俺のシークレットワークはラブラビリンスでの恋愛アドバイザー。
ラブラビリンスとは、愛の迷宮という意味。
恋愛相談室であるラブラビリンスの室長をこなす俺、ケンタウルス。
愛の迷宮に迷い込んだ女性たちから絶大なる信頼を受けてる俺は、家に帰るとビジネスマンから恋愛アドバイザーへと変身する。
どんな仕事ぶりかはこちらを見てくれ。
俺のシークレットワーク → ラブラビリンス【イケダサトミの場合】
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あー
忙しい、忙しい。
最近、本業が忙しくてラブラビリンスの仕事がたまる一方だよ。
本業は普通のサラリーマンなんだけど、夜のつきあいが多くてさ。
不況というわりには、みんな外で飲むんだよな。
俺は、家で缶ビール飲んでボサノバかなんかゆったり聴いているのが好きなんだが。
しかし、お得意様に誘われると断れないんだよね。
さて、ウィークデーがやっと終わって遅く起きた土曜日。
何もない休日は貴重だ。
久々に食べたくなったナポリタン。
と、言えば広尾のアクアヴィーノ。
地下のアクアパッツァよりカジュアルな店としてオープンした店だ。
アクアヴィーノって造語らしい。
イタリア語の活力の水とワインをかけて“ここに来れば元気になれる店”を目指しているそうだ。
俺は、ここの気軽にワインを楽しめる雰囲気と素朴さが気に入っている。
前職が広尾だった頃ここのナポリタンを食べによく通ってた。
そう、それに、16時頃まであるランチも、遅く起きた土曜日にはピッタリだ。
食後のティラミスも美味しく満足。
仕事とか、景気とか、色恋とか、なにも考えないこの時間がきっと俺には必要なんだよね。
なーんて、このゆったりとした時間を楽しんでいた俺は、ふとサエコを思い出した。
サエコは最近知り合った年上の女性。
サエコは奥ゆかしさある魅力というか、その存在をせつなく思い出させる人なんだ。
危なっかしくみえるくせに、奥深いところでは毅然としているところがそう思わせるのかもしれない。
サエコが俺の中に登場する時は、今のように俺が穏やかな状態の時だ。
焦っていたり慌てていたりする時には現れない。
女性的に言えば、サエコを思い出すと胸がきゅんとする。
サエコの風が吹いたかと思ったら、俺の中に特別なものが入り込んで、胸がしめつけられる感がするのだ。
会いたいな、と思う。
でも俺は「会いたい」とサエコには言えないんだな。
俺、アリ地獄にはまりたくないからさ。
さて、俺がサエコと最初に会ったのは大勢の中でのことで、ラウンジで俺の隣に座ったサエコはすでにひどく酔っていた。
サエコは「ワインを数本開けた上にシャンパンを飲みすぎた」と言うと俺の膝で寝てしまった。
ゆえに、彼女は俺のことをおぼえていなかったそうだ。
翌朝、バッグの中に俺が手渡したメールアドレスが書かれたペーパーナプキン入っていたということで、サエコは俺に律儀にメールをよこした。
正直言うと、俺も実はサエコの顔が思い浮かばないくらい酔っていて、記憶に残っていたのは俺の膝で寝ていたサエコの髪の薔薇の香りだけだった。
そうして、お互いがどんな存在かよくわからないままメールのやりとりを数回したところ、再会の機会がおとずれた。
その晩、俺とサエコはお互いが近くにいるということをメールのやりとりで知った。
しかも、俺が飲んでいるバーのオーナーをサエコは知り合いだと言う。
俺は数回のメールでサエコがしっかりと信念を持って、動じることなく健気に生きている女性と気づいていたので会ってみたいと思った。
だって、先日、俺と先輩の飲みに合流してきた高飛車な女とわけが違う。
その、この前の女は最悪だった。
たぶんだいぶ稼いでくるであろう夫の悪口を散々言った上に、ハワイに住むチャイニーズのハーフのハワイアンと抱き合うのが最高と俺らに自慢するんだぜ?
