大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】教養課程教授 野田燎さん
2010.02.03 大阪朝刊 22頁 大総3 写有 (全1,162字) 
◆太鼓で「命のリズム」を

 「諏訪湖ばやし」は、あぜ道を歩いて「きょうはお祭りやで。みんな集まれ」というアナウンスだから、村人を引きつけるようにリズムを打とう。たたいているときよりも、たたいていない時の気持ちを合わせないとリズムが合わない。

 次の演奏を始めるから、そこの君、「お諏訪太鼓 飛龍三段返し!」と掛け声をかけて。うーん、もっと元気にやらないと。それから「転禍招福息災延命」。これは一種の祝詞、お祈りだから、手を挙げてもっと大きな声を出しましょう。

 《今回の授業「教養演習」は、美空ひばりからマイケル・ジャクソンまで世界の音楽を聴きながら、人間と音楽のかかわりあいを学ぶ。また、和太鼓を使って身体表現を行う。アジアやアフリカの音楽は太鼓が重要な役割を果たす。それはリズムが生命と直結しているからだと野田さん。日本の民謡にもそうした命のリズムが流れている。太鼓のリズムは脳に快感物質(ドーパミン)を分泌させ、脳の活性化にもつながる。身体全体を使って太鼓を演奏すると、自己が解放され、生き生きとした気持ちになるという。音楽はデジタルなものでなく、もっと生活に密着したものだと知ってもらうのもねらいだ》

 そこのあなた、リズムが遅れるね。周りを気にしすぎているんだ。目を閉じて、感覚だけでたたいてごらん。よおー、ドン。ほら合ったでしょう。「人に合わせよう」「良く見せたい」「いい成績が取りたい」と、とらわれている自分がいるから。意識せずにリズムを刻んでいると、とらわれない自分が見えてきて、自然と周りと合ってくる。太鼓は気合、気を合わせるコミュニケーション手段として最高にいいんだ。

 《野田さんは、生演奏とトランポリンを使った「音楽運動療法」を開発。重度脳損傷患者の脳幹を刺激し、覚醒(かくせい)反応を起こさせる。脳の機能しなくなった部分の役割を他の部分が果たすようになるという。今後、脳リハビリのひとつとして期待される》

 形だけで打っていると、演奏が面白くありません。身体全体を使って太鼓を打っていると、楽しくなってその喜びが他人にも伝わってくる。それが人と人のつながりになるんです。

 (構成・慶田久幸)

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 同大学の初等芸術教育学科開設記念に、野田さんがコーディネーターを務めるシンポジウム「芸術と脳“美しいと感じるこころ”」が4月24日、大阪市福島区の堂島リバーフォーラムホールで行われる。

 =おわり

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 【プロフィル】野田燎

 のだ・りょう 昭和23年生まれ。医学博士、音楽運動療法家。大阪音大卒業後、サクソフォン奏者として演奏活動を行うかたわら、音楽運動療法を研究。意識障害や障害児、パーキンソン病患者らに実践している。平成11年から大阪芸大教授。

産経新聞社

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