<Sside>
仕事の合間にも、俺は時々中村家に行っていた。
今では、職場の仲間にも知られているくらい。
「今回の大御所俳優の再婚の件で、勘三郎さんのコメント使わせてもらえないかな?お願いしてもらえる?」
時々、そんな風に上層部からの重圧?!圧力?!もあったりして。
他のキャスターやレポーターが直接聞いても、ちゃんとコメントしてくれると思うけどね。
でも、そんな事でさえも、今の俺には楽しむ材料になっていた。
そんなある日、いつものように仕事終わりに、中村家に行くと、見慣れない車が止まっていた。
誰か車変えたのかな?
俺にとってはそのくらいだった。
だけど、家に入ると・・・目の前に、潤がいた。
高校生の頃は、俺の方が背が高かった。
だけど、少しだけ目線が、潤の方が高くなっていた。
「お帰り。」
「ただいま。」
これだけの会話だった。
これしか言葉が出てこなかった。
アナウンサーとしては、失格だとは思った。
・・・だって、涙で声が詰まって・・・出なかったのだから。
ぎゅっと俺の背に回された潤の腕。
久しぶりに感じた、潤の甘い香り。
俺も、潤をぎゅっと抱きしめた。
だけど、感動の再会は、これで終わる。
「お前たち、玄関で何しているんだい。さっさと部屋に入っておくれ。」
「帰って早々・・・。」
頭の上から、トミさんの声が聞こえてきた。
七之助君の声も聞こえてくる。
「だってぇ・・・。」
潤の泣き顔を見たら、あの頃のままで・・・一気に高校生に戻った気分だった。
おとんもおかんも、笑顔で俺達を迎えてくれる。
ホント、高校生のあの頃と、何ら変わらない。
6年間、見守ってくれた家族の中に、やっと戻ってきた。
潤に会えて、そう思えたんだ。
次回、アオゾラペダル、最終話です(*^^*)