大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(10)音楽学科教授 MALTAさん
2009.04.05 大阪朝刊 23頁 大阪総合 写有 (全1,609字) 

 ◆「好き」を続けて生きていく

 音楽が持っているエネルギーってすごいんですよ。音楽で人が元気になれます。たとえ壁にぶつかっても音楽があれば乗り越えられます。音楽は人間が動き出せるだけのパワーを持っているのです。だから私は音楽の持つすばらしさを伝えたいのです。

 《人気サックス奏者のMALTAさんだが、大阪芸大教授としては別の顔をのぞかせる。「いい音楽家を世界に送り出すのが使命」と力説。1年次の学生を対象にしたスタジオでの個人レッスンでは、「音楽は世界共通のメディア」と語りかける。「ミュージシャンとしては職人芸を披露し、ファンを魅了したい」と話すが、キャンパス内ではその思いを封印する。「ただ、音楽に対する気持ちは教授であってもミュージシャンでも同じ。熱く打ち込むこと」と断言する》

 サックスはいかに、いい音を出すかにかかっています。聴く人を感動させる音を出すことが求められます。そのためにはまずドレミが正しくリズムよく吹けることが求められます。さらに、人の心に響くメロディーが演奏できるよう楽器をマスターしなければなりません。

 お客さんにあの音をもう一度聴きたいと思ってもらうためには、あきることなく練習をしましょう。学生のあなたのように10代だったら1日8時間以上練習しても疲れないでしょう。私が10代のころは、もっと吹いていました。体力が続く限り、練習に励んでください。基礎をつくるにはそれしかありません。

 《授業はここから、口にあてて息を吹き込む管楽器の部品「マウスピース」の説明に入る。複数のマウスピースを学生に使ってもらい、その学生に適したマウスピースを選ぶ》

 あのマウスピースとこのマウスピース、自分で実際に吹いてみてどちらが吹きやすかったかな? このマウスピースは音質的にはよかったけれど、力が余分に要る労力があるように思えました。どうでしたか。何時間吹いても疲れないマウスピースのほうがいいと思いますよ。楽しく吹けるマウスピースなら、「さあ演奏するぞ」というやる気が持続しますからね。

 マウスピースの選び方ひとつとっても勉強になるでしょう。そうしたことが芸大に入った意義にもつながります。何に打ち込んだら楽しいのかということが徐々に分かってくるはずです。あなたの能力を見抜き、助言するのがわれわれ教える立場の人たちです。あなたは、そうしたアドバイスを受け、一芸に秀でることを目指してください。

 《音楽学科では演奏技法のほか、音楽理論やオリジナル曲の創作、アレンジの仕方なども指導。演奏系のアーティストだけではなく、作曲家、プロデューサー、音楽ライターといった音楽系の仕事に就く人の養成にも力を入れている》

 音楽をとことん好きになる情熱を培ってほしいですね。ただ好きになるという思いだけでなく、「好きこそものの上手なれ」が原点であるべきです。好きが継続になり、生きるための道になれば私はうれしいですね。

 音楽が本当に好きになり、続けていく。実は、それがプロとして生きていける秘訣(ひけつ)でもあります。好きという気持ちを持ち続けてください。そして音楽のすばらしさを多くの人に伝え、夢と感動を与えていってください。そのためには、あなた自身が音楽のパワーやすばらしさにいつも感動していてほしいですね。

 (三宅統二)

                  ◇

 【プロフィル】MALTA(マルタ)

 サックス奏者。13歳からサックスを吹き始め、東京芸大卒業後、米国に留学。ライオネル・ハンプトン楽団のコンサートマスターを経て、昭和58年にアルバム「MALTA」で日本デビュー。トークにも定評があり、テレビ番組に多数出演。雑誌への連載、バイクチームの監督としても活躍する。全日本高等学校選抜吹奏楽大会で審査員を務め、「マルタ賞」を設立するなど音楽発展に尽力。平成20年4月から大阪芸大音楽学科教授。

 撮影・前川純一郎

産経新聞社