大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(22) 放送学科教授 桑原征平さん
2009.09.13 大阪朝刊 19頁 大阪総合 写有 (全1,712字) 

  ◆「感動」を思い出して

 人間の声というのは男も女も、10代と20代とは全然違います。男は10歳前後に変声期があります。咽頭(いんとう)、口腔(こうこう)、鼻腔(びこう)の3つによって声が完成されるんですが、咽頭にある声帯や、のどの筋肉、口の中がそろって成長してくれたらいいのに、のどだけ進んだり、口の中だけ進んだりして、変声期が起こるわけです。これを乗り越えたあとの20歳から25歳までがピーク。だからみんなは今が最高の声なんです。カラオケ行ったら音とっときや。何でも収録やで。

 《桑原さんは、アナウンサーなどを志望する学生たちが学ぶ放送学科で「声のキャラクター論」などを指導。広い視野で芸術に接することを目的とした芸術計画学科では、「話し方研究」の授業を担当し、今回の授業では「声の老化」について講義。随所にユーモアを盛り込んだ「桑原節」で、学生たちの関心を引きつけていた》

 25歳をすぎると、声は徐々に落ちていきます。気管の真ん中にぶら下がっている声帯が、肺からの空気によって上がったり下がったりして音がでます。20歳のときは気管の筋肉が柔らかいけど、25歳、30歳がすぎ40歳になってくると、筋肉が硬直して粘膜に潤いがなくなり、声帯や気管などいろんなところにでこぼこができる。そしたら声帯が上下に揺れて音になったとき、でこぼこに声がとまる「うず状態」になって声がかすれる。これが老化です。

 プロの歌手でも、20歳のときの声と50歳になった声は全然違う。だからものすごく努力してます。毎朝30分や1時間は発声練習をやって本番に臨んでいるんです。

 《ここから実技。発声練習のあと毎回恒例の「2分間スピーチ」へ。「将来どんな職業に就こうとも、スピーチは欠かせませんから」と桑原さんは趣旨を語る。今回のテーマは「私が感動した〇〇」。学生たちは映画、テレビドラマ、舞台、スポーツ、本など自由に題材を選んでスピーチした》

 話は2分。「つかみ」があって、途中のプロセスがあって、「オチ」がある。これを考えてまとめてください。つかみ30秒、プロセス30秒、オチ1分でもいいし、つかみ10秒だったり、オチ3秒でもいい。いかに話を楽しく相手に聞かせるかです。

 《ある男子学生は、手を骨折した際に友人に助けてもらったり、見知らぬ人にも声を掛けてもらったりして感動したという話を展開。大きな声で、わかりやすさが際立った。一方、別の女子学生は、面白かったアニメ作品について紹介するスピーチを行ったが、あらすじを説明しているうちに時間がすぎて…》

 (男子学生に対し)君は声が大きいのがまずいい。相手を引きつけるわけやからね。そして、周りに温かくしてもらったことを自分でわかるハートがあなたの中にある。これを大事にしてください。

 (女子学生には)何かをカットしないと。だらだら説明するんやなくて、必要な部分を最初にバーンと出すと引きつけられるんじゃないかな。それで自分の感覚を言う。もっと知りたいでしょう、でもこれが映画になる、みんな見てね、で終わるのはどう? 自分の楽しいという気持ちをもっと出さないとね。

 感動というのは「胸がどきどきどき」というやつなんやね。今まで景色で感動したことあるやろ? その驚きを思い出さないとあかん。映画でも芝居でもスポーツでも絵画でもええ。それが人間の中にどれだけあるかが大事。この前、プロ野球を見ていて楽天の田中マー君が、接戦で何度もピンチになるんやけど、ここぞというときに必死になって投げて、帽子がぶあーって飛ぶねん。それ見てじーんときたね。そういう感動をどれだけ持てるかです。

 (構成・山口淳也)

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 【プロフィル】桑原征平

 (くわばら・しょうへい) アナウンサー。大学卒業後、セールスマンを経て関西テレビに入社した。「ハイ!土曜日です」の挑戦コーナーで注目され、「走れ!ガリバーくん」「おはよう!ナイスデイ」など、情報、バラエティー番組を中心に出演。平成16年の定年退職後もフリーとして同局などで活躍している。18年4月、大阪芸大の放送学科教授に就任した。

 撮影・甘利慈

産経新聞社

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