あの日と同じ真っ青な空が広がっている
押し入れにしまっていた座蒲団を日に干した
十枚ほどをぱんぱんと叩く
あの頃この座蒲団に座ったのは大人ばかりだった
読経をあげたのも大人ばかり
叩きながら
あの人この人の顔が浮かんだ
どの顔も十六年前の顔だ
もう会えない人もいれば
また会える人もいる
けれど
この座蒲団に座ることはもうないだろう
仕方のないこと…

いやまてよ
あれから少しずつ家族が増えたではないか
大きい座蒲団にちょこんと座る子どもも四人になった
読経の声に高い音が重なるようになったではないか

すこしふっくらした座蒲団を五枚ずつ積み重ねながら   明日を待つ
遺影が少し笑ったような





ただ眠る亡き夫に照れ秋の月
                                        アマンバ




緩和剤で眠るだけになった夫を部屋に残し  病院の廊下の窓から見事な月を眺めていました
隣に人の気配がしました
「きれいですね」
夜勤の看護師さんでした
2人で月を眺めました
少し霞んだのを感じたとき   彼女も一緒に優しい涙を溜めていてくれました
それだけで少し楽になれた夜でした
あの四角い窓にしか見えなかった月
眠る夫を照らしているようでした







自由に伸びるところが好きだと描いた絵手紙は大切にしている