第410場(2) ヒロママの実家 | 小説「果実な僕ら」

小説「果実な僕ら」

駆け出し脚本家の、初めての携帯小説です。
BLで始まりますが、内容は様々なヒューマンストーリー。
脚本形式なので、ご了承ください。

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あかざえもん @akazaemon_hoshi

(居間)


ヒロママ:「今帰りました。」


父親:「ヒロシか!ずいぶん大きくなったな!」


ヒロママ:「おかげさまで。父さんも元気そうだね。」


父親:「定年してから草野球を初めてな、なかなかいい体力作りになるぞ!ヒロもやるか?」


母親:「お父さん、ヒロシは何か話があったから、帰ってきたんじゃないの?」


父親:「そうだな。数十年も留守にして帰ってくるのには、なにかあったんだな。

借金でもできたか?」


ヒロママ:「そんなんじゃないよ。

驚くと思うから、覚悟して。」


母親:「覚悟?」


父親:「うむ。」


沙知代:「おっけー!」


ヒロママ:「あのさ…俺…ゲイなんだ。

男が好きなんだ。すみません!」


母親:「やだぁ、そんなこと?!

命に関わる病気かと思っちゃったじゃない。」


父親:「多額の借金とかな。」


ヒロママ:「驚かないの?」


母親:「そりゃあ直接言われればびっくりするけど、なんとなくそんな雰囲気あったからね。」


沙知代:「部屋にエロ本1冊もないとことかねー(笑)」


父親:「そんなことで今まで帰ってこんかったのか。なら、これからはいつでも堂々と帰って来れるな。」


ヒロママ:「待って!まだ続きがある。

実は結婚したい人がいるんだ。」


父親:「男と結婚するのか?」


母親:「どうやって?」


沙知代:「パパもママも知らないの?!

養子縁組して、『息子』か『兄弟』になれば、ゲイの結婚だよ。」


ヒロママ:「そうなんだ。戸籍を動かしたい。」


父親:「好きにすればいい。」


ヒロママ:「え?」


母親:「ヒロシが好きになった人なら、私達も応援するわ。つまりその相手がうちの戸籍に入るか、ヒロがその人の戸籍に入るかでしょ?」


ヒロママ:「そうだけど、そんな簡単に返事していいの?」


沙知代:「いいって言ってるからいいんだよ!」


父親:「それより会わせてはくれないのか?」


母親:「そうね!それが大事ね!」


沙知代:「イケメン?」


ヒロママ:「会わせるのはいいんだけど、実は俺、いつもはオネエ言葉なんだ。」


母親:「あら、じゃいつも通り話せばいいじゃない。」


ヒロママ:「気持ち悪くない?」


沙知代:「全然!でも化粧とかはしてないんだね、残念。」


ヒロママ:「今は調理と人に関わる仕事してるから、身なりは普通にしてる。」


沙知代:「じゃあ化粧のこと教えてよ!」


母親:「それより恋人さんの写真見たいわ。」


父親:「ヒロシが結婚したら息子が2人になるのか!」


ヒロママ:「認めて…くれるの?」


沙知代:「きゃはは。」


母親:「あはは。」


父親:「はっはは。」


ヒロママ:「どうしたのよ、笑いだして。」


父親:「ゲイだろうがオカマだろうが、ヒロシはヒロシだろ?」


母親:「そうよ、ゲイくらいなんでもないわ。」


沙知代:「お兄ちゃんとお姉ちゃんの両方になれるしね!」


ヒロママ:「あり…が…と…。」


父親:「泣くやつがあるか!

よし今日の昼飯はヒロシが帰ってきた記念で寿司とすき焼きだ!」


母親:「あら、じゃお寿司注文して買い物行かないと。」


沙知代:「私も手伝う!お兄ちゃんもね!」


ヒロママ:「うん…ありがとう…ありがとう…。」



(ヒロママの一世一代のカミングアウトは、明るい家族に両手で受け止められ、直哉を会わせる約束をして帰った。)