<Sside>
控室に入ってきた監督が、俺達を見て目を丸くしている。
俺がいじめた訳じゃないから。
そう思っていると、俺も聞きたいと思っていた事を監督が松本君に聞いてくれた。
「松本、そんなにキスが嫌だったのか?」
「ち・・違います。」
「それならどうして泣いてるんだ?」
「そ・・それは・・・」
「それは?」
「俺、キスしたのだってこのドラマが初めてで・・・だから、櫻井さんの演技の足を引っ張ってるんじゃないかって・・・。」
「何だ、松本はファーストキスが櫻井だったのか?それはすまないことをしたなぁ。」
え?俺とのキスが、ファーストキス?!
マジ!?
「まぁ、こういうもんは経験だからな。櫻井、松本の練習に付き合ってやれよ。これからの撮影のためにな。」
俺だって、そんな経験ないって。
でも・・・このドラマの為に、動画はたくさん見た。
こんな雰囲気のベッドシーンにしたいって言われて、監督から借りたDVDも何度も見た。
全く興奮はしなかったけど・・・松本君にだったら俺、反応するのだろうか?
これから、何度かベッドシーンの撮影も予定に入っている。
まぁ、練習は・・・した方がいいよな。
お互いの為に。
「あのさ、松本君はこの後のスケジュールは?」
「え・・あっ・・今日はこれが最後の仕事です。」
「明日の朝は?」
「このドラマの撮影がある夕方までは予定はないです。」
「それじゃあ、この後俺に付き合ってくれる?」
「あ、はい、分かりました。」
場所は、俺の部屋でいいか。
とりあえず、マネージャーに連絡をした。