6歳年下の真里菜さんと初めて会ったとき、「なんてセンスのいい女性なんだろう?」と驚いた。
ジーンズのミニスカートに合わせられた色とりどりのベルト。
ジーンズスカートのカジュアルさを抑えるがごとく、トップスは、白いシャツに黒の短めのジャケットでコーディネート。
そして、靴は、光沢のある青みがかった空色のセルジオロッシ。
微妙な色使いの青いストール。
このコーディネートを想像しただけで、おしゃれ度の高い女性とわかるだろう。
この世の中、そして、東京という街に住んでいれば、流行に敏感で、おしゃれな女性とは山ほど出会う。
その東京に住まいを持つ私が、なぜ、おしゃれな真里菜さんに驚いたかというと、真里菜さんは、才女だからだ。
おしゃれな女性は山ほどいると言った。
でも、才女の上に、おしゃれな女性は少数だと私は思う。
真里菜さんは私の息子と同じ大学の出身だ。
息子の大学は、日本の最高学府で一番とされる大学と言われ、女子学生の割合は男子学生より低い。
その狭き門をくぐり、きっちり4年間で卒業し、今は、アメリカ系企業に勤めるビジネスウーマンだ。
プロジェクトのリーダーを務めるくらいのタイトルを持つ真里菜さん。
背筋を伸ばした姿勢のよい真里菜さんの働きぶりは想像がつく。
私と真里菜さんの最初の出会いは、とあるファッション誌。
私がファッション誌に掲載された時、真里菜さんの出身の大学と同じ大学に通う息子が一緒に載っていたため、真里菜さんが私に興味を持ってくれた。
私は、小さいながら店舗を持っている。
自分の趣味で買い集めた洋服やバッグ、そして、伯母から受け継がれたアンティークジュエリーや雑貨が置いてある、お客がお茶を飲めるスペースのある店だ。
その店舗がファッション誌に掲載されたことで、真里菜さんとの縁が繋がった。
店舗は、東横線沿線の商業地区である駅から徒歩5分。
洋館のような古い一軒家で、アイアンのアーチ型のゲートをくぐると、先に、古びた薄いペパーミントグレーのドアが見える。
建物の外壁には蔦が這っていて、なかなか趣のある外観だ。
この店舗としている建物は、伯母の恋人の息子の家だった。
大正時代に建てられたという、伯母の恋人の実家は、西洋人を意識した、上がり框のない外人仕様のフラットな玄関で、店舗としては使うには便利な作りだった。
二階建ての一階はキッチン、ダイニングルーム、リビングルームという間取りなので、一階のリビングルームで商品を売りつつ、ダイニングルームでお茶が飲めるというスタイルをとることも可能だった。
駅近くの商業地区でありながら、メインストリートから奥に入り、目立たない小道を入った奥まったところにある家で特に宣伝しなければ、誰も気づかない店なので、立ち上げ当初は、人っ子一人おとずれない店だった。
友人たちが、「麻美は霞を食べて生きているの?」と、心配するほど、売り上げの少ない店だったが、
経費があまりかからないこともあって、ここは店というより、自分の居場所というイメージだ。
その私の居場所に、セルジオロッシをはいた真里菜さんが訪ねてきてくれた。
クリスマス前の街が気忙しい頃。
真里菜さんと私は、その日に意気投合し、近々シャンパンと生牡蠣でおしゃべりを楽しみましょう、という計画が立てられた。
シャンパンと生牡蠣の会は、それからさほどたたない年明けのある晩に開催され、私たちは牡蠣とシャンパンを堪能し、楽しい時間が終わると、また次の会の計画が立てられた。
「今度は、私のお勧めのお店にぜひ一緒に行きましょう」
と言う真里菜さんの提案で、今回は、天現寺交差点近くのイタリアンレストランを予約。
という真里菜さんの言うとおり、エントランスには花がいっぱいだった。
もちろん、店内も花が多く飾ってあり、落ち着いた雰囲気ではあるが、華やかだ。
「真里菜さん、私、わくわくしてきたわ。ここにいらしているお客様って何だか普通の方じゃないみたい」
と私が言うと、真里菜さんは、こっそりと私に言った。
「麻美さん、その通りなの。
たぶん、奥のテーブルの年配の男性グループは大手企業のトップに近い方たちだと思うわ。
それに、このお店は芸能人、ご用達のお店なのよ」
そういえば、お隣のテーブルの日焼けした50代の女性、どこかで見たことがある。
誰かしら?と思い出せずにいたら、今日のアンティパストがワゴンで運ばれてきた。
14、5種類くらいのアンティパストの中から選べるらしい。
カメリエレがすべてのお皿を目の前に出して、説明してくれた。
私は、冷たいアンティパスト3種と温かいアンティパストを1種。
「少し欲張りすぎたかしら」
「じゃあ、お魚とお肉は、ひとつをシェアしましょうか」
ということで、魚はメバル、肉は白金豚を、それぞれひとつずつオーダー。
「お魚だから、次は、白ワインでいきましょう」
