野田佳彦首相は16日午前、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働をめぐり、同原発が立地する福井県の西川一誠知事と首相官邸で会談した。西川知事は再稼働に同意する意向を表明。これを受け、首相は枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚との会合を開き、「立地自治体の理解が得られた今、再起動を政府の最終判断とする」と述べ、同原発の再稼働を正式決定した。昨年3月の東京電力福島第1原発事故以来、定期検査で停止した国内の原発が再稼働するのは初めてとなる。

【写真特集】現地の様子や再稼働に抗議する人たちなど…大飯原発再稼働決定

 西川知事は会談で、安全技術の向上や中間貯蔵対策、日本海側の地震・津波調査など8項目を要望。そのうえで「主な電力消費地である関西の生活と産業の安定に資するため、同意する決意を伝えたい」と表明した。首相は「知事の決断に深く感謝したい」と述べた。

 政府の決定を受け、関電は16日午後から再稼働の作業に着手する。原発1基を稼働させるのに3週間かかるとされ、3、4号機がともにフル出力に達するのは早くて7月下旬となる。北海道、沖縄を除く全国で7月2日に始まる節電期間には間に合わず、電力需要がピークとなる真夏にフル稼働できるかも微妙だ。

 政府は4月中旬の閣僚会合で、同原発が福島第1原発事故後に策定した安全基準を満たしていると認定。夏の電力需給を安定させるためにも再稼働が「妥当」と判断した。

 政府は当初、立地自治体の福井県とおおい町の理解を得て、5月の大型連休明けにも再稼働に踏み切る方針だった。しかし、大阪市の橋下徹市長ら周辺自治体が反発したため、細野豪志原発事故担当相らが関西広域連合に2度にわたり説明に訪れ、事実上の容認を取り付けた。

 一方、西川知事は、首相が国民に直接説明することを要求。首相は今月8日に記者会見し、「国民生活を守るために大飯原発を再起動すべきだというのが私の判断だ」と明言。これを受け、おおい町の時岡忍町長が14日に同意を表明した。西川知事が会談で同意したことから、首相は再稼働の環境が整ったと判断した。

 国内の原発は現在50基(廃炉の福島第1原発1~4号機を除く)。北海道電力泊原発3号機が5月5日に運転を停止して以来、国内では42年ぶりに「原発ゼロ」の状態が続いていた。

 政府は大飯以外の原発についても、安全性と必要性の両面から再稼働の是非を検討する方針。だが、9月までに原子力規制委員会が発足することから、今後の再稼働判断は、同委が新たに策定する安全基準に沿って行う見通しで、時間がかかることになりそうだ。

 政府は将来のエネルギー政策をめぐる議論も進めている。「エネルギー・環境会議」は6月下旬、2030年時点の全電源に占める原発の比率が0~25%となる複数の選択肢を公表。8月には今後の方針となる「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめ、経産省が「エネルギー基本計画」を策定する。【笈田直樹、丸山進】

 ◇関西電力大飯原発

 福井県おおい町に1~4号機が立地する。いずれも加圧水型(PWR)で、東京電力福島第1原発の沸騰水型(BWR)とは炉型が異なる。4基の総出力は471万キロワットで、関電の3原発では最大規模。1、2号機は79年に営業運転を開始。3号機は91年、4号機は93年に営業運転を始め、関電では最も新しい。3、4号機の出力はともに118万キロワット。政府は安全評価(ストレステスト)の1次評価結果を再稼働の前提条件にしており、関電は昨年11月までに3、4号機について経済産業省原子力安全・保安院に提出。内閣府原子力安全委員会が今年3月、了承していた。