2009.04.12 大阪朝刊 25頁 大阪総合 写有 (全1,624字)
◆想像力を日々鍛える
人の顔というのはその人の性格とか、考え方とか、環境とかによって大きく変わっていきます。顔は人の生きざまといっていいくらいのものなのです。だから顔を撮るっていうことは、1枚撮って「これがこの人のすべてです」と表現できたらベストだけど、それは簡単ではないし、それを追求していくことに、写真をやっている意味があるんです。
そういう意味で、人物だとか風景だとか、自分の好きなことを見つけるのは大切で、好きなこと、自分に合っていることが分かってくると、それをどんどん追求していってほしいんです。でも、ときとして、わざとそれから離れることも大事。自分が好きなものを探すために、あえて違うテーマに挑戦するのも必要なことなんですね。
《織作さんが学科長を務める写真学科では、多様な写真表現についての理論と技術を勉強したあと、芸術写真、報道写真、広告写真など、それぞれが興味ある専門分野について、さらに高度な技術と知識の習得を目指す。3、4年生を中心に教えている織作さんは、「写真の撮り方はもちろんですが、常識だとか礼儀だとか、社会を徐々に意識させることも大切にしています」と話す》
ひとつのテーマをやるって、楽しくなったりしんどくなったりします。人生と一緒ですね。でもずーっとやっていくと、ぱっと何かが見えたりとか、いつか何かの形でいいものが出てくるとかいう可能性を秘めているんです。それはもう、とにかく撮っていって、その都度、作品を見ながら感じていくしかないのです。
それで、この写真を見ていて、見た人の記憶に残像とかが残らないと思う。どこかで見た写真だ、どこかで見たパターンだっていう気がするのね。どんどん撮っていきながら、その中で「ここが違う」というのを何か見つけていけたらいいですね。
《織作さんのゼミでは、学生たちそれぞれのテーマに応じて個々に指導するのが中心となる。この日の授業も、1人ずつ学生たちが撮影してきた写真を見て織作さんが評価し、今後の方向性や心構えなどについて指南。他の学生たちも、そのやりとりを聞いて参考にしている。1人の少女に絞って撮影を続けている学生に対し、織作さんはその撮影場所についてアドバイスを送りながら、日々の心構えについて語り始めた》
家と公園とにくくられすぎちゃっているところがあるので、もう少し、海辺とか、少し遠出してみたらどうかな。女の子の気持ちが解きほぐれるところがいいね。でもね、それは日々、生活の中で見ていないといけないんですね。
みんなも、例えば、学校に来るバスや電車の中で外の風景を観察して、ここでこういうふうに撮ったら、夕方だったら、朝だったらこんなふうに見えるのかなっていうのを日々考えてほしいの。そういう感覚を持っているかいないかで、空想力とか想像力とかが全然変わってきます。
そうした訓練をしておかないと、いろいろなところでアイデアが浮かばなくなるんです。例えば、プロのカメラマンになったとすると、「今日はだれそれさんの撮影です。場所はここしかありません」ということがほとんどなの。そうしたら、空想力、想像力がないとできないのね。つまらない場所を夢のような空間に変えるのも感覚と感性。だから、日々の訓練で、この場所に人を立たせたときに、どこからどういう角度でどうライティングして、どういうふうに背景を片づけて何を持ってきて…というのを、いろんな場所で想像するのが大事。それを繰り返すと写真が撮りやすくなるので、日々鍛えてくださいね。
(山口淳也)
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【プロフィル】織作峰子
おりさく・みねこ 写真家。ミス・ユニバース日本代表として活動していたときに写真家の大竹省二氏に影響を受け、大竹氏のもとで学んだあと独立。国内外で写真展を開く一方、講演活動なども行う。平成18年4月に大阪芸大写真学科教授となり、19年4月から学科長。
撮影・桐山弘太
産経新聞社