電源つけっぱなしのPCが鳴った。
メールが入った音だ。
寝ていたのか?と驚く。
寝たつもりがなかったから。
しかし、からだはしっかりベッドに横たわっていた。
いつから寝ていたんだろう。
時計を見ると深夜の0時半過ぎだ。
今日は、一日家でデスクワークをしていた。
そして、おなかがすくとキッチンへ行って冷蔵庫をのぞいて何か食べていた。
お昼過ぎにバタートーストとサラダ、夕方にリンゴを食べて、夜の9時過ぎにキャベツのぺペロンチーノを作って食べた。
9時過ぎの食事の際は、冷蔵庫の飲みかけの白ワインをワイングラスに注いだ。
最近家でとる夜の食事はダイニングテーブルを使わない。
寝室のライティングデスクですませる俺だ。
なぜかというと、俺の秘密の仕事、シークレットワークは夜が忙しいからだ。
PCに内容の深いメールが入る。
それなので、食べながら、飲みながらPCでじっくりメールのやりとりをするのだ。
今日は家にいたので夜の9時頃からシークレットワークがはじまった。
シークレットワーク用のメーラーを見ると昨日寝た時間(2時くらいかな)から今の時間までに届いたメールがたまっている。
今日は6件。
タイトルは本名、または、ニックネームという決まりで俺のアドレスにメールが届く。
ワインを飲みながら、ぺペロンチーノを食べながら、俺は一通一通メールを読んだ。
そうして丁寧に返事を書いていたはずだったのに、いつの間にかベッドに移動して寝ていたみたいだ。
酒が強くないくせに白ワインを2杯飲んだからだな。
このまま寝てしまおうか迷ったが、一通気になるメールがあったのでベッドから体を起こし、ライティングデスクのチェアに座った。
やはり。
「Re:イケダサトミ」というタイトルメール。
これ、さっきの続きだな。
俺のシークレットワーク。
恋愛相談室ラブラビリンス(愛の迷宮)の室長として悩める女性たちの相談相手。
ラブラビリンスでの俺のニックネームはケンタウルス(実名がケンタ)。
上半身が人間で下半身が馬のケンタウロスに間違えられるが、俺のは星座のケンタウルスだ(笑)。
オンナ友達の恋愛相談にのってあげていたらいつの間にか口コミで広がって、ここ半年くらいの間に知らない女性からもメールがくるようになってしまったのだ。
今のところ報酬はないが、近い将来これを副業としてビジネス化したいと考えてる。
例えば、メールの返信をダウンロードするシステムにして一通100円払ってもらうとか。
メルマガを配信するといいかもしれないな。
それから、相談者の許可をもらって原稿にして出版するとか。
恋愛バイブルの書籍「ラブラビリンス by ケンタウルス」なんておもしろいかもしれない。
さて、「Re:イケダサトミ」を開けてみよう。
この女性は、バツイチ、子供あり。
ヒロトという少々束縛され気味の男性とつきあっているが、彼を本当に愛しているのかわからない、といった相談。
おお、かなり長文だな。
---イケダサトミ<satomilove@×××> wrote:
ケンタウルスさま
お返事をありがとうございました。
おっしゃるとおり、私のヒロトに対する思いは愛ではなく、そして恋でもないのかも。
ヒロトとはじめて会ったとき、彼は華々しかったし、私をを一人の女性と見てくれたやさしさにグッときたので、その頃を思い出してみたりもしたのですが、あの頃は明らかに恋に恋していた私。
ケンタウルスさんのお返事を見て、ヒロトを本当に好きだったときってあったのかしら、と思いました。
私、今まで人を本気で愛したことはないかもしれません。
愛ってなんなんでしょうね。
恋ならわかりますが、愛はわかりません。
もしかしたら、私には愛は必要ないのかもしれません。
恋が愛にかわるとき、無償の愛に気づくのですが、そうなるとつまらないんです、私の場合。
はらはらどきどきしながら、自分の手中に収めるのが私の恋の醍醐味なのかもしれませんね。
だから、相手が私を愛しすぎて支配するようになると逃げたくなるのかも。
離婚した主人がそれで、私はそれが息苦しくなって離婚したのですから。
「おまえを自分だけのものにしたい」とヒロトがふと漏らした言葉。
うれしくも思えるのですが、苦しい私です。
私は一生誰のものにもならないんです。
きっと、私自身が相手をコントロールしないと気がすまないのでしょうね。
これって恋愛じゃないですよね?
