大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】演奏学科教授 三原剛さん
2010.01.20 大阪朝刊 20頁 大総3 写有 (全1,240字) 
◆客席にどう伝えるか

 モーツァルトの作品はタテ糸とヨコ糸が折り重なった織物のような音楽です。ヨコにメロディーを作る人、タテにリズムを刻む人メリハリが切れてしまっています。

 コーラスを演じる村人は、初夜権を伯爵が廃止したのを聞いて、希望を持って出てくるのですから、第一声からその喜びが表現されなければなりません。声を出す直前の呼吸のタイミングが統一されていないと満ちあふれた希望が感じられません。

 コーラスは2度同じ曲を歌いますが、2度目は伯爵に対する怒りや絶望などさまざまな感情を表現しなければなりません。

 《3月に、大阪芸大生によるオペラ「フィガロの結婚」が公演される。この日は主人公、フィガロと婚約している侍女、スザンナを口説こうとするアルマヴィーヴァ伯爵と手下の音楽教師、バジリオが騒動を起こす場面を中心に行った。三原さんは、オペラは声楽家だけでなく、オーケストラや舞台スタッフなどいろいろな人が集まってつくる総合演劇、そのプロセスを勉強することが大切だという。歌いながら演じるので、表現や感情を込めることができるようになり、声楽家にとってメリットは大きいと強調する》

 伯爵は自分の考えを邪魔されたわけですから、「すぐさまあの子を追い出せ」とだんだんと怒りがこみ上げてきて、最後に爆発するのをフォルテで表していくのです。

 バジリオとスザンナも、長い音符の中に母音が続けられるように。母音と母音が重なるからきれいな和音ができるんです。長い音符の時に持続力が足りないと思います。

 《キャストは学内オーディションで選ばれた。2日間の公演だが、より多くの学生にステージを経験してほしいと、ダブルキャストや場面によってキャストが異なることもある。オーディションで落ちても、コーラスやスタッフとして参加を希望する学生もいて、三原さんはそのやる気に感心する》

 フォルテはもっと思いきって、ピアノのときは緊張を崩さないようにして、言葉をしっかりと出さないといけません。もっと抑揚をつけ、常に本番のステージを意識して歌いましょう。楽譜にフォルテやピアノと書かれているから単純に大きくしたり小さくしたりするのではなく、なぜここでフォルテなのか、なぜレガートなのか。楽譜に込められているたくさんのヒントを感じ取って心境の変化などを音に表してください。

 客席に対して、どういう音楽を言葉を、どういう気持ちを伝えたいのか考えてください。

 (構成・慶田久幸)

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 公演は3月13、14日午後2時、大阪府河南町の大阪芸大・芸術劇場で。無料。

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 【プロフィル】三原剛

 みはら・つよし 声楽家(バリトン)。昭和36年生まれ。59年3月、大阪芸大卒業。平成4年、第61回日本音楽コンクールで第1位となり注目を集める。17年、大阪文化祭賞受賞。18年、オーストリア・ザルツブルク音楽祭に招聘(しょうへい)される。13年4月から大阪芸大教授。

産経新聞社