<Jside>
「少し相談させて下さい。」
そう俺が声を掛けて、櫻井さんと一緒にやってきたのは、櫻井さんの行きつけのイタリアン。
ビルの地下に入っているこの店は、何処か懐かしい感じがする内装の店内。
その個室に通された。
「素敵なお店ですね。」
「大学時代の友人の店なんだ。」
「経済学部・・でしたよね?」
「ああ。あいつは、いわゆる脱サラして、この店開いたんだよ。」
「へぇ・・・。」
櫻井さんが、多い時には、週に2~3日も来ているというこの店。
初めて連れてきてもらった。
菊池や上田は、この店に連れてきたことあるのだろうか?
そう思っていると、店の店主がやってきた。
「翔が、誰か連れてくるのって、初めてだよな。」
「ん?ああ、そうだな。」
「えっと、彼は?」
「職場の同僚の、松本。」
「松本さん、ようこそ、いらっしゃいませ。」
店の店主だという、佐藤さん。
大学の野球サークルで一緒だったそうだ。
「櫻井さんが野球って・・イメージと違って、ビックリです。」
俺がそういうと、佐藤さんは笑っている。
「あれは、野球サークルという名の、只の飲み会をするだけのサークルだよな。」
「確かに、野球なんてしたこと無いな。」
「え?」
「皆で、野球部の応援に行ったり、プロ野球の観戦に行ったり・・・『野球を見るサークル』が、正式名称だよな。」
「仰る通り。旨い事言うな、隆太。」
佐藤さんとの思い出話が盛り上がっていたけれど、俺の中では・・・
「翔が、誰か連れてくるのって、初めてだな。」
「ん?ああ、そうだな。」
こっちの方が、ドキドキした。
この店に、誰かと一緒に来たのが初めてだって。
プライベートの櫻井さんを、見せてもらった気がして、すごく嬉しい。
勝手に少しだけ・・・櫻井さんとの距離が近づいた・・・
そんな気がしていた。