確かに恋愛って心がほわほわして気分いいですけど、一体なぜ人は恋愛するのでしょう?
子孫繁栄に結びつくものであれば、私はもう必要ないんです(子供がいるから)。
じゃあ、私は一人で寂しいから恋愛するの?
そんな恋愛って意味あるの?
寂しがり屋が恋愛を求めるのかな。
そうやって突き詰めると私にとっての恋愛は征服欲なのかもしれません。
征服欲からくるというのは、相手を想うことで自分を盛り立てて、それが日々の自分の活力となる。
征服するために自分が質のいい人間になっていくんです。
私は自分が一番なのかもしれません。
そこに情が絡まるので、恋愛にみえるだけなのかも。
恋愛のふりしているだけなのかも。
でも、男性といっしょにいるのは大好きです。
包まれている感じでほっとするんです。
特殊な気持ちですよね、異性といっしょに過ごすときって。
どうしてこんなに特別な気持ちになるの???
女性同士で過ごす時間と違うのはなぜ?
男性から出るオーラ、女性から出るオーラって違うからかな。
征服欲の私が、男性に包まれてほっとしたいと思うのはなぜでしょう???
イケダサトミ
---centaurus<centaurus-love-labyrinth@×××> wrote:
>Dear イケダサトミ
>君のメールの最後の問いの答えはね、君には魔性と甘えんぼが同居してるからだと僕は思うよ。
>だから征服したいと思うし、包まれたいと思うんだろうね。
>でもね、それをどうこう悩まなくてもいいし、恋についてはあまり考えすぎなくていと思うよ。
>心と体のおもむくままに自然体にしていればいいんじゃない?
>あまり貞操観念を強く持とうとしたり、それを押しつけられるととストレスがたまるからね。
>恋愛して相手を征服したと思ったら、また別の征服する相手を探せばいいんじゃない?(なんて無責任かな?)
>でも、征服したと思っても結局人って征服なんかできてないことも多いんだけどね。
>恋愛って、「好き→振り向いてほしい→征服したい→満足→飽きる」の連続だと思うから。
>好きな人ができたら、その人だけって考え方もあるけど、1番があって、その上や2番や3番もあっていいんじゃないかな~
>だっていろんな人に愛されたいし触れ合いたいもんね。
>君は独身なんだからいろいろな恋愛を経験してみるといいかもね。
>そういうときに生きていく活力がすごく湧いてくると思うし。
>それって自然なことだと思うよ。
>それから、恋と愛について。
>安心していたい相手と、ドキドキしたい相手は違うんだよ。
>愛が前者、恋が後者なんじゃないかな。
>君は愛が必要ないのならドキドキする相手と恋をすればいいじゃない。
>そのかわり安定は求められないけどね。
>どっちにしても君の好きなようにやればいいよ。
>君の心がわくわくすればそれでいいんじゃない?
>ケンタウルス
俺の返事は短い。
そして、こんな適当な返事でも一度も怒りのメールがきたことはない。
たぶんそれは決定権を相談者に委ねるからだ。
女性は悩みを共有してほしいだけなのだ。
白黒はっきりさせるのは自分自身でやる。
男は決定させたがる。
でも俺はしない。
俺は相談者の悩みをふんふんと聞いてあげて、~だと思う、という形で軽く意見するだけだ。
だから俺の相談室は徐々に人気が出てきたのかもしれない。
イケダサトミの返信が楽しみだ。
今つきあっているヒロトとどんな展開になるのだろうか。
人の恋愛を覗き見しているようでちょっと趣味が悪いけど、俺、けっこう好きなんだよなぁ(笑)
ってことで、今日はおしまい。
やっぱり眠いや。
ではまた明日。
ラブラビリンス-恋の迷宮 ケンタウルス
To be continued・・・ Written by 鈴乃@Akeming
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