第293場 Nirvana | 小説「果実な僕ら」

小説「果実な僕ら」

駆け出し脚本家の、初めての携帯小説です。
BLで始まりますが、内容は様々なヒューマンストーリー。
脚本形式なので、ご了承ください。

Twitterで自動更新ツイートしてます。
あかざえもん @akazaemon_hoshi

【第293場 Nirvana】


(遡って6月中旬)

(閉店後)


司:「エレア、今日飲みに行かへん?」


エレア:「あー、行きてーけど、俺明日模試なんだよな。」


司:「そんなもん普段勉強しとったら、1晩くらい関係あれへんやろ?

たまには男同士で飲もうや

それに大学通いながらホストするんやったら、アフターとかある場合と同じやろ?」


エレア:「確かに。んなら、行くわ!」


司:「そーこな!」


エレア:「とりあえず、かおにはLINEしとくか。」


『エレア:今日店のやつと飲みに行くから帰れない。ごめんな。』


♪ピロリン


『かお:わかった。でも明日模試なのに大丈夫?』


『エレア:じたばたしても始まんねーし、受験票はカバンに入れてるから直で行くからへーき。』


♪ピロリン


『かお:気をつけてね。模試頑張って。』


司:「彼女にLINE終わったか?」


エレア:「おー!帰れなくなるから、寮に泊めろよな?」


司:「当たり前やんけ。オールしてそのまま模試行ったらええねん。」


エレア:「俺のクビがかかってる模試なんですけどー。」


司:「気合いや、気合い!」



(翌日 模試会場)


エレア:「受験番号が確か579だから、席ここか。

えっと鉛筆と受験票と…ってあれ?受験票がない!さっきまであったのに?!」


?:「杉田エレアさん、これ君の?」


エレア:「あ!俺の!ありがと!

めっちゃ助かった!えーっと。」


?:「怜。小泉怜。見た目と名前で女に間違われるけど、男だから。」


エレア:「怜くんな。マジ感謝!」


怜:「感謝してるなら、少し席ズレてもらっていい?その奥が俺の席。」


エレア:「受験番号隣か!悪い!悪い!」


怜:「エレアくんは、模試なのに緊張してないんだね。」


エレア:「まぁ、なるようにしかならんっしょ。」


怜:「羨ましい。俺は絶対落とせないから、つい緊張する。」


エレア:「じゃ、時間まで話す?

問題の出し合いとか。逆に緊張するか?」


怜:「普通に話してくれると助かる。」


エレア:「じゃ、怜くんはどこ受けんの?」


怜:「怜でいい。俺は学芸大目指してる。」


エレア:「一緒じゃん!俺も学芸大。

あ、俺のこともエレアって呼んでくれよな。」


怜:「エレアはどこ高?」


エレア:「開成高校行ってた。」


怜:「行ってたってことは、浪人?」


エレア:「いや、1回医科歯科大入ったけど、やっぱ教師やりたくて受け直し。

だから歳は二十歳。」


怜:「受け直すなんて、余裕あるんだ。」


エレア:「余裕?勉強の?」


怜:「いや、金銭的に。」


エレア:「まぁ、ちょっと理由あって金には困ってないかな。」


怜:「そう…。」


エレア:「あれ?なんか悪いこと言った?」


怜:「いや、気にしないで。

じゃ、俺、復習するから。」


エレア:「お、おう。」


(模試が終わる)


エレア:「怜!また模試で会ったら声かけてくれよな!」


怜:「そんなにばったりって偶然なかなかないと思うけど。わかった。」



(その日の夜)

(かおとエレアの家)


エレア:「昨日ごめんな。」


かお:「僕はいいけど、最近泊まりなこと多いね。」


エレア:「やっぱ店のヤツらとは仲良くなりてーし、後輩を飯連れてくのも幹部の仕事だからな。」


かお:「お店楽しい?」


エレア:「そーだな。充実してる。

売上も先月負けたけど、今月はNo.2に返り咲きてーし。本当は不動のNo.1の仁さん抜きてーけどハードル高いわ。」


かお:「応援してるね。」


エレア:「おう!ありがとな!」


かお:「明日は日曜日だから、家でお昼食べるよね?何がいい?」


エレア:「悪い!明日は司の買い物付き合うことになってるから、たぶん起きてすぐ出かけるから、飯はいいや。

かおはたまにはゆっくりしろよ?」


かお:「僕はそんなに忙しくないから大丈夫。」


エレア:「んでも就活も大詰めだろ?」


かお:「うん、回答待ちしてる。」


エレア:「なら、上手く行くよう祈ってる。」


かお:「僕もエレアの模試の結果がいいことを祈ってる。」


エレア:「おう。意外に簡単だったから、行けそー。

そーいや、今日模試会場で変わったヤツと出会ったな。」


かお:「変わった子?」


エレア:「怜つって、女みてーってゆーか、中性的な美形。つくもも美形なんだろうけど、またちょっと雰囲気違ってさ。

なんつーか、ミステリアスな感じなのに親切で。」


かお:「へー。新しい出会いがあったんだね。」


エレア:「おー。なんか興味そそられる感じだったから、もう1回話してみてーな。」


かお:「そっか。また会えるといいね。」


エレア:「ごちそうさま!

んじゃ、風呂入ってくるわー。」


かお:「うん、行ってらっしゃい。」


(水槽の前)


コンコン


かお:「ねー、上様。

エレアはお店が充実してるなら、いいことだよね?

もっと僕と一緒にいてってワガママだよね…。

エレアが充実した生活を送ってくれるのは嬉しいけど、なんか最近寂しいよ…。」



(充足した毎日を駆け足で過ごしているエレアに、ほんの少しの溝を感じ始めていたかおだった。)