〈Sside〉
未だに信じられないが・・・潤は、アイドルとして、デビューした。
ウチに来た時は、今まで通りの潤。
だけど、あの日以来、テレビの歌番組や、バラエティ番組には、度々出演しているし、雑誌の表紙を何誌も飾っている。
俺の潤と、同じ人物のようで、別人に感じる「ARSの松本くん。」
目の前で、「翔さん、どうしたの?」と、可愛く首を傾げている姿を見ていても、どうしても、実感がわかない。
だって、俺が知ってる潤と、彼は別の人に見えるから。
わざと、そう見せているのか?
頭の中で、グルグル考えても、答えは一向に見つからない。
こんな状態だからか、月一で、毎回楽しみにしていた、東山教授の経済セミナーも、全く頭に入ってこない。
「翔ちゃん、どうしたの?元気ないって、東山教授も心配してたよ。」
「ん?別に・・・」
同級生の雅紀が、俺の事心配してくれている。
体調が悪い訳じゃない。
ただの、現実逃避・・・うん、そうに違いない。
もし、潤が俺と付き合っているのがバレたら、きっと、別れろと、言われるのだから。
俺は・・・潤を手放すことなんて、できるのだろうか?
否、それは無理だ。
こんなにも、潤を愛してるのに。
「しょおくん来ちゃった。」
「しょおくんの事、大好き」
「しょおくん、一緒に食べよ」
一緒にいる時は、甘えん坊で、可愛くて。
それなのに、エッチの時は、やたら妖艶で。
そんな潤に、どれだけ俺が翻弄されてるか。
だけど、テレビの中の潤は、やたら雄感溢れてて・・・
女の子達から、キャーキャー言われてる。
そんな潤も、嫌いではないが、そんな姿を見ると、何だかモヤモヤする。
だけど・・・
俺は、潤が好き。
それだけは揺るがない感情だった。