サディスト | ma*nani通信Akemingのステキな40代

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年をとるのはこわくない!
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若さの秘訣。それは気持ちから。
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私はストイックな男性が好きだ。


そして、仕事優先で、働いてばかりいる仕事人間の男性が。


でも、ただ忙しく働くだけの人には魅力を感じない。


ミッションがきちんと定まっていて、常に向上心を持ち、そのために自分を律することのできる男性が好きだ。



今宵、半年ぶりに会えた一樹は、私のボーイフレンドの中では、かなり自分に厳しい男性の一人。


そして、もちろん、向上心があり、実績をきちんと出している仕事人間。


一樹は、自分に厳しいだけでなく、かつサディストだと思う。


このサディストという意味は、人間の性質をサディストとマゾヒストに分けた場合のサディストだ。


いわゆる、性格的にSかMかといったところのSだ。


他人に対して厳しいという意味のサディスト。


一樹は、ストイックな男性だから、自分に厳しいのであれば、他人に対しても厳しいはずだ。


私は、どちらかというと、本人は自分に厳しく、他人である私に甘いという人が好きなのだが、


一樹は他人にも厳しい。


一樹はどう見ても、ストイックで仕事の鬼でサディストなのに


「僕はサディストじゃない。それに自分に甘い人間だよ」と言う。


しかし、一樹の言動を見ていると、やはりサディストだ、と思う。


そして、彼が自分にアマイだなんて、私は絶対的に否定する。


私が起きる頃には、数社の新聞を読み終え、雑務をこなし、スポーツジムから帰ってきている一樹だ。


そして、一日かなりの数のアポイントメントをこなし、時には、同じ日に日本中を駆け回っているときがある。


前夜、東京にいたと思ったら、翌朝8時台に博多にいて、その晩は泊まりかと思えば、


あちこちの打ちあわせをこなし東京に戻ってきている。


そんなめまぐるしい一日であっても移動時間には絶対に寝ないと言って、常にパソコンを持ち歩いている。


一樹に電話すると、忙しいのか、いつも留守番電話だ。


私は、留守番電話の一樹のアナウンスの声が好きで、その声が聞きたくなると、


用もないのに電話をかけることがある。


すべてに厳しい男のくせにアマイ声の一樹。


絶対に電話に出ないと確信が持てるから、何時でもかけられる。


でも、声を聞くための連絡ではなく、本当に急ぎの用事があるときは困るのだ。


「はい、児嶋一樹です。ただいま電話に出ることができません。発信音の後にお名前とご連絡先をお入れください。こちらから連絡させていただきます」


と言っているので、「麻美です。お手すきになったらお電話してね」と伝言を入れるのに絶対かかってこない。


持ち歩いているパソコンから「どうしたの?」とメッセージが入ることもあるが、それは稀だ。


一樹はなぜ私にはやさしくないのだろう。


やっぱり、ある意味サディストなのだと思う。


きっと、私からの着信は、自分のアナウンスを聞くだけなのだろうとあきれているのだ。


留守番電話の伝言も大した用事ではないのだろう、と高を括っているのだ。


私こそ、自分にアマイ人間なので、すべての人に対して自分が連絡すれば、


レスポンスがすぐあると思いこんでいる。


でも、一樹は、そんなアマアマの私を「世の中、そんなにアマくないよ」と否定するがごとく、


思い通りにさせてくれない。




いつだったか、「ねえ、ケータイでメールしようよ」と言ったことがあった。


でも「そんなのしない」とつっけんどんに断られた。


携帯電話のメールって便利なのになぁ。


一樹の携帯電話はいつも留守番電話、伝言を入れてもコールバックなし、携帯電話のメールはしない、


となると、パソコンのメールでしか連絡する術はない。


でも、そういえば、さっき、めずらしく電話をもらった。


待ち合わせの時間に私が間に合わなかったから。


タクシーのドライバーには「5丁目の交差点まで」と言ったのに、1丁目交差点で降ろされたので、


初めて行く店がスムーズに見つかるわけがなかった。


5丁目交差点でないことに気づかなかった私もいけなかったが、やっぱりタクシーのドライバーがいけないと思う


幸い、この町は、1丁目と5丁目が隣合わせなので、さほど遅れずに店に着けるだろうと思ったが、


一樹から着信が入っていた。


待ち合わせ時間から5分ほど過ぎていたので、心配してかけてきたか、それとも時間に厳しい一樹の不満か。


たぶん、後者だろう。


私にはサディスティックな一樹だから。


一樹の着信履歴を見て、慌ててリダイヤルしたが、留守番電話。


相変わらずの一方通行だ。


仕方ないので、店に電話して道案内をしてもらい、ついでに


「(サディストの)児嶋さんに、道に迷ったので少し遅れますと伝えてください」


と伝言をお願いしておいた。


そうして、10分遅れでどうにかたどり着いた。




ここは、大通りから道を一本入り、橋を渡ったところにある地下の隠れ家的なイタリアンレストラン。


半地下の入り口を開けると右側にカウンターのみの小さな部屋がある。

(ここは、バーなのかしら、と思ったが、後で一樹に聞いたところ、個室だった)


