怒り

Åsa KによるPixabayからの画像

 

あるお客様のところへ、新しい上司の挨拶という名目で訪問しました。

 

長い取引のあるお客様ですが、このところコロナの影響で業績が悪いと噂は聞いていました。

 

弊社へのオーダーを頂戴したのがコロナが始まる前。

注文数に応じて単価が変わるので、もしも、数量を減らすならご連絡を、と何度も尋ねていました。

 

いよいよ、最終的な数量を工場へ知らせなければならなくなったので、新上司の挨拶と言うことで、訪問し、現状についてお伺いしたのです。

 

結局、当初のオーダー数の半分にも足りない、発注がかかるかかからないかのギリギリの数量をオーダーするとのことでした。

担当者として、単価が見積もり通りにならないことをお伝えしなければなりません。

上司の表情にも緊張が走るのがわかります。

 

いずれにせよ、今の担当者は私なので、恐れ入りますが、とお伝えしました。

相手方は、

「あんたのところが、頼むというから発注することにしたんじゃないか!

今更なんだよ!俺らがどんな気持ちでやってるか、あんたらにはわからんのか!」

としかりつけられました。

 

数量は足りないが、もとの見積もりで受注しろ、との意味ですが、そもそも、

その数量と単価では、私たちの端末では入力さえできないのです。

異常な単価として、システムが受け付けません。

 

上司が「まことに申し訳ありません」と一緒になってなだめますが、

「帰れ!」

との言葉と、弊社のカタログをバーン!と机にたたきつけられました。

 

取り付く島がないとはこのこと、と、そのまま失礼しましたと申し上げて辞しました。

 

お客様が焦っておられること、本当は自分が無理を言っていることは重々承知の上で、

長い付き合いの弊社にどうにか助けてくれ、と言われているのはわかります。

 

だからこそ、反論もせず、そのまま帰りました。

 

上司が帰り道

「なんとかならんもんかなあ」

と言いますが、それができないのは共通の認識です。

 

無理難題を発注先に飲め、と言わざるを得ないお客様の心情を思うと、

ほんとうに切羽詰まっておられる状況がわかります。

 

これがきっかけで、弊社との取引は停止となるかもしれません。

おそらく、発注の連絡はこのままいただけないのでしょう。

 

本当は、われわれを罵倒しようが、傷つけようが、苦しい現状が変わらないのは、お客様が一番よくわかっておられるはず。

それでも、激高することをセルフコントロールできないまで追い込まれておられる事情に、我々もどうしようもなく、暗い気持ちのまま、その会社を後にしました。