「ちょっと社長、この仕事どうなったんですか?」

 

 

「はぁ・・・・」

 

 

「しゃちょー!!しっかりしてください。」

 

 

「あ、そのミュージカルは、SATOに決まった。」

 

 

「へ?SATO?あんなに嫌がっていたのに?」

 

 

「たまにはアイドルじゃなくて違う畑で修行して来いって言ったら、やるって言うから。それと、KAZUは、このドラマ。」

 

 

「今、最高視聴率を叩きだしてるゴールデンタイムのドラマと、同じ枠の連ドラの主人公じゃないですか?!」

 

 

「多分、KAZUには、はまり役だと思うよ。」

 

 

「社長、仕事はちゃんとしてるんですね。」

 

 

「どういう事だよ。」

 

 

「否、最近、あまりにボーっとしているように見えますから。」

 

 

 

 

 

 

親父の突然の引退宣言により、ARSのマネージャーから、社長になったのは、つい数ヶ月前の事。

 

 

雅紀の事件があったから、違う事で大変だった時もあるが、ひと月経って、やっと俺も落ち着いてきた・・・はずだった。

 

 

 

 

あの日・・・松本にキスしてから、気まずい空気になり・・・俺がシャツの洗濯をしている間に、松本は帰ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あん時、どうすりゃよかったんだよ~!」

 

 

「何がですか?」

 

 

「お前には関係ない。」

 

 

「ちょっ、社長ひどいですよ。俺の目の前で言っておきながら。」

 

 

「お前がまだ俺の目の前に居るからだ。早く仕事しろ。」

 

 

「はいはい。」

 

 

「菊池~!次は新規のCM契約して来いよ!!」

 

 

「がんばりまーす」

 

 

 

 

 

俺の事を、余り社長だと思っていない社員数名に囲まれているからか、社の雰囲気は明るい。

 

 

だから、おちおち考えている暇はないが・・・・・あれから連絡もないし、こっちから連絡をするにしても気まずい。

 

 

 

 

 

 

どうしたらいいんだぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに、第1回の公判が開かれるという連絡と、真犯人が捕まったという連絡が、斑目法律事務所からきた。

 

 

 

 

 

「カズくん、真犯人が捕まったって本当?」

 

 

「そうなんです。隣りの店主と、常連客が共謀しての犯行だったようです。」

 

 

「あの、眼鏡かけた隣りの店主?」

 

 

「そうです。やっぱり、ランチタイムの行列が許せなかったみたいで。」

 

 

「そっか。でもよかったな、カズくん。」

 

 

「はい。本当に。松本さんと櫻井さんのお陰です。」

 

 

「俺は何もしてないよ。」

 

 

「櫻井さんは、ずっと俺と雅紀の心を支えてくれましたから。」

 

 

「そっか。俺でも役に立ってたか。」

 

 

「勿論です。ありがとうございます。それで、裁判所に、一緒に行ってもらえますか?」

 

 

「勿論だよ。そこで、釈放してもらえるんだろ?」

 

 

「多分。」

 

 

「そっか。とりあえず良かったな。」

 

 

「はい。ありがとうございます。」