第56期∮風の吹くほうへ | れーらの気侭小説

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フィクション小説を書いていましたが、醒めてしまい休止中です。


冷えた森を朝日が優しく暖める。

氷に覆われた世界に足を踏み入れると、木々をつなぐ氷の壁が目に入った。

まわりをまわっていくと一面だけ壁のないところがあり、おそるおそる中を覗き込むと玲奈が倒れていた。

「玲奈!?」

(ひどい傷……一体誰が)

手を当てて光を発し、玲奈の傷を治療した。

傷が癒えると玲奈が目を覚ました。

「真那、これ」

玲奈は自分の体を見回し、傷が治っていることに気がついた。

「私の能力で治したの!ふふふふ」

大矢の笑顔につられて玲奈も笑顔になる。


「っと、私こんなことしてる場合じゃないんだ」

頭をさすりながら玲奈は立ち上がった。

逃げていった野中たちを追わなければ。

「ダメだよ!傷が治っても体力まで完全に回復するわけじゃないんだから!」

玲奈の肩を押さえて座らせた。

大矢の様子をきょとんとした目で見る。

(真剣に怒ってる……)

「せめてもう少し休んでから」

「わかったよ」

自分を本気で心配してくれている人がいる。

もう十分に疲れは取れていたが、大矢の気持ちを考えれば押し切ることはできなかった。


座って休む間、二人はいろいろなことを話した。

二人が今までどんな風に過ごしてきたかということ。

それに玲奈は今から何をしようとしていたかということ。

また、偶然にも互いに二人ずつ倒したことなど共通の話も上がって会話に花が咲いた。


ブーン。

『参加メンバー100名中、残り65名』


ペットからの連絡を聞いて二人は顔を見合わせた。

考えていることは同じ。

この短時間でまた連絡が入るなんて。

一日目とは比じゃないほどの速さでバトルが進んでいる。

そろそろ再び動いてもいい頃だろう。

玲奈が歩き出すと大矢も黙って後ろにくっついていく。


長く休んでいる間に遠くまで行ってしまったかもしれない。

凍らせた湖の上を渡って荒地に出たが、果たしてダメージを負っているあの二人が隠れる場所もないこんなところに来るだろうか。

もちろんその答えはノーだ。

引き返そうとしたとき、大矢があるものに気づいた。

「ねえ、あれって」

指差す先にはうっすらと町のようなものが見えた。

空から見ると、小さかったがそれは確かに町だった。


その町の小さな建物の中には野中と咲子が潜んでいた。

木でできたオンボロなその建物は小屋とでも言ったほうがより近いだろう。

わずかにあった薬品で手当てをし、パンをほおばっていた。

「みちゃ、痛くない?」

「えー、痛いけどさ」

なんでもない話でも笑えてくる。

「みちゃはもし選抜に入れたらどうする?」

もし選抜に入れたら、あながち仮定でもないその話題で盛り上がる。

「うわっ!この人ニヤニヤしてる!自分が選抜に入ったことあるからって」

「そんなニヤニヤしてないもん!」

「ニヤニヤしてる~」


そんなやりとりを続けていると急に強い揺れを感じた。

地震かと思い慌てて外へ飛び出すと、さっきまで明るかったのが一転して暗い。

見上げるとドーム状の物体が町を覆いこんで冷気を放っていた。

「あー、いたいた」

空から降りてきた玲奈が翼をしまってこちらに向かってきた。

咲子が超音波を放ったが、玲奈の手に作られた氷の盾によってはね返されてしまった。

「咲子!」


ブーン。

『YOU WIN』

『参加メンバー100名中、残り60名』


野中が振り向いたときには、すでに咲子の体が透けていた。

(そんな!)

