第404場 新幹線の中 | 小説「果実な僕ら」

小説「果実な僕ら」

駆け出し脚本家の、初めての携帯小説です。
BLで始まりますが、内容は様々なヒューマンストーリー。
脚本形式なので、ご了承ください。

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あかざえもん @akazaemon_hoshi

【第404場 新幹線の中】


(11月3日 15:30頃)

(武尊と一平が浜松に向かっている)


一平:「お互いバイト休めて良かったな!」


武尊:「うん…。」


一平:「駅弁じゃなくて菓子パンってとこが侘しいけど、貧乏学生には上等だよな?」


武尊:「うん…。」


一平:「そんなに不安か?」


武尊:「うん…。」


一平:「なら、こうしようぜ!

武尊の家のダイニングにテーブルあるか?」


武尊:「変わってなければ。」


一平:「だったら、テーブルの下で手繋いでてやるよ!」


武尊:「え?!」


一平:「不安だったら力込めて握っていいから。」


武尊:「わかった。ありがとう。」



(夕方 武尊の実家)


ピンポン


ガチャ


女:「はい。って、あー、タケシ?!」


武尊:「武尊です。」


女:「あ、タケルね。

マー君!タケル帰ってきたよ!」


父親:「武尊が?!

ホントに武尊じゃねーか!

ま、上がれよ。」


一平:「こんにちは。武尊君の友達の一平です。」


父親:「おう、友達も上がれ。」


武尊:「…。」


一平:「お邪魔します!」


(ダイニングテーブル)


父親:「どうだ?芸能界は?

テレビにはいつ出るんだ?映画か?」


武尊:「えっと…。」


父親:「今日は稼いだ小遣いくれに来たんだろ?」


女:「芸能人って儲かるもんね!」


武尊:「芸能人じゃないから…。」


父親:「どーゆーことだよ!

お前が芸能人になるって言ってたぞ!

それでバンバン稼いで、楽させてくれんだろ?」


武尊:「…。」


女:「ちょっとー。黙ってちゃわかんないじゃん。」


キュッ


一平:「あー!その話なんですけど!

俺ら養成所で一緒だったんですけど、オーディション落ちまくって、事務所クビになりました!すいません!」


父親:「なんだと?!

それで今さら帰って来ようってんじゃないよな?」


女:「それマジ迷惑。」


武尊:「…らない。」


女:「はっ?」


武尊:「帰らない。もう帰ってこない。」


父親:「芸能人になる話がパァなら、帰ってこなくていいぞ。」


キュッ


一平:「武尊、はっきり言え!」


武尊:「もう二度と帰ってこない!

親子の縁も切る。一生会わない!」


ガタガタッ


一平:「お邪魔しました!」


バタン



(団地の下)


武尊:「うっ…くっ…。」


一平:「武尊…。」


ガバッ


ギュッ


一平:「泣くなら俺の胸で泣けよ。

声我慢しなくていいから。」


武尊:「うわぁぁぁ。うわぁぁぁ。」


一平:「立派だったぜ!

涙と一緒に親子の縁も流しちまえ!」


武尊:「うわぁぁぁ。」



(帰りの新幹線)


武尊:「なんか、ごめん。」


一平:「謝ることなんてねーよ。」


武尊:「着いてきて貰って、助けて貰って。」


一平:「それなら、ごめんじゃなくて、ありがとうだな。」


武尊:「ありがとう。

情けないよね、大泣きして。」


一平:「んなわけねーじゃん。

でももし仮に情けなくても、俺は武尊が好きだぜ。」


武尊:「ありがとう。」


一平:「返事が軽いなー。」


武尊:「え?」


一平:「だから!恋愛対象として好きだ!」


武尊:「え?え?」


一平:「入学した頃から可愛いなって、男に言うのも変かもしれないけど、思ってた。

男子校中退だから、ゲイカップルにも慣れてて、自然と好きになってた。」


武尊:「一平…。」


一平:「一つ縁切ったから、一つ縁作らね?

俺と付き合おうぜ。」


武尊:「付き合う…。」


一平:「男はやっぱり好きになれねえ?」


武尊:「ううん、好きになったことあるから。」


一平:「なら、俺と付き合おう。」


武尊:「ほんとにいいの?」


一平:「それはこっちのセリフだ。

そう聞くってことはOKだよな?」


武尊:「うん。一平となら楽しく過ごせそう!」


一平:「よっしゃー!任せとけ!

ワンダフルエンジョイライフを送らせてやる!」


武尊:「あはは。」



(武尊が過去と決別した日、武尊にとってはこの先大きな存在となる一平との縁が結ばれた。)