しかも上から目線で俺にあれこれ言ってくるんだ。
はじめて会ったというのに何様なんだよ。
その点、サエコははじめて会った晩は酔いつぶれてはいたが、翌朝の丁寧なメールで挽回だった。
その後のメールのやりとりでもサエコの心地よく感じる文面に親しみを感じ、何やら自分の役目を果たすために真剣に人生を生きているのが伝わってきた。
それなので、また会ってみたいと感じた俺は「近くにいるなら一緒に飲まない?」と提案してみた。
すると、サエコは同意し、「もうすぐ行くから待っていて」とメールがきてから1時間後にそのバーにやってきた(1時間後だぜ?笑)。
店内は薄暗かったけれど、バーの扉を開けたサエコと目が合った時サエコがかなり酔っているのがわかった。
(しかし、お互いの記憶がない者同士がよく待ち合わせの人物を見つけられたと今さらながら感心している)
案の定、俺の隣に座るなり「テキーラを飲んじゃった。私、テキーラには弱いの」とサエコ。
俺らはカウンター席に座っていたが、ふらつくサエコを俺はソファ席に連れて行き、水を飲ませた。
すると、サエコははじめて会った晩と同じく、俺の膝の上で寝てしまった。
しかも、その晩は俺の膝の上で両手を上げ、仰向けになって。
その無防備な姿に俺はとまどってしまった。
「おいおい、ラブラビリンスの恋愛アドバイザーケンタウルスがこんなことでうろたえてはいかん」
と心の中で焦る俺。
とにかくサエコを起こそうと思って「サエコさん、大丈夫?」と頬を軽く叩いた。
すると、サエコは仰向けのまま目を大きく見開き、俺の顔を両手で包んだかと思ったら俺の顔を引寄せ唇をあわせてきた。
唇を離すと、サエコは何もなかったかのようにまた目を閉じて夢の中に入ってしまった。
俺は予想外の出来事にどうしていいかわからず呆然としていた。
「ケンタウルス、酔っ払いのキスくらいで何をまごついているんだ」
と自分に言い聞かせながらも俺の胸の鼓動は高鳴っていた。
胸の鼓動って、心臓のことじゃないんだな。
俺の中にひそむ何かが動き出してふるえていたのだ。
俺は「何だよなぁ。俺、この人と会うの2回目なのに。しかも前回はお互い酔っていたから今日がお初って感じなのに」と心の中でつぶやいた。
そして、「やられた」と小声でひとりごとを言った。
サエコが俺をからかう小悪魔に思えた。
でも、その小悪魔は妖精にも思えた。
なぜならば、俺の心に心地よい何かを感じたから。
サエコがふる妖精の杖からは俺を穏やかにさせ、せつなくさせる何かをかもしていた。
その時の俺の状態はサエコに一目惚れに近い状態だった。
ビビっときたというか。
一目惚れって一目見たときにひかれることを言うけれど、俺の場合、何て言えばいいんだろう。
一目惚れの秒数の定義ってあるんだろうか。
普通、瞬間で恋に落ちることを一目惚れっていうけれど、俺の場合、瞬間どころか2回もサエコを膝の上に寝かせている。
何目惚れって言うんだ?笑
やられたぜ。
「うわ、やられた」ってつい言ってしまったのは、俺はもがくと余計はまってしまうことをわかっているからだ。
俺は、気持ちをコントロールできない自分にチッと舌打ちした。
だってさ、俺は恋愛にはまりたくない男なんだよ。
俺のような男は、恋愛にはまるとアリ地獄にはまった状態になってしまうのがわかっているから。
ラブラビリンスのアドバイザーを淡々とこなしているくせに、実は俺は自分の恋愛には冷静になれないやつなんだ。
おーい。
誰かケンタウルスをラブラビリンスから抜ける道案内をしてくれよー笑
さっき、「仕事とか、景気とか、色恋とか、なにも考えないこの時間がきっと俺には必要なんだよね」なんて言っておきながら、俺はサエコのことで頭がいっぱいだった。
サエコを思い出して「ヘルプ!」と心の中で叫ぶ恋愛アドバイザーの俺。
こんなのが恋愛アドバイザーなのか?笑
さあ、気を取り直して、家でウィークデーにたまったシークレットワークをこなすとするか、と店を出ようとした時、携帯電話にメールを受信した。
ラブラビリンスのケンタウルス宛てのメールが携帯電話に転送された模様。
メールを開けてみると件名は「SAEKO」。
まさかサエコのわけないよな、と笑いながらメールを開けた。
>ケンタウルスさま
>はじめまして。
>サエコと申します。
>噂を聞きつけてさっそく相談に参りました。
>私、今、自分のやりたいことをまっとうするために恋愛は自分の中から排除する形をとっているんです。
>ところが、最近気になる年下の男性が現れたんです。
>彼とは主にメールのやりとりで、彼のその人となりがわかったのですが、彼って実に私の理解者であって。
>でも、実際に会ったのはたったの2回で、しかも、その2回とも私はお酒のせいで記憶がほとんどないんです。
>一目惚れってありますが、記憶がない人に対してそういう思いをしたのははじめて。
>こういうバーチャルな惚れ方ってあるものなのでしょうか。
>これって恋愛っていうのでしょうか。
>彼にとても会いたいんです。
>でも自分の中で「恋愛は排除」と言う声がするのでこちらから連絡はできません。
>恋愛に依存すると自分がつらくなります。
>恋愛が付属として考えられる自分であるためには自立しなくてはなりません。
>私は自立できていない女です。
>会いたいっていう気持ち、どうやって封印しましょう。
>サエコ
おやおや(笑)
本物のサエコだ。
だって、アドレスがサエコにおしえてもらったアドレスだし。
サエコは俺とケンタウルスが同一人物ということに気づいていない。
あはは。
俺も困った、困った。
サエコが俺を好き?
本当?
さて、返事をどうするべきか。
お互い恋愛にはまりたくない同士が恋をしあっている。
君ならなんて返信する?
>年下のカレに君からアタックすることをおススメします!
なーんて、書きたいけど俺にはできねー笑
ああ、俺、愛の迷宮入りだ・・・
やばいね。
ラブラビリンス愛の迷宮 ケンタウルス
To be continued・・・ Written by 鈴乃@Akeming
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