カメリエレが白ワインをすべて持ってきてくれて「お好みは?」と聞く。
と言うと、希望の味のワインをサーブ。
真里菜さんのワインは軽めでフルーティなもの、ということで、ケヴェルツトラミネール。
ケヴェルツトラミネールは、ライチの味がするから、中華料理にも合うワインだ。
さて、私と真里菜さんは、私のウェディングについて話していた。
私は、大学生の息子がいるとはいえ、夫の剛とは離婚していて、独身だった。
なんとワガママな妻なのだろう、と思いつつも、剛のお給料で暮らすことに急に抵抗を感じ始め、「自立したい」と言い張り、無理やり離婚したのだ。
そんなわけで、40歳にもなって離婚を決意した私だったが、自立という意味を取り違えていたため、その後、たいへん苦労した。
いまだに苦労は続いているが、自分が蒔いた種ゆえに、引き返すことはできないし、自由を手に入れたという感覚は捨てがたかった。
その、苦労をしたことによって、夫という存在に対する感謝の気持ちに気づき、男性は偉大だな、と感心する私が、今いる。
剛との離婚は、失敗ではなかったのだ。
自立という意味を取り違えていた自分に気づいたし、何よりも夫に感謝の気持ちを持てる自分に気づいたことが大きな収穫だった。
しかし、母のワガママにつきあわせてしまった太市には、結果オーライなところを見せたい私だった。
それなので、私は、彼に悪影響を与えないよう、そして、日々、溌剌と仕事をする姿を見せるのに必死だった。
こうして、仕事面では、躍起になって過ごしていた私だったが、恋愛面も充実させたくて、人を好きになってはひき、また新しい恋を見つけては、ひく、といった繰り返しだった。
私は、結婚には少し臆病になっていたが、恋愛は積極的だった。
でも、その繰り返しには少しだけ飽きてきていた。
結婚には懲りているはずの私だったが、喉元過ぎれば熱さ忘れる、といったところ。
自立の意味を取り違えていたことに気づいたことだし、男性の素晴らしさも認識した。
それなので、躍起になって過ごすよりもそろそろ落ち着きたいな、というのが本音だった。
さて、欲張りすぎたアンティパストのお皿がきれいになると、パスタ2種がサーブされた。
またしても、私が欲張って2種食べたいとオーダー。
「太市もあと2年で社会人。そうなったら私もう一度結婚したいの。
前の結婚は結果、うまくいかなかったけれど、今度は、私が成長した分、きっと相手を幸せにすることができると思うの。相手が幸せであれば、私も幸せですもの」
私は、ウェディングドレスを着た自分を想像しながら、うっとりとした目で真里菜さんに言う。
でも、私が恋をする相手や、私を大切にしてくれるボーイフレンドたちは、ほとんどが私と結婚できない境遇にある。
それを知っている真里菜さんは、ため息混じりに言った。
「人の理想や考え方や状況って異なるから、ひとくくりには出来ないって言うこと、分かっているわ。
でもね、麻美さんがもう一度、ウェディングを希望しているのなら、 隙間で惹かれあうのではなくて、全身全霊でぶつかり合えるパートナーじゃなくちゃ、絶対駄目よ」
「そうねぇ。でも、この年齢になると、出会う男性は、ほとんどが既婚者よ」
「今の麻美さん、ふとした隙間に都合よく思われてしまう危険があると思うの・・・それが心配でしょうがないのよ」
「ふぅむ・・・真里菜さん、さすがね。確かにそういう殿方が多いかもしれないわ。
でも、私の周りの男性って癒しを求めている人が多いの。
そうねぇ、日々、第一線で戦っている人が多いから、解放感を求めて私を欲する人がいることは確かだわ」
「うーん。殿方の解放感ってよくわかる・・・ビジネス上、責任や立場がある人っていつでも追い詰められているもの。麻美さんの複雑さややるせなさ、よくわかるんだけど・・・」
と言って、真里菜さんは、次のワインをオーダー。
「今度は、さっきのワインより重めで」と真里菜さんはカメリエレに注文。
話は続いた。
「でも、麻美さん、結婚願望があるのなら、今の結婚できない状況のままいったら駄目。
結ばれるはずの新しいご縁を、自ら遠ざけてしまう気がするわ」
と言ったところで、魚料理がサーブされたので、今度は私が話し始めた。
「真里菜さんの言うことは、よくわかるわ。
でも、私の役目ってもしかしたら、男性にときめきを与えることなのかもしれない。
私の周りには『奥さんは空気みたいな存在で大切だけど、男はときめきがほしいから恋がしたいんだ』って言う男性ばかりなんですもの。
もしかしたら、私、結婚できなくて、一生恋をし続ける女なのかもしれないわね。
そうだとしたら、ちょっと残念だわ」
私は、軽く冗談も交えて言ったつもりだったが、真里菜さんは、反論した。
「いやいや、麻美さん!男性の言い訳につきあっちゃ駄目よ!
