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大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(28)芸術計画学科長 相羽秋夫さん 2009.10.25 大阪朝刊 19頁 大阪総合 写有 (全1,427字)
◆笑いは「反真面目」
大阪の漫才は掛け合い漫才風でボケとツッコミが会話をしながら話を進めます。一方、東京は、ぼやき漫才風が多いです。ぼやき漫才というのは、一人で笑いを取れるので、ツッコミが役割を果たさない。昔のツービートなどはこのスタイルです。大阪でこのスタイルをとっているのは、今では横山たかし・ひろしや大木こだま・ひびきですね。 (タレントの)カンニング竹山もこのタイプ? そうですね。彼がまたコンビを結成したらぼやき漫才の系統に入れることになるでしょう。 チャンバラトリオが使っているボール紙を折って作るハリセンは、明治末期にその原形があり、当時は扇子の竹の骨を抜いて紙だけで相手をたたくといったことをしていました。だから、漢字では「張り扇」と書きます。 《相羽さんが担当する「大衆芸能論」は落語や漫才を解説する授業だ。前期は落語を中心にした古典芸能を扱ったが、後期は漫才など現代の演芸を講義する。受講生はコントや漫才台本の作家を目指すなどお笑いに関心の高い学生が多い。その歴史や約束事を知らないと困ると説明にも熱が入る》 先週見たビデオの中で、鳳啓助・京唄子と海原お浜・小浜が同じ「エクソシスト」を題材に取り上げていました。皆さんからエクソシストとは何ですか、という質問がありました。昭和50年ごろはやったホラー映画なのですが、皆さんは知らないようですね。 漫才は落語と違ってそのときの流行や事件、時事問題などを取り上げることが多いので、知っていないと面白さがわかりません。世の中で起きていることもきちんと知っておいてください。 《授業では中田ダイマル・ラケットや夢路いとし・喜味こいし、といった今では生では見られない古いコンビから現在までの漫才をビデオで鑑賞する。この日は、中田カウス・ボタンやコメディNO.1など昭和40~50年代に人気のあった漫才コンビを取り上げた。相羽さんは講義では知性は磨けるが、映像がないと感性が磨けないという。毎回感想を書かせるほか、1年間のまとめにはお笑いの台本を書き、表現の難しさを知ってもらう》 漫才コンビに与えられる賞を表にしてみました。「NHK上方漫才コンテスト」や「M-1グランプリ」などは皆さんも知っているでしょう。さらに叙勲や褒章、人間国宝などもありますが、大衆芸能で現在、人間国宝なのは、落語家の桂米朝さんと講談師の一龍斎貞水さんだけ。漫才師はまだだれももらっていません。 漫才はいい加減なもの、不真面目(ふまじめ)なものだから、国は人間国宝に認定しないのかもしれません。 でも、私は笑いとは不真面目なのではなく、「反真面目」なのだと思っています。反真面目の姿勢を取っていると、真面目の本質が浮き彫りになる。それが国には理解できないのではないでしょうか。 同じ古典芸能でも歌舞伎や能にはたくさん人間国宝がいます。落語家や漫才師にも人間国宝がたくさん出て、市民権を得てほしいですね。 (構成・慶田久幸) ◇ 【プロフィル】相羽秋夫 (あいば・あきお) 本名、澤田健一郎。演芸評論家、放送作家。大学卒業後、松竹芸能に入社。大村崑や正司敏江・玲児、笑福亭鶴瓶らのマネジャーを担当した。昭和62年、上方お笑い大賞(秋田実賞)を受賞。平成9年4月、大阪芸大教授に就任した。文化庁芸術選奨選考委員、文化庁芸術祭審査委員、上方漫才大賞審査委員なども務める。 撮影・甘利慈 産経新聞社 |