とある日の事にございます。
お豆の奉公先はスーパーの駐車場に、スーパーと別棟で建つテナントのクリーニング屋でございます。
土日はスーパーと営業時間が少し違います。
そんな土曜日の朝の事でした。
スーパーは開店しておりましたが、お豆の奉公先はまだ開店しておりませんでした。
お豆が、朝の掃除をしていると入り口のガラス戸をガンガン叩く女性と目が合いました。
「まだ、開店前なんですけど」
とお豆。
「急いで要るの。ダメ?」
とかなり焦った様子で受け取り表をちらつかせる女性。
仕方無い。
「今回だけですよ」
とお豆は出来上がり品を出して来て渡しました。
掃除の続きをしていると。
またまた、ガラスを叩く老人が。
「昨日、電話もらったジュウタン取りに来たよ」と。
とても大きなジュウタンです。
正直、ちょっと邪魔でした。
で、「出来上がって、参りましたので」
と電話したのです。
仕方無い。
ジュウタンを持ち帰って欲しいので。
「まだ、開店前なのですが」
「今回だけですよ」
とまたまた開けてお客様を中へ。
重いジュウタンを引きずる様に運び出して来ると。
あれっ?
お客様が2人になっていました。
ジュウタンを老人に渡し。
もう1人の男性に
「開店前なので受付は出来ないですけど」とお豆。
「引き取りだけ」とお客様。
仕方無いかと出来上がり品を出して来るお豆。
事件はここから起こりました。
「まだ開店前なので、今後は開店してからでお願いします」
とお豆が言うと。
「1分位良いじゃないか」
「ジュウタンの人には何も言ってなかった」
「なぜ自分にだけ言うのか」
「差別だ」
等々。
かなりお怒りの様子です。
「前の方には、来店された時点でお伝えしました」と冷静にお豆。
「なんだ、その態度は」
「こっちは客だぞ」
「暑い中、来てやったんだぞ」
「上に言うぞ」
脅しが出てきました。
「お気に触ったのでしたら謝ります」
「申し訳ございません」とお豆。
「悪いと思って無いだろう」
「上に言うからな」
捨て台詞で去って行かれました。
《終わった》
落ち込むお豆。
お客様より先に懺悔をと、お豆はエリアリーダーに電話しました。
「すみません!」
「やらかしてしまいました😭」
と。
意外にも、エリアリーダーが
「良い勉強したね」
「いろんな人が居るから」
「ニコニコしてれば大丈夫よ」
「引きずらないで」
「今日も宜しくね」
と優しく言ってくれました。
この後。
お客様から本社に苦情が入る事はありませんでした。
ホッ。
冷や汗ものの良い勉強させていただいたお豆でした。
しかし。
「『1分位良いじゃ無いか』はどうも納得いかなぁ➰」
「それに、正確には1分以上だし」
とぶつぶつ。
言いつつも。
《広い心が欲しい》
切に願うお豆でございました。
トホホ。
捕捉。
思えば、この男性も災難だったのです。
自分には全く非が無いと思っているのです。
店の戸が開いていたので「ラッキー」と入ってみたら、顔一面に《迷惑なんですけど》と書いた様な愛想の無い対応をされてしまったのですから。