なにわ人模様:「大阪・九条下町ツアー」主宰、大阪芸大教授・谷口靖弘さん /大阪

2009.03.01 地方版/大阪 22頁 写図有 (全1,244字) 











 ◇下町風情で町おこし--谷口靖弘さん(63)=大阪市西区



 ◇心を込めて「大阪の素顔」発信--外国人向けにもさまざまな工夫



 昔ながらの下町風情が色濃く残る大阪市西区九条。「さあ、ここで六甲おろしを歌いましょう」。3月20日に開通する「阪神なんば線」の新駅「九条駅」のそばで、東北地方から訪れた修学旅行生らが阪神タイガースの法被をまとい、六甲おろしを熱唱する。商店街のおっちゃんおばちゃんとのおしゃべりを楽しみながら、お好み焼きやたこ焼きを試食する――。



 このユニークな町歩きツアー「九条下町おもしろウォーク」は今年で13年目を迎え、国内外からの参加者が5000人を超える人気イベントになった。「ガイドしながら、まじめに観光研究のフィールドワークもしてるんです」と笑う。



 若いころからとにかく旅が好きだった。大学時代、休みになれば北海道から九州まで、日本中を鈍行列車で回った。「この調子だったら、就職しても給料みんな旅行に使ってしまう」と選んだ仕事は旅行会社。6年間勤めた後、フリーのツアーコンダクターに転身した。添乗回数は国内200回、海外60回以上。当時まだ珍しかった格安航空券を使い、「17万円で世界一周旅行」を企画したこともある。実績を買われ、89年からは大学で観光学を教えている。



 仕事に熱中する一方で、3歳から暮らし続ける九条への愛着は人一倍強かった。戦前・戦後にかけ、九条は「西の心斎橋」と呼ばれ、映画館や寄席がいくつもあり活気があったという。商店街や居酒屋などが並ぶ路地裏、周囲を流れる川が遊び場だった。松島新地やポルノ劇場など「夜の歓楽街」の顔もあった。しかし、数十年前からそのにぎわいは失われつつあった。



 「九条を元気にしたい」との思いから、同級生らと約25年前から落語家を招いて寄席などのイベントを不定期に開催。97年3月、地元に大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)が完成したのを機に、市民団体「大阪・九条下町ツアー」をつくり、本格的に町おこしに取り組むようになった。



 「知らない町を歩いてもらうために」と九条の歴史が分かる史跡や下町のグルメスポットなどをイラスト入りで紹介したマップを作成。マップをもとに2時間余りの町歩きツアーを企画、案内を始めた。親子向け、外国人向けなどさまざまな工夫を凝らしたコースを考案し、要請があれば約20人いるボランティア案内人とともに巡る。同時に、参加者から大阪のイメージや感想を聞き、自らの研究にも生かしている。



 認知度も次第に上がり、最近は息の長い独自の観光手法として注目を集める。大阪市などが昨秋から始めた、大阪の魅力を体感しながら町歩きを楽しむ「大阪あそ歩キャンペーン」でも市側から協力要請され、活動の幅はますます広がっている。「阪神なんば線が九条に乗り入れたら、ドームと甲子園が結ばれる。阪神対オリックスの日本シリーズが実現するのが夢」とはつらつと語る。「最も自分の肌になじんだ町」のために、今後も奔走するつもりだ。【牧野宏美】




毎日新聞社












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