大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(24)広報学科教授 小野寺昭さん
2009.09.27 大阪朝刊 23頁 大阪総合 写有 (全1,705字) 
短期大学部広報学科教授 小野寺昭さん

 ◆「技術」より「心」を

 演劇は、まずお客さんにインパクトを与えることが大事です。お客さんの心に何か訴える表現力を身につけてほしいと思います。

 《小野寺さんは短期大学部広報学科で、演劇のプロを志す学生を対象とした「演劇上演演習」を担当。経験を生かして実技指導している。「ぼくは役者なので、演出家ではなく役者としてのアドバイスになる。技術の高さではなく、みんなで助け合いながらひとつの芝居をつくる、という姿勢を求めていきたい」と話す》

 ぼくの演劇のテーマは「積極的に自由に自主的な自己表現」です。演劇には方程式も何もないから、自由に発想することがとても大事です。ぼくは子供のころ、人前で何かをするのが苦手でした。でも劇は、舞台で好きなことを自由にやってるように見えて、あそこに行けば自分もふだんできないことがやれるんじゃないか、と思ったのが、この道に入るきっかけだったんです。

 また、「演劇は別の人間になること」という考え方がありますが、AさんとBさんが同じロミオを演じたとき、まったく同じものにはならないでしょ。自分を通して、自分の思いや興味や、いろんな体験を通じてロミオを表現するわけで、ということは自己表現なんです。だから、いろんなものに興味を持ったり、ドラマ、映画や、舞台を見たりしていろんなことを学んでください。そうすると少しずつ自己表現ができるようになります。

 一番大事なのは心、感情です。その役を表現するとき、どういう気持ちでいるか、何を感じているかを大切にしてほしい。例えば悲しいシーンでは、悲しくないように演じたらお客さんに伝わらないでしょ。せりふを上手に言うとか、体をうまく使うとかももちろん大事だけど、まず人間としての心を持たないとね。そしていろんな思いが交錯する、それがドラマなんです。

 感情を表現するために技術が必要になってくる場合もあります。泣き方を工夫するとかね。でも、技術の前に大事なのは心、感情なんです。そうしないと人を感動させたり、共感させたりすることはできません。演劇は、もちろん映画もドラマもですが、根底にあるのは人間を描くことなんです。

 《この日の実技は「エチュード(即興劇)」。「想像力と創造力で何かを表現してほしい」と小野寺さんは学生に説明した。学生たちは4人ほどのグループに分かれ、数分の簡単な打ち合わせのあと順に発表。短大に入学したての4人が自己紹介しあう話や、エレベーターの扉が開かなくなって居合わせた4人が対策を練る話などが披露された》

 今は思いつくままにやったと思いますが、もっと演劇的にやってほしい。お客さんが見ているという状態を想像して、ストーリーにしてください。みんなそれぞれに面白かったけど、わかりにくいところもありました。非常に難しいです。台本もないし演出家もいないんだからね。

 お客さんにどんな4人なのか伝わるようにしたり、せりふや表情がわかりやすく伝えられるようにしたり、いすに座ったままでもお客さんに顔が見えるようにしたりと、いろいろ工夫して、4人の呼吸とチームワークで完成させてください。

 《再び打ち合わせをして、グループごとに演技。演技中も小野寺さんが盛んにアドバイスを送り、各グループとも完成度を上げた》

 みんなの感性はすごくいいと感じました。テーマがなかったから難しかったと思いますが、だからこそ、みんなで考えて自分たちでレールを敷く、というのが狙いでした。こういうことは今後あまりないとは思うけど、考えることは非常に大事です。今日やったことを何かの際に思い出して、生かしてください。

 (構成・山口淳也)

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 【プロフィル】小野寺昭

 (おのでら・あきら) 俳優。北海道出身。昭和44年にデビューし、47年スタートの人気テレビドラマ「太陽にほえろ!」で脚光を浴びた。その後もテレビドラマや映画、舞台、テレビコマーシャルなどに多数出演。近年はバラエティー番組も含めて幅広く活躍している。平成19年4月、大阪芸大短期大学部の広報学科教授に就任した。

 撮影・塚本健一

産経新聞社

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