side JUN
そろそろ撮休も終わり。
新ドラマのキャストが勢ぞろいし、顔合わせが始まった。
「主役の今野奏多役の松本潤さんです。」
「よろしくお願い致します。」
1人ずつキャストが紹介され、挨拶をしていく。
今回は、俺は初めてのBLもの。
このドラマの番宣の為に、翔さんの番組に出ることも決まっている。
だけど、台本が何回も書き換えられて、やっと本稿が出来上がったのが、昨日の事。
役を引き受けたからには、今更断るなんてことできないけど・・・できれば断りたいと思った初めての仕事かも。
だって・・・
「では次、奏多の恋の相手役になります、近藤遼役の小栗旬さんです。」
「皆さま、お手柔らかにお願いします。」
最初の予備稿では、俺は遼の友人で、恋の相談相手だった。
それが・・・いきなり奏多と遼の恋愛ものだなんて・・・。
結構絡みのシーンもあるこのドラマ。
枠が21時台から22時台に変わったわけだよ。
でも、変わったからこその、台本変更だと聞いてるけど・・・何かあったのかな?
俳優の小栗さん・・・旬とは、もういくつもドラマでも映画でも共演経験がある。
高校の同級生だったり、恋のライバル同士だったり、男同士の友情を描いた青春ドラマの友人役だったり、アクションの多い刑事役だったり、職場の同僚だったり。
俺は、恋愛ドラマは相手役は女性ばかりだったけど、旬は相手が男性だった時もあった。
その経験値の違いが、今日の緊張感に現れているのかもしれないけれど・・・
それなら旬を主役にすればいい・・・そう思うのに、この話の主人公は、女とも関係がある設定で、旬はそれが嫌だと断ったらしい。
「潤、宜しくな。」
「あ・・うん。」
「どうした?もしかして翔さんがダメって言ったのか?」
「ちょっ・・そんな事ここで言うなよ。」
「否、潤の様子が変だからさ。」
「別に・・・」
「まぁいいさ、本読みは来週からだろ?」
「そうみたいだな。」
「何だかつれねーなぁ。俺たち恋人同士の設定だろ?今回も仲良くしてくれよな。」
「ん・・・まぁ、宜しくな。」
別に、ドラマが嫌な訳じゃない。
旬との共演も嫌な訳じゃない。
俺のセフレ?役の女優さんが、どうしてかあのアナウンサーの人に似てるんだよね・・・髪長くて、スタイルというか、雰囲気が。
アナウンサーのその人には会ったことは無いけど。
その彼女とのカラミのシーンもめんどくさいとか思ってしまう俺って・・・ダメだよなぁ。
撮影が始まるのが2か月後
翔さんの番組で番宣に出るのが4か月後。
翔さんと一緒の新番組が、半年後から。
楽しみな翔さんとの番組の前に、このドラマという試練が待っているとは、あの時は思いもしなかった。
もしかして、このドラマの為に、今までのあの騒ぎがあったんじゃないかって・・・そう思うほど。
楽しみだけど、楽しみじゃない。
今日、翔さん来てくれないかな?
会って・・・ぎゅって抱きしめてもらいたいよ・・・。