「ねえーーッ、シン君。聞いて欲しいことがあるんだけど。」

私の願いは簡単に却下された。

でも、私は頑張って毎日カレにお願いした。

「ガンヒョンとギョン君がちゃんと私を守ってくれるって言ってくれてるから・。ほんのちょっとだけ聞きに行きたいの。」

頑固なカレの態度は日に日に、緩やかになっていった。

そして「判った。お前がそこまで言うのなら、許可する。」

「やったーーーーっ!シン君!!大好きーーーッ!」

カレに抱きつき頬にキスを落として、慌てて自分の部屋に行きガンヒョンに電話した。

私の大好きなバンドNELL

そのLIVEがあると言う事で、ずーッと前からガンヒョンとの約束だった。

「彼らのLIVEに行こう」

普通の高校生の普通の夢。今では皇太子妃になってしまって、普通の夢が中々叶えられなくなっていた。

最近の私の妃教育の上達。

大人しく過ごしていた私に、カレは思い切ってOKを出してくれた。

そして当日カレの言い付けを全部聞き、ギョン君の車で出掛けて行った。

とにかく目立たないように、そしてバレないように。

そんな事位私にだって判るわ。プンプンと怒っている私をガンヒョンは

「殿下はチェギョンの事が大事なのよっ。」と笑った。

その言葉を聞いて、少し真っ赤になった私。






LIVEが始まり私達は皆にばれないように、1番後ろの端に立った。

居ても良い時間は1時間だけ。

最後まで居たらばれてしまう可能性が出る。

だからカレとの約束は1時間。

NELLのメロディと歌詞は私の心奥底まで響き渡る。

いつものCDとは違いLIVEは心にグッと入ってくる。

公務で忙しいカレにもこのバンドの良さを知って貰いたかった。

ボーカルの声が私の体中をかけめくり、意識が朦朧し始めその世界観にトリップしようとした時に突然体を抱きしめられ、瞬間に体が強張った

ヤバイ。どうしよう?ばれてしまった

「離して・・・」振り向くと。

「シン君・・・・?」カレの腕はギュっと私を包む。

「どうしてここに?公務は?」

「終わってきた。」

「だってシン君。」

「つべこべ言うな!お前が傍にいないと退屈なんだよ。」私の肩に顔を埋める。

隣の二人は突然の魔王の出現でビックリしていたが、魔王が心配のあまりここに来たことを判っていた。

屈折してる魔王。

ちゃんと好きだから傍にいたいって言ってよね。

でも、細かいことはいいから今は時間の限りここにいたい。

予定の時間まで後10分位になった。

すると私の1番好きな「白色矮星 」のメロディが鳴り始まった。

なんでだろう?この曲を聴いてると必ず涙が出てくる。

そんな私を抱きしめているカレは、黙って私の涙を親指で拭き取る。

そして私の髪にキスを落とす。

曲が終わりカレは二人に

「今日はコイツに付き合ってくれて有難う。もう行くから。」

涙ぐむ私の肩を抱きしめ、LIVEを後にした。

カレの車で直ぐに宮に戻ると思っていたのに、車は小高い山に入っていった。

「ここは。」

「そっ、前にも来た事があるな。お前に石投げられるところだった。」

フッと笑った。

宮を見下ろし私達は車の中で寄り添う。

お互いの手を握り存在を確かめ合う。

「最後の曲いいメロディだったけど、歌詞はオレ達と違うな。」

私はカレを見つめる。

「でも、間違って本当にあの歌詞の通りになるところだった。」

「シン君。」カレの手を両手で挟む。

「判ってるって。」カレの優しい顔。

思わず私は身を乗り出しカレにキスをした。

カレに身を任せてキスをし続ける。

お互いの唇は開き、角度を変えながらキスをする。

「ずーッと傍に。」

息も出来ないくらいのキスなのに、私はカレに伝える。

「当たり前だ。」

キスをしながら背もたれのレバーを倒し私を上に乗せた。

ビックリした私はカレを見る。

「お前が誘ったんだからな。」

ニッと笑う魔王の微笑み。

「シン君!ここ車の中だよーーッ!」

私は暴れたけど、カレは気にもせずに私のパーカーに手を付けた。