どんな場所にいても、太陽の下、正々堂々、手をつないで歩ける人と恋愛して欲しいな~って私は思うの。
だってその方が、ずっとずっと楽しくて健康だもの」
そう・・以前、真里菜さんが言っていたっけ。
彼女の尊敬する大先輩の男性がよく言っていること。
「太陽の下、大通りを正々堂々腕を振って歩け。それが出来ないようなことはするな。」
と常に言っているその大先輩は、ビジネスにおいても、人生全般においても大変な努力家でいらして、成功を収め、今もなお、精力的に活動されている人だそうだ。
これは、恋愛にも言えることなのだ。
「麻美さんには幸せになってほしいな」
真里菜さんは、続いてサーブされた肉料理をナイフでカットしながら、続けた。
「決して、優等生的な発言ではないの。
麻美さんが運命の男性と出会うためには、正義感というか、潔さと言うか・・・
そういったものをしっかり持ちつづけていて欲しい」
「ありがとう。そうね」
私の言葉は少なかったけれど、真里菜さんの言うことには納得できたので、素直にうなずいた。
「でも・・恋をしたい殿方は、どうしよう。そういう男性はかわいいと思うのよ」
と笑うと、真里菜さんは
「世の中、寂しがりやの男性が多いもの。麻美さんは、母性の塊だから」
と笑った。
「でも、麻美さん、今のままじゃ結婚は無理なのわかるでしょ」
「そうだわね。奪う行為はするつもりはないわ。ということは、結婚はできないわけよね。わかっているわ」
「本気で愛し合える男性、絶対に見つかるはずよ、麻美さんなら」
「どこにいるのかしら」
私は、うふふ、と笑った。
「ねえ、麻美さん、今の麻美さんの彼とのおつきあいは無駄だとは思わない。
人間、何かしら、学んでいるはずだから。でも、その先の幸せを考えるのなら、思い切った方がいいと思う」
「うーん」
私は、ちょっと困った顔をした。
「麻美さん、潔く・・そして、正義よ」
「それが、できればねぇ(笑)でも、私は思うの。彼とは、出会ったタイミングが悪かっただけ。
もっと前に会えていれば、どうだったのかしらって」
「タイミングね。いつ会えればよかったのかって、誰にも答えは出せないけれど、きっと運命って決まっていて、出会いも必然。そうなると、麻美さんの出会うべき人は他にいるってことなのではないかしら」
私は、ワイングラスを口につけたまま、上目遣いで真里菜さんを見ながら、小さな声で言った。
「実はね、今、好きな人、前世で恋人同士だったって、占い師に言われたことがあるの。
ああ、そうなんだ、って納得できた。
だから、現世で出会って、自然と惹かれ合って好きになって、離れられないのかも・・・
彼との出会いも必然で出会うべき人だったのだと思うわ」
すると真里菜さんは、にっこり笑って言った。
「人にはそれぞれいろいろな価値観があって、立場があって、背景もそれぞれ。
でもね、私、麻美さんには前世の彼とではなく、現世を一緒に生きていく素敵なパートナーを見つけてほしいの」
真里菜さんは、才女だけあって、意見は首尾一貫していて、隙はない。
彼女は、ただ、知識があるだけの女性ではない。
私を思いやる気持ちがあるからこそ、しっかり意見してくれる。
「真里菜さん、私のお姉さんみたい」
「え?私が?」
二人でうふふと笑った。
「あん、選びすぎちゃったかしら。こんなに食べられないわ」
デザートの選択も欲張りすぎたりして、私は、真里菜さんより幼い妹のようだった。
そう、私は欲張りな妹なのかも。
お姉さんは、自分の食べられる分だけ、見極めて選んでいるみたいだもの。
「まったく、麻美ちゃんは~。欲張っちゃ駄目よ。よく考えて行動しなさいね」
と、言う声が聞えてきそうだ。
6つも年上ながら、私は、真里菜さんの妹になった気分だった。
何だかとっても心地よい優しく強いオーラに守られているような感じだった。
「真里菜さん、今日は、お食事に誘ってくださってありがとう。それに、貴重なアドバイスにも感謝してる」
ホットティを飲みながら、私がお礼を言うと
