした老人が言った。

孤児を殺した者はアッラーに両手を切り落とされよう、

いまこの瞬間にも神が復讐してくださることに露ほどの疑いも忍び込む余地はない、と。

 

ナハーリヤーに着く五分ほど前に男の子は目を覚ました。

太陽が照りつけていた。

一人の男がバスを降りる準備を始めた。

野菜を積んだ荷車が、路肩を白い小さなロバに引かれていくのが見えた。

笛が沈黙した。

 

運転手が叫んだ、

「神の御心のままに、悪いことでなければよいのだが!」。

男たちは座席の背もたれ越しに、道に目をやった。

アフマドが言った、「パトロールか。」

サラーフが訂正した、「いや、ユダヤ人だ。」

メッカに巡礼した女が言った、

「おお、神さま、神さま。」

車が止まり、運転手はエンジンを切った。
「下りろ。」
ダークグリーンの服に身を包み、小型の機関銃を持った兵士が、車内をのぞきこんで言った。

最初に運転手が降りた、男の子の手を引いて。

続いて女たちが下ろされ、最後に男たちの順番が来た。
まず人間たちが事細かに検査され、

次に籠が切り裂かれ、丁寧に封のされた白い包みも開封された。

検査にあたった二人の兵士は司令官に報告した

―司令官は小太りの男だった。小さな拳銃を携え、黒い棒を持っていた―、

籠にも包みにも武器は見当たらなかった、と・・・・・・

 

背の低い司令官は、傍らに立っていた兵士に言った、

「子どもを連れて来い。」

それから部下たちに指先で円を描いて合図すると、

兵士たちはいっせいに男たち、女たちを路肩に一列に並ばせた。

すぐ背後に濠が延び、水が流れていた。

司令官は人数を数えるとヘブライ語で言った、

「十五人か。」
司令官は黒い棒で自分の腿のあたりを軽く叩いた。

男の子は何も気づかないまま、その傍らに立っていた。

司令官は何歩か、小さな、だが決然とした歩調で進み出ると、

自分を凝視する列の正面に立ち、言った。
「 これは戦争だ。アラブ人よ・・・・・・

 お前たちが常日頃、言っているところによれば、

 お前たちは勇敢で、我々は臆病な鼠に過ぎないそうだな。

 おい、そこのお前、こっちに来い。」
小型乗用車の背後から短いズボンを穿いた若い娘が現れた。

肩に機関銃を担いでいた。

彼女は道の反対側に、剥き出しの両脚の歩幅を広げて立った。
「これが、お前の今日の授業だ。」


人々は濠の中に崩れ落ちた。

いくつもの顔や手が泥に沈んだ。

人々は折り重なって血にまみれた一つの塊になった。

その躰の下から赤い血の筋が滲み出ていた。

集まった血は水流に乗って南へ流れていった。


太った男は男の子の方を振り向くと、少しばかり身を屈めて、

男の子の鼻を指先で乱暴につまんだ。
「見たか? このことをよく覚えておくんだ。そして、話して聞かせるんだ・・・・・・」
それから直立すると黒い棒で男の子の背中に一撃を食らわせ、前に押しやった。
「さあ、走れ、全力で走るんだ。十まで数えて、まだお前がその辺にいたら、撃ってやる。」
一瞬、男の子は何一つ信じられず、

自分の周りに植わっている樹々のように、

大地に根が生えたように立ち尽くした。

あんぐり開いた口から、まばらな歯がのぞいていた。

男の子の視線は、濠と両脚を剥き出しにした娘のあいだをさまよった。

次の瞬間、黒い棒の一撃がもう一度、男の子を見舞った。

肉が裂けたのが分かった。

ただ風に向かって両脚をしゃにむに動かすよりほかになかった。

 

眩暈と靄と涙で目の前の道はかすんでいた。

だが、大声で笑う彼らの声が耳に届いたとき、男の子は走るのをやめた。

いったいなぜ、どうして、このようなことが起きたのか、分からなかった。

だが、彼は立ち止った。

ズボンの両脇のポケットに手を入れ、男の子は道の真ん中を、静かに、

だが確固とした足取りで進んでいった、

後ろを振り返ることもなく。
そして、心のなかでゆっくりと数を数え始めた。

ひとつ、ふたつ、みっつ・・・・・・