2009.10.11 大阪朝刊 19頁 大阪総合 写有 (全1,757字)
欧米では、建物は壁を作り内と外を区分けします。だが、温暖な気候と良質な木材に恵まれ、開口部を広く取れた日本では、縁側を作ったりして内と外を共有していたのです。自然に囲まれて生活してきたので、インテリアという概念はありませんでした。
空間とは生活の場のことです。空間は建物を造ればできますが、肝心なのは中身、空間の使われ方です。
例えば、ここは教室ですね。必要なものがそろっていて、入った瞬間に、教室だと感じるものがあります。
いす、テーブル、窓…。流れる音楽も含め総合的に判断する。それが空間デザインの難しさであり面白さなのです。
逆に、何もないところでもパラソル一つあれば、空間になるのです。
《2年生を対象とした「インテリア計画論」の授業の開始だ。だが、間宮さんはいきなり「インテリア」という言葉を否定した。人間が快適な生活を送る空間の使い方を総合的に提案することが空間デザイナーに求められているという》
空間とは、場所と時代と出来事で決定されます。
君ら2人、そのくらいの間隔がギリギリかな。男2人がもっとひっついていたらおかしいけれど、彼女とならおかしくないでしょう。こうした感覚を作りだすのも空間デザインの力です。
例えば、30坪の店で、客単価800円の中華料理店ならテーブルを5つ置いて30人くらいお客を入れないと経営が成り立たない。客単価2万円のフランス料理店ならテーブルは2つ、お客は8人、花も置かないと。人との距離感も大事な要素です。これが逆ならおかしいよね。
空間デザインは形から入るのではなく、プラン、実現すべき内容やマーケティングが優先されます。欧米人は討論しながらデザインをします。いろいろな考えを集めた方が発想が豊かになるという理由です。
さらに家具、照明、建材などマテリアルも知っていないといけません。
《現代ならエコロジーなど時代性を取り入れていくことも社会への責任だと間宮さん。クライアントや施主の要求を具体化するため、さまざまな知識とともに、広さや目的に応じたビジョンが描けるように肉体に覚えさせることも大事だとも強調した。後半はプロジェクターに映した自身の作品で、前半の講義を具体的に解説した》
これは堀江(大阪市西区)に近い公園に面した場所にカフェとサロンを造ってほしいという依頼でした。目的のはっきりした建物なので、最初のドローイングと大きく変わっていない。あとは平面図に機能的なものを落とし込んでいくかです。
厨房をどこに置くか。広すぎると席が確保できない。このへんにレイアウトして、勝手口を作ることで、食材やごみの出し入れもお客の目に触れないで済むようになる。
公園とは目に見える境界も必要です。ここは床が50センチ高くなって店の外と内を区別する。いすに座ると通行人と目の高さが同じになるんです。そうでないと、見下ろされているようで座っていても気分が悪い。こんなヒューマンスケールも必要です。説明されると「なるほど」と思うけれど、知らないと設計も難しい。
屋上はペントハウス風のグラスハウスにしました。これによって外の景色を感じるサロンとテラスができた。
こちらの住宅はテラスと室内の床を同じ石材にして統一感を持たせました。だが、外は汚れ防止のコーティングをしてあり、室内は床暖房にしました。サッシもデザインと機能性を考え、当時珍しかったアルミに木を張ったハイブリッドサッシをデザインしました。快適に過ごせることが大事なのです。
空間デザイナーは、最終的には造形ですが、議論も説明もその場で手で書きます。知識を詰め込めば感性となりあふれてきます。いろいろなことをよく学び体感することが必要です。
(構成・慶田久幸)
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【プロフィル】間宮吉彦(まみや・よしひこ)
空間デザイナー、建築士事務所「インフィクス」代表。昭和33年、大阪府生まれ。全国の商業施設や住宅などの空間デザインを手がける。平成20年、大阪芸大教授に就任。主な作品に有楽町マルイ(東京都千代田区)、ハイアットリージェンシー大阪ゲストハウス(大阪市住之江区)、ミズノショップ難波(同中央区)、複合商業施設「cor」(同西区)など。
撮影・門井聡
産経新聞社