入ってすぐにカウンターの部屋があったものだから、どこを通って中に入れるのか一瞬迷ってしまった。


この小さなバーのようなカウンター席の裏を通って行くのか、または、次の扉を開けるのか・・・


とりあえず入ろうと思って、扉を開け、廊下を左に行き、突き当たりを右に入ると広い空間があり、大きなカウンター席があった。


そして、カウンターの奥まった席でメニューを見ている一樹をやっと見つけた。


「ごめんなさい、迷ってしまったわ」


と言うと、一樹はメニューから目を離し、私を見た。


久しぶりすぎたせいか、一樹と目を合わすのが少し恥ずかしかった私は、会うなり遅れた言い訳をした。


「Nice to see you again」と、頬にキスするくらい親愛をこめて、久しぶりの再会を喜ぶべきなのに


「タクシードライバーが、1丁目で降ろしたのよ」といきなり聞かされたら、一樹がいい顔をするわけがない。


一樹は「人のせいにしちゃいけないよ」と静かに言った。


私は、「はーい」と恥ずかしそうに小さく返事した。





久しぶりの再会にシャンパンとビールで乾杯しながら、今日も言ってみた。


「ケータイのメール、なぜしないの?」と。


すると、「そんなのしなくてもいいんだ」と一樹。


「だって、急ぎの用事があるとき困るじゃない。あなたは電話も通じないんだから」と反論すると


「いつもパソコン開けているから大丈夫だよ」と、言い返された。


え?だって、私と会っている今、パソコン開けていないじゃない、と思ったけど、一瞬会話が止まる。


私は、無言でアミューズブーシュのラディッシュをしゃりしゃり音を立てて食べた。




そんな私に、一樹は、メニューを差出し、「何食べたい?」と聞いた。


「あん、一樹、私は食べたい物を決められないの、知っているでしょ?」


「ダメ。自分の食べたい物を言いなさい」


ほらね。


私にはやさしくないの。


だって、他のボーイフレンドは、私が選べないと言うと、適当においしそうなものを選んでくれる。


私は、お人形のようにテーブルに座り、お料理が出てくるのを待っていたいのに、一樹はそうさせてくれない。


やっぱり、一樹は私にとってはサディストだ。


やれやれと、仕方なく、メニューを見る。


たくさん料理名が並んでいて、読むのも面倒だ。


慣れとはおそろしい。


自分の食べたいものを選ぶのが普通だけれど、私は、甘えた人生を送っていたせいか、


いつの間にかすっかり人任せになっていた。


私は、前世でお姫様だったことが多いと言われるのが、納得できる。


そういえば、今回の約束をするにあたっても、一樹に


「何食べたい?食べたいものを言ってくれればお店をアレンジするから」と言われた時


「なんでもいいわ」と答えたら、「それが一番困る」と言われた。


いつも人任せで自主性がまったくなくなっていたお人形さんの私だった。


よーし、じゃあ、今日は自分で決めよう、とメニューをじっくり見た。


「うーん、空豆はやめて、イカがいいわ」


「わかった、じゃあ、アンティパストはヤリイカね。あとは?」


「えー?どうしよう、何がいいかな・・・あ、アナゴとゴボウのコロッケっておもしろい」


「オッケー。パスタは、ワタリガニでいいね」


「そうね、ここに来たらそれを食べなきゃ」


「あとは?」


と聞かれ、「えー、もう決められない」と言いたかったが、一樹に怒られそうだったのでうーんと言いながら考えていたら


「魚?肉?」


「えっと、アンティパストがイカとアナゴだし・・・あ、トリッパの煮込みがいい!」


「パスタがトマト系だから、トリッパはダメ。他には?」


一樹は、バランスを考えながらテーブルに出される料理を頭に描いているのだろう。


まるで、「きれいに流れるようなコースメニューを考えなさい」とお題を出されているような気がしてきた。


さすが、仕事の鬼。


一応、お題の答えの「決め」である、ワタリガニのパスタは、彼が助けてくれた。


なので、私が選ぶ最後の、「トリ」であるメインディッシュの選択が重要なのだ。


あーん、何でもいいのよー、誰か決めてーと、メニューの上から下をいったりきたり見ていたら


一樹が、カメリエレに


「今日は何がいいの?」


と聞いて、さっさとメインディッシュが決まってしまった。