「たまに違ったコメントも面白いでしょ」
と、真里菜さんは微笑んだ。
「そうね、別の視点に気が付くことができたわ。
真里菜さんの言うように、どこかで私と出会うのを待っているダーリンを探すために気持ちを切り替えないといけないわね。
ここ数年、恋愛を楽しむばかりで、私を待っている人のことなんて考えたことなかった」
「素敵な男性が、麻美さんをどこかで待っていると思うわ」
「そうだわ、真里菜さん。私がその方と出会えたら一番で紹介するわ。
だって、あなたは、私のよきアドバイザーなんですもの。
そのときは、あなたの妹のつもりで、お姉さまのご意見をお聞きしたいわ」
「もちろん。でも、妹は、果たしてこの年下のお姉さまの言うことを聞くのかしら」
真里菜さんは笑った。
「お姉さまを挙式に招待するために、がんばります」
私は、右手を軽く挙げて、誓いのポーズをとった。
「南の島の太陽の下、プルメリアをヘアに飾った麻美さんのウエディングドレス姿が目に浮かぶの。
彼はアロハを着ているからきっと挙式はハワイね」
真里菜さんはそう言うと、フラダンスの手の振りを小さくして見せた。
この素敵な女友達。
しっかり者で、相手を思いやる気持ちがあるがゆえに高い見識を持って意見を言える、貴重なお友達。
ずっとずっと大切にしたいな、と思う。
大人になってからのオンナ友達は自分が選べるのがいい。
学生の時は、あの狭い世界で上手に生きていかなくてはならないから、選んでいる場合じゃなかった。
それはそれで、学ぶものがあったし、自分のひとつの通過点としてとらえられるから、悪いことではない。
でも、この年になってからの新しいオンナ友達って、見えない力が働いて、お互いを引き寄せ合っているような気がする。
人生、自分の残りの時間を考えると、神様が「時間を有効に使いなさい」と、出会わせてくれたようで、愛しく感じる縁だ。
「さあ、もう一軒行きましょ。今度は、私が真里菜さんのお話を聞く番よ」
おなかも心も満たされたけれど、宴を閉めるには、まだ早い時間だもの。
大切なオンナ友達と過ごす夜を満喫して、明日の活力にしよう。
今宵は、新しいダーリンよりも、南の島でのウェディングよりも、オンナ友達とのおしゃべりの方が魅力的だ。
私たちは、店を出ると、道の反対側のバーのネオンを目指して、春の夜風を受けながら軽やかな足取りで、横断歩道を渡った。
THE END Written by 鈴乃@Akeming
【 オンナ友達シリーズ:真里菜さん 後記 】
文中の会話の一部は、真里菜さん(仮名)の実際の会話をご本人にご了承いただいた上、掲載しています
(※一部ね!!)
素敵なお友達!
本当は、真里菜さんのお写真と共に掲載したかったけれど、ナイショにしたいお友達なのでナイショ!
さて、今回のレストランは、広尾駅から徒歩10分ちょっとのところにあるお店
芸能人の利用が多いと有名なイタリアンレストラン(2号店が我が家の近くにあるらしい?!)
ドリンクをオーダーするとアンティパストのワゴンが登場
どれも食べたくて迷ってしまう・・・
メインは、生肉と魚も見せてくれて、選ぶ
料理法もその場で選ぶ
あっさり目がいいのか、カメリエレといろいろ相談しながら決めるのが楽しい
最後のデザートもワゴンで!
アッピア
港区南麻布4-11-35 インペリアル広尾 B101
TEL 03-3444-5801
オンナ友達とのディナーはこんなイデタチで・・・
女性のお友達に「かわいい!どこで買ったの?」と聞かれたワンピ!
今回のお食事には、アンゴラの白いカーディガンを合わせたけれど、Gジャンにも合う!!!
ブーツは、サロン商品を買い取り
イタリア製のハラコブーツ、今の時期に重宝してます
春、秋用のブーツを探していて、見つけたものです
サイズ37とサイズ38
ma*nani Weショップ → イタリア製ハラコブーツ
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