もう何年経つのでしょうか
母が元気なころ、ずっしり重い無骨な白い鉢に何か植え込んでいました。
その頃の私は、花好きは人後に落ちないとは思いつつ、それは今に思えば鑑賞だけでした。
母が植えていたのは、別段何のこともないギボウシでした。
かつては里山に生えていたような緑の葉っぱの。
なぜ母がそんなことをしているのか聞くこともせず、ことさらの興味も持たず、要するに私も人並みに忙しい頃でした。
鉢に植えられたギボウシは鉢の中でみっしり増えて緑の葉をそよがせ、季節が来ると花開き。
ああ、綺麗だな
と思うようになったころ、母が
あげるよ
と言いました。
どうしても欲しいというものではなかったのですが、スナオに貰い、
ギボウシは私のギボウシになりました。
母が逝き20年余り、
ギボウシは今年も咲きました。
いったい母は
なぜこのギボウシを私にくれたのか、分かりません。
聞いておけばよかったことのひとつです。
もっとも、意味などなかったのかも知れませんが･･･。