メインは、あっさりめに味付けした牛肉のソテー。


ふう・・・やっぱり一樹はサディストだ。


結局、すべてのメニューを決められなかったので、失格の私。


「甘えん坊はいい加減にしなさいよ」と私に言っているのだろう。


さて、アンティパストがサーブされると、白ワインをグラスでオーダー。



話は、エスエムの話題に。


「あなたは厳しい人間だから、やっぱりエスだと思うわ」


「でも、自分に厳しいってことは、エムだと思わないか?自分を追いつめて喜ぶんだから」


うん、確かに。


そうか、でも、追い詰めるのも自分だから、一樹はサディストでもあり、マゾヒストでもあるのだ。


「僕は自分に厳しくないよ。自分にはアマイ」


と、一樹


「ねえ、そんなにストイックなあなたなのに、それでもアマイの?」


「アマイね」


ああ、やっぱり、彼はサディストとマゾヒストが混ざっている。


それなら両面性をもっているということで、もうどっちでもいいわ。


しかし、私は、このお店のウリである、ワタリガニのパスタをフォークに巻きながら、まだ反論を続ける。



「あなたがあなた自身にアマイとは思えないけれど・・・でもあなたは人に対して厳しいわよね」


「そんなことないさ。君にはやさしいじゃないか」


と、一樹は涼しい顔で言う。


嘘だわ。


だって、最後に会ったのっていつよ?!


「次はいつ会えるかしら」ってメールすると、平気で3ヶ月後の日程をメールで提案してくる。


「麻美とは会う時間は作れないのだけれど、仕事のための時間ならすぐ作るよ」と言っているのだから、


そんな人が「君にはやさしいじゃないか」というセリフは私には言えないはずよ。


まったくもって、どうして、私って、忙しい人ばかり好きになっちゃうんだろう。


放っておかれると追いたくなるけれど、あまりにも放置されると、あきらめて別の楽しい方になびき出す私。


一樹の私に対する放置の度合いは、微妙なところで、どっちつかずの状態をずっと保ってきた。


「どうして、あなたってそんなに忙しいのかしら。忙しい人は好きだけど、度を超えているわ」


「それなら僕でなくてもいいじゃないか。麻美には、ここよりも素敵な場所に連れて行ってくれる男性がたくさんいるんだろ?」


と一樹。


「いないわ、そんな人」


と、即座に一蹴したが、実は私は分身をあちこちにばらまいている。


牛肉を軽くソテーして薄くカットした、一樹が選んだメインディッシュの肉料理を食べながら、


私は自分が何人分身を持っているのか数えてみる。





私は、仕事人間な男性が好きなゆえに、自分のお気に入りのボーイフレンドには放っておかれることが多い。


ほとんどのボーイフレンドがそれなので、そんなのには慣れているはずなのに、


やっぱりさみしいから、あちこちに私の分身を置いてきちゃうのかなぁ。


私が分身を置く、仕事優先のボーイフレンドたち。


でも、彼らは、私を放っておく分、私と会うときは私にアマイ。


一樹は、仕事優先で、私を放っておく上に、私にはアマくない。



そう、やっぱり、一樹は、アマくない。


だって、デザートが苦手なんですもの。


甘いものはからだがうけつけないらしい。


私は、メインの肉料理を残したというのに、このバニラのジェラートとイチゴは独り占め。




やっぱり、私はアマイ女?


一樹を見ると、「そんなアマイのよく食べられるなぁ」といった顔で、人生アマちゃんの私を見ていた。


アマちゃんの私には、一樹のようなサディスティックな男性が必要なのかもね、と思いながら、


イチゴをひとつ、一樹の口元に差し出した。


はい、あーんして、食べなさい、アマイものを嫌いだなんて、だめよ、


と、ママのように一樹に無理やりイチゴを食べさせる私は、サディストなのか、それともマゾヒストなのか?




THE END  Written by Akeming


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【 サディスト  後記 】


さて、私はサディストとマゾヒスト、どちらかしら?


このストーリーの一樹と同じく、両面持っているかも?!


みんなそうなのかもね!


表裏一体なのかもしれません・・・


ってことは、どっちでもいいのです(笑)