中村浩・大谷女子大教授が考古学の入門書を出版 30年の発掘経験生かし

1997.11.27 大阪夕刊 11頁 写有 (全829字) 












 日本考古学の父・浜田耕作(一八八一-一九三八)が京都帝大(現・京都大)で、わが国最初の考古学講座担当の教授になったのはちょうど八十年前の秋。浜田はこの草創期の学問の研究法を確立する一方で、一冊の入門書を著した。『博物館』(アルス社・日本児童文庫版、後に『考古学入門』と改題)だ。以来、類書は数多く出たが、わかりやすさという点で、いまだにこれを超えるものはないと言われる。



 中村浩・大谷女子大教授(50)(考古学)=写真=はその理由の一つを「この学問の性格上、専門家が書くとどうしても技術的なマニュアル書に傾くか、そうでなければ縄文や弥生や古墳といった特定の時代をどう扱うかといった概説に陥ってしまうから」と考える。これでは、考古学に多少関心はあるが、専門的な教育は受けてないという人には、難解な部分が入り込んで入門書になりえないというのだ。



 そこで中村教授は、浜田の視点に戻り、さらにその後の研究成果をベースにした、新たな入門書の執筆に挑戦。最近、『考古学で何がわかるか』(芙蓉書房出版=(電)03・3813・4466)を出した。



 目次を開いても、縄文はどうの、弥生はどうのといった項目は一切ない。第一章「考古学は魅力のある学問か?」に始まり、地層の上下と土器の新旧の関係や年代を推定する方法、地下を掘らない調査法など、一般の人が考古学という学問以前に、興味を持ったり、疑問に思ったりする話題を取り上げている。



 しかも、それらすべてが学生時代から三十年間続けてきた発掘体験に裏打ちされているところが面白い。



 後半は、その膨大な体験を「住居跡」をはじめ「窯跡」「寺内町」「黄泉の世界」といった様々なケースに分け、失敗談も含めて語る。そこから導き出されるのは、発掘の楽しみと同時に、考古学はあくまで人間を考える学問であり、その意味で過去を扱いながら、今を見つめる研究だという著者の基本姿勢だ。(同書はA5判、二百二十八ページ、本体二千五百円)(坪)




読売新聞社