「次はあなた」

玲奈の視線が野中へと向かう。

野中はすでに戦う気がなくなっていた。

うなだれる野中に向けて撃った拳を寸前で止めた。

「これはお祭りの中のゲームだよ。平等なチャンスなんだからもっと貪欲になったほうがいいよ」

そういい残して立ち去った。

貪欲になれ。

その言葉が野中の胸に深く突き刺さった。

できるだけ戦いを避けてきた彼女だったが、玲奈の一言によって何かが変わり始めていた。


町を出ると地面の下から大矢が現れた。

「なんで二人とも倒さなかったの?追ってたんでしょ?」

少し間をあけて玲奈は答えた。

「倒すつもりだったけど……気まぐれ?」

「気まぐれって、戦う気のない人は倒したくないってことじゃなくて?」

「そういうことかもね」

そうは答えたものの、単にそれだけの理由であれば抵抗しなかった山内のように玲奈は躊躇なく倒していただろう。

本当の理由を正しく表現できるかわからない。

心の中のモヤモヤこそが倒さなかった理由だった。

「今からどこ行こうか」

玲奈が一言つぶやくと大矢が答える。

「風の吹くほう!」



渡辺が三人を引き連れて下へ降りていく。

だが、下の広間で戦うメンバーを助けるわけではない。

外へ出て南の大きな門をあけ、真っ直ぐ前田たちのところへ向かう。

(いたいた。じゃあ遠慮なく奇襲を仕掛けますかね)

(あっ、そういうことか)

『こっちの戦力は三人じゃないよ。六人』

鬼頭はようやく先ほど渡辺の言った意味がわかった。

「桃菜ちゃんはここで待っててね」

そう言うと鬼頭を残して渡辺ら六人は散らばった。


まずは渡辺が前田らの後ろにまわりロケットで注意を引く。

「なに!?」

四人は一斉に爆音のした方を見上げた。

視線を下に降ろしていくと、ランチャーを背負う渡辺を発見した。

「まゆゆ!」

自分に気づいた前田らに発射口を向けて二発のロケットを撃ち込んだ。

当然敦子と板野はそれを避けようとするが、中塚だけは立ち尽くしていた。

「クリス!」

「危ない!」

バゴーーーン!!!

ミサイルは中塚の前で爆発した。

それを見た渡辺は、おや、と意外そうな顔をした。


それにより飛び出そうとかまえていた木崎と斉藤はその足を止められ、飛び出すタイミングを見失ってしまった。

だがそこはさすが渡辺といったところか、一手目がダメならばすぐに二手目を打ってくる。

片手に構えたランチャーでロケットを撃ち、もう片方の手からはビームを撃ってきた。

中塚はその軌道を上手く操って自分たちのもとへ来ることを許さない。


三人が渡辺一人に目を取られていると、後ろから斉藤が飛び出してきた。

「わーっ!」

地面から飛び出してきた木が板野の足に巻きついて地中に引きずり込んだ。

「ともちん!」

それに気を取られた敦子に斉藤が襲い掛かる。

パンチを撃ったがいとも簡単に止められてしまう。

(さすがNo1の前田さん!)

ギリギリ。

「そんなパンチじゃ勝てないよ」

これがパンチだと言わんばかりの拳が斉藤の頬に突き刺さる。

よろけたところを強力なキックで追い討ちをかけて蹴り飛ばした。


茂みの中に飛んでいった斉藤を追いかけていくと、相手はすぐに飛び出してきた。

カウンターを狙ったが腕が動かなかった。

(なに?)

後ろを振り向いた敦子は自分の目を疑った。

正面にいる斉藤が自分の後ろにもいる。

「うおー!」

無防備な敦子に斉藤のパンチが当たった。

(この状況……)

敦子は第一ステージのことを思い出した。
寝ているところを松原に押さえつけられて中田に強い電撃で襲われた。

あのときは寝起きだったこともあってやられかけてしまったが今は違う。

「はあぁぁぁ!!!」

自分を押さえていた後方の敵を頭突きでひるませる。

(よし、外れた)

すぐに抜け出して前方の敵へパンチを一発。

反撃をしようとしてきた後方の敵へすかさず後ろ蹴り。

前へ向き直って前方の敵を掴み、後方の敵の上へ投げ落とした。

「ぐはっ!!」

「……相手にならない」


「ふふふふ」

シュルシュルシュル。

木が敦子の体をしばりつけた。


「!?」

瞬間、その場にいた全員の視線が城に向かった。

上層で突然の大爆発。

一体何が起きたというのか……。




to be continued...