彼はいつも

待ち合わせに遅れてきた

私はいつも

イライラしていた

慣れても慣れても

少しずつ怒りが溜まった



私は髪を伸ばしている

たまにしか会えない彼に

「髪伸びたしょ?」

って訊く

彼は

「わかんない」

とか

「変わんない」

とか

いつも塩対応で

私はつまらなかった



彼とは別れ際

いつも彼が

「じゃあ…お疲れ様」

って言って

私が

「今日もありがとう」

って言って

別の方向へ歩いてゆく

そんな彼に私は

心理的距離を置かれている気がして

恋愛関係ではないことを

示されている気がして

淋しかった




それが…




その日はいつもの

遅れます連絡がなかった

どうせ待ち合わせ時間になってから

慌てて連絡でも来るのかな

って思いながら

待ち合わせ数分前にお店に着いた

お店の方に予約名を告げた時

後ろから誰か入ってきて

彼だった

彼が間に合うなんて

いつ以来だろう



その日私は髪をまとめていた

そろそろ帰る時間というタイミングで

化粧室で髪を下ろして戻った

そして

「恒例の〜、髪伸びたしょ?」

って訊いてみた

彼は笑って

「うん、伸びたね…」

と優しく言った



その日は別れ際

離れがたくて

目を見つめたまま黙ったら

「ありがとう…」

って彼が言った

私は胸が詰まって

「おつかれさま」

しか言えなかった




「ありがとう」

と君に言われると

なんだかせつない