前回の記事では「姿勢/動作によって健康寿命が伸びる」という内容で書かせていただきました。
内容の確認をしますと、
姿勢には大きく2つの要素があります。
1つ目は、身体に負担のかからない姿勢/動作を維持すること
2つ目は、身体に負担のかからない姿勢/動作を維持するために必要な筋力があること
1つ目の「身体に負担のかからない姿勢/動作を維持すること」がうまくいかず、
負担の大きい姿勢を続けてしまうと
一部の筋肉にこわばりが生じ、それが睡眠障害やストレスなどにつながっていきます。
そのため、負担の少ない姿勢を習慣付けて不調を予防していくことが大切です。
と説明させていただきました。
これは同じ姿勢/動作を続けることにより
常に働いている筋肉とそんなに働いていない筋肉とに分かれてしまい、
常に働いている筋肉が疲労を起こしてしまうといった現象でした。
では今回は、
「姿勢/動作」の2つ目の要素である「身体に負担のかからない姿勢/動作を維持するために必要な筋力があること」についてです。
前回の記事で例に挙げたスマホを見る時の姿勢/動作でしたら
スマホを顔の高さまで上げるだけですので
やろうと思えば、おそらくほとんどの方が問題なく実施できると思います。
しかし、どこかの筋力が弱いことで、このような負担の少ない姿勢/動作を実施できない場合があります。
例えば、椅子に座る姿勢(椅子の高さが体格に合っているという前提です)。
背筋を床に対して垂直にした状態で座れれば、負担の少ない姿勢になるのですが
そのような状態を短時間しか維持できず、気付いた時には背中が丸まって
背もたれにもたれるような姿勢になってしまう人も少なくありません。
これを「仙骨座り」といいますが、
何故そのようになってしまうのか?
この例の場合、お腹の筋力が低下していることがほとんどです。
特に腹横筋という腹巻のような形の筋肉があり、
これが上半身の重みを支える柱のような役割を果たしています。
腹横筋が弱くなると上半身の重みを支えることが難しくなり、上半身が前に傾いてきます。
このままだとお辞儀のような姿勢になってしまうのでそれを避けるため、また上半身の重量を逃すために、
背中を背もたれに付けることで快適な状態を得ようとします。
もちろん仙骨座りしている人は、これを考えてやっているわけではなく自然に行っています。
ここで疑問が浮かびます。
そもそもなぜお腹の筋力が低下してしまったのでしょうか?
考えられる理由の1つとしては、
生まれてからの身体の使い方などで、
「使い慣れた筋肉」と「使い慣れていない筋肉」が発生してしまうことが挙げられます。
使い慣れていない筋肉とは、「力の入りにくくなってしまった筋肉(=筋力低下)」ということです。
そういった筋肉があると、使い慣れた筋肉ばかりが働き過ぎてしまいます。
この「使い慣れた/慣れていない」は1セットになっていることが多いです。
1セットとはどのような事かと言いますと、
筋肉は正反対の働きをする2種類の筋肉が1セットとなっています。
例えば胴体を前に曲げる筋肉と後ろに曲げる筋肉は、
働きが正反対であるため、表と裏の関係で1セットとなっています。
この表と裏の筋肉が「使い慣れた/慣れていない」に分かれてしまうことは多々あります。
そうならないようにするには
表と裏の筋肉の強弱バランスが非常に大切です。
例えると、表と裏の筋肉が常に綱引きをしている状態をイメージしてみてください。
たまにどちらかが勝つものの、勝敗がつかず力が拮抗している状態が基本的な状態だと思ってください。
しかしこのバランスが崩れてしまうと、
一方の筋肉が常に勝っている状態、つまり「使い慣れた筋肉」となり、
常に負けている方の筋肉は「使い慣れていない筋肉(=筋力低下)」となります。
また、常に勝っている方の筋肉は、常時骨が引っ張り続けているため、骨の位置がズレてきます。
つまり体型に特徴が生じてきます。
以前私が施術した82歳女性のAさんがいます。
Aさんは巻き肩(左右の肩が前方に出てしまい、猫背の姿勢になってしまう)が強く、
その体型から自信がなさそうな立ち姿勢・歩き方に見えてしまいました。
本人もそれをかなり気にしていました。
「そんなの胸を張れば解決だよ」と思われるかもしれません。
確かに胸を張れば、その時は巻き肩ではなくなりますが、
意識的に胸を張っていないと持続できず、気を抜けばすぐに戻ってしまいます。
それでは何も解決しません。
巻き肩や反り腰などの体型は、気合や根性では直りません。
「やれって言うけど、それが出来ないんだよ」と本人が傷付くだけです。
実際Aさんも、これまで施術を受けた複数のセラピストから何度も姿勢の事を指摘されていたようですが、
あまり改善して来なかったため、
「ずっとこうだったから…」と姿勢・歩き方(動作)に関してネガティブになっていました。
そもそも巻き肩になってしまう原因ですが、
巻き肩は、本来働くべき肩の筋肉が、筋力低下などでうまく機能しなくなることが原因です。
そして、それを補うために胸の筋肉が過剰に働いてしまい、
その結果、胸の筋肉が肩を前方に引っ張ってしまうことで巻き肩になってしまいます。
たまたま私がAさんを施術する機会があり、
肩はもちろん、脚を含む全身を施術しました。
施術終了時には全身の筋肉の強弱バランスが整い、
過剰に働いていた筋肉も落ち着きました。
その結果、1回の施術で巻き肩がかなり改善され、
自信がなさそうに見えてしまう姿勢や歩き方(動作)も変わりました。
その姿勢を鏡でAさんに見せると「わあっ、姿勢が良くなってる」と驚き、
そして笑顔でこう話されました。
「私80過ぎてるけど、カッコよく歩きたいのよ」
諦めかけていた理想に近付けた喜びと、その理想が遠くないことを知ってワクワクされているようでした。
私も、年齢を問わず理想を持って、それに向かっていくAさんの生き方に感動しました。
Aさんの場合、
肩の筋力低下により「なりたい自分(カッコよく歩ける自分)」になれない状態が続いていました。
しかし筋力バランスを整えることで、
これまで出来なかった姿勢(巻き肩でない姿勢)や動作(前よりカッコよく歩ける)が出来るようになり
「なりたい自分(カッコよく歩ける自分)」に近付くことが出来ました。
これを維持・向上するためには、施術以外の時間で自主トレーニングを続けていただく必要がありましたが、
Aさんはその後も自主トレーニングを継続して
姿勢・歩き方(動作)を向上することが出来ていました。
そして表情も以前より明るく、歩き方も自信を感じさせるものに変わっていました。
このように「姿勢/動作」は、負担の少ない姿勢/動作をつくれる筋力と、
その姿勢/動作を習慣化していくことで
身体の状態を良く保つだけではなく、精神的にも豊かさをもたらします。
これこそが健康寿命を伸ばすことの意義だと思います!
Aさんのように、いくつになっても自分らしい人生を送っていきたいですね。
では、ありがとうございました!!
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