大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(23)
2009.09.20 大阪朝刊 19頁 大阪総合 写有 (全1,465字) 
短期大学部広報学科専任教授 三林京子さん

 ◆真剣さ求められる演技

 演技力には、その人の生き方が表れます。ごまかして生きている人は陳腐な演技しかできません。物事を真剣に考えている人は、それなりの演技になります。仕事も一緒で、真剣さが求められます。演技であれ何であれ、集中することが必要です。

 私はみなさんのような若いころ、真剣に芝居には打ち込まなかったのですが、師匠が超一流だったので救われました。難しい演劇論はできませんが、多くの師匠から教えていただいたことをあなたたちに受け継いでほしいのです。

  《三林さんは中学生のとき、女優、山田五十鈴のもとで付き人修業を始めた。その後も浄瑠璃の清元美治郎、清元美寿太夫、狂言の茂山七五三、さらには落語の桂米朝らの薫陶を受けた》

 芸事は6歳から習うのが良いとされています。子供のとき、潜在意識の中に入れる覚え方です。あなたたちの多くは、小さいころから芸事に励んでいないので一から始めなければなりません。感性や情熱をぶつけて、脳を活性化させましょう。

 どんな分野でも人一倍、けいこに励んでいる人が残ります。野球のイチローさんの練習量はすごいと聞きますし、ジャニーズ事務所の人たちが寝る間もなく、けいこに打ち込んでいる姿も見てきました。体力と集中力がないと駄目です。残りたければ、それだけけいこを積むことが必要なんです。

  《三林さんが受け持つのは広報学科の演劇・演技演出コース。俳優や演出スタッフなどとして将来、プロの世界で活躍するための実技指導にあたっている》

 これからは実習授業です。教室いっぱいに広がり、いつものように歩き方から始めましょう。正しい姿勢で歩いてください。姿勢を良くすることで演技に欠かせない発声法がトレーニングできます。

 次は足踏みです。足の筋肉を使い、教室の壁面に設けられた鏡で自分の姿を確認しながら足踏みをしてください。そこの男子学生、足にもっと力を入れなさい。足は90度、両手は180度に振る。足踏みも演技に求められる基本です。

 間(ま)をきちんと取りなさい。間はつまり呼吸。お客さまと一緒に呼吸するよう意識しなさい。演劇はお客さまと一緒につくるものですよ。

  《生徒は1年生11人、2年生7人の計18人。独特の指導法ともいわれる足踏みは、「リズム感が鍛えられる」と三林さん。「足と上半身をバラバラに動かさないといけないような演技に足踏みは欠かせない」が持論。「歩き方も多くの師匠から学んだ」と話す》

 さあ、次は登場人物の役になり、台本に沿って演技をしましょう。人物の心理を理解しながら演じるのですよ。気合を入れて、細部まで演技をしてください。

 実は私も演技のために減量やストレッチを続けています。表現できる肉体と柔軟性を養っているのです。なぜなら、みなさんと将来、一緒に芝居をすることが夢だからです。みなさんも教えられたことをしっかりと身につけ、私の夢をぜひ実現させてください。

 (構成・三宅統二)

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 【プロフィル】三林京子

 (みつばやし・きょうこ) 女優。昭和45年、芸術座「女坂」で初舞台。50年にNHK大河ドラマ「元禄太平記」でテレビデビュー。舞台、テレビなどで多くの作品に出演している。平成9年に桂米朝に師事し、「桂すずめ」として落語家活動も。文化庁文化審議会委員、府教育委員などを歴任。父は文楽人形遣いの人間国宝だった故・二世桐竹勘十郎。19年4月、大阪芸大短期大学部広報学科専任教授に就任した。

 撮影・塚本健一

産経新聞社