14日の盛岡11Rで行われた第26回マイルチャンピオンシップ南部杯(3歳上オープン、交流GI、ダート1600メートル、13頭立て、1着賞金=4500万円)は、後藤浩輝騎手騎乗の2番人気エスポワールシチー(牡8歳、栗東・安達昭夫厩舎)が逃げ切り、同レース3度目の優勝。後藤騎手は復帰後初の重賞勝ちが、GI制覇となった。タイムは1分35秒1(良)。

 衰えのない逃げ脚の古豪と、不屈の闘志でよみがえったジョッキーが、みちのくで歓喜のVを勝ち取った。堂々の逃げ切りで南部杯3度目の優勝を果たしたのは8歳馬エスポワールシチー。初騎乗の後藤浩輝騎手が、うれしいGI制覇で完全復活をアピールした。

 レースは好スタートを切ったエスポワールシチーがスムーズにハナを切り、外から断然人気のホッコータルマエが2番手。グレープブランデーがインから3番手につけ、人気の中央馬が先行する。エスポワールシチーが快調に飛ばして、4コーナーではホッコータルマエを引き離し、直線へ。やや反応の鈍いホッコータルマエに対して、エスポワールシチーは軽快な逃げ脚。ゴール前ではやや差を詰められたものの、それでも危なげない逃げ切りで見事に南部杯3勝目を飾った。1馬身1/2差の2着がホッコータルマエ。さらに3馬身離された3着が5番人気のセイクリムズンだった。

 エスポワールシチーは、父ゴールドアリュール、母エミネントシチー、母の父ブライアンズタイムという血統。北海道門別町(現・日高町)・幾千世牧場の生産馬で、(株)友駿ホースクラブの所有馬。通算成績は38戦16勝。重賞はGIIIマーチS、交流GIかしわ記念、交流GI南部杯、GIジャパンCダート(2009年)、GIフェブラリーS、交流GIかしわ記念(10年)、交流GIII名古屋大賞典、GIIIみやこS(11年)、交流GIかしわ記念、交流GI南部杯(12年)に次いで11勝目。安達昭夫調教師は09年、12年エスポワールシチーに次いで南部杯3勝目、後藤浩輝騎手は00年ゴールドティアラに次いで2勝目。

 大歓声で迎えたファンに「ただいま!」と大声であいさつした後藤騎手は「デビューして初めて勝ったGIが、ゴールドティアラでの南部杯だったので、今回は再デビューの気持ちで臨んだGIでした。初めてGIを勝ったときの喜びがこみ上げています。きょうは(エスポワールシチーの主戦で負傷療養中の)佐藤哲三さんになったつもりで乗ったので、“このときに哲三さんならどうするだろう?”と馬に聞きながら乗っていた感じです。一度調教にまたがらせていただいて、哲三さんからも話を聞かせてもらっていたので、イメージもできていました。けいこで乗ったときから雰囲気が若々しくて、自信を持って乗ることができたし、来るならいつでも来い、という気持ちで乗りました。僕と哲三さん、GIジョッキーが2人乗っているんだから、ここまで来たら負けないぞ、という思いで4コーナーで動きました。皆さんの歓声を肌で感じることができて、もっと直線が長ければいいのに…と思いました。(手を横に突き出すガッツポーズは)哲三さんのガッツポーズを再現しました。復帰して、まだまだの僕をGIジョッキーにしてくれて、騎手人生の中でも心に残る一頭になると思います。病室にも皆さんの応援は届いていました。これからはその応援にお返しするつもりで頑張ります」と同じく長期療養からの復帰を目指す主戦ジョッキーとの“合作”によるGI制覇を笑顔で振り返っていた。

(サンケイスポーツより)

勝った8歳馬の古豪エスポワールシチーもすごいですがこのGI勝利を導いたのは落馬負傷から復帰後の後藤騎手の手綱です。

逃げの戦法を取ってダート界では今一番強いであろうホッコータルマエの追い上げを振り切って勝利した手綱は見事でした。騎手生命が絶たれたかもしれない落馬による大けがから懸命なリハビリを経て復帰しGI勝ちを達成した後藤騎手の努力は素晴らしいとともに同じ落馬負傷し療養中のエスポワールシチーの主戦でもある佐藤哲三騎手の思いも乗せて2人で戦ったというインタビューも素晴らしかったです。この思いは佐藤哲三騎手に伝わって励まされたと思います。


後藤騎手といったらかつてはひょうきんなイメージがある人柄でしたがリハビリ中に競馬中継にゲスト解説をしたときはJRAの規定で予想ができない立場で制約がありながら冷静な語り口でレース展開や騎手の心理状態といった騎手ならではの視点で解説していてクレバーなイメージを持ちました。


近年は地方競馬出身騎手の台頭や外国人騎手が短期免許で日本に乗りに来るケースがあってJRAの競馬学校出身の騎手の活躍が減ってきている感があるので後藤騎手には競馬学校出身騎手の意地を見せて活躍してほしいと思います。