13時ぴったり。
俺は、斑目法律事務所に来た。
「こちらでお待ち下さい。」
そう言われて待つ事数十秒・・・・。
「斑目法律事務所の、松本です。よろしく・・・・って、先輩?」
「久しぶりだな、松本。」
「どうして櫻井先輩が・・・。」
「松本、お前、弁護士になったんだな。」
「は、はい。・・・あの、まずは座って下さい。」
「ああ、ありがとう。松本が引き受けてくれたら、心強いな。」
松本が・・・本当にここに居た。
でかい目は、あの頃と変わらない。
だけど、大人になった松本は、綺麗・・・その表現がぴったりだと思う。
小顔で色白。
綺麗な鼻筋に、ぷっくりとした唇。
唇の下のホクロは、あの頃と変わらないが、色気が増したような気がした。
松本の顔に見惚れていると、急に話し始めた。
「それで、御依頼内容とは?」
そうだ、呑気に、松本に会いに来たわけではないんだ。
「松本は、相葉雅紀って覚えてるか?」
「櫻井先輩の同級生の・・ですか?」
「そう。その相葉が、殺人の容疑で逮捕されたんだ。」
今朝も電話では事務所のスタッフであろう女性に簡単には説明したが、さっき警察から教えられた事も一緒に説明した。
「でも、そんなことする奴じゃないんだ。」
「・・・今でもお付き合いされてるんですか?あの・・いえ・・・その・・・」
「いいんだ。確かに俺達は、高校生の頃付き合っていた。でも、まぁ色々あって・・・別れたんだ。高校卒業以来、俺達はずっと会ってなかった。でも、1年前に偶然入った店が、相葉がやってる中華料理屋だったんだ。それからは月に1回くらいは俺が店に行って飯食ってた。そのくらいだ。で、逮捕された時に雅紀から連絡があって・・・助けてくれって。俺はそんなことしてないって。」
「そうだったんですか。分かりました。この案件、俺が引き受けます。」
「松本、ありがとう。」
「それじゃあ俺、接見に行ってきます。また、先輩にお話伺う事もあると思いますので、これ、俺の携帯番号とアドレスです。」
「これが俺のだ。よろしく・・・頼むよ。」
「はい。」
仕事用ではなく、プライベートの何の肩書も入っていない名刺を松本に渡した。
この番号は、ごく限られた人間にしか教えていない番号。
そのスマホに、松本の連絡先も入った。
卒業してからもう何年も経ったというのに。
やっと俺は、松本に会えた。
今は、雅紀の事を考えなければいけない・・・そう思うのに、余計な気持ちが、俺の中で膨らんでいくばかりだった。