3,4時間目の授業は写生。

各自バラバラになって自分の好きな所を探す。

私は学校の中で1番でかいイチョウの木を選んだ。

何か宮にあるイチョウの木に似ている。

秋が深まりイチョウの葉は、見事に黄色く染まって落ち始めていた。

無我夢中でスケッチしていると。

突然の人の気配。

ドサッと言う音と共にカレが私の体に自分の体重を掛けた。

ビックリした私は「シン君!?どうしたの?まだ授業中だよっ?」言って自分の時計を見ながら、訴えていたら。

アレッ?12時過ぎてる。(汗)

「判ったか・・?」彼の声が私の背中に響いた。

わたしってば、時間も忘れて絵を描き続けていたんだ。

携帯を開くとみんなからのメールが着ていた。

その中にはカレからのメールもあった

「何処に居る。」短い文章なのに魔王の威圧が感じられる。

「シン君、ここどうして判ったの?」と素直な疑問を聞いた。

「偶然通りかかったら、お前が見えた。」と背中越しの声。

「じゃあ、皆の所に戻るねッ」と言って立とうとしたら、腕を引っ張られた。

「もう少し、このままで。」とカレの頭が私の肩に乗る。

私は諦めてカレの言うとおりに、座った。

目の前のイチョウの葉が風が吹いて落ちてくる。

舞い落ちる葉を見ていたら、宮でのユルとの事を思い出した。

寂しくて辛い時、シン君に縋りたくてもカレからは拒絶の態度。

そんな私を見かねてユル君は良く様子を見に来てくれていた。

舞い踊るイチョウの葉は少し前の事を思い出させる。

「誰の事、考えてる?」

「えっ?」

慌てて横を見ると、さっきまで目を瞑っていたカレは私を見つめていた。

その真っ直ぐな目に、何も悪い事をしていないのに慌ててしまう。

急に立ち上がり「さっ、おなか減ったからご飯食べないと」歩き出そうとしたら。

カレの腕が私の体を包む。

そして髪にキスを落としながら「何処にも行くな、ずっと傍にいろ。」

小さい声は私の頭に響く。

カレの腕に自分の腕を掛け、彼の腕の暖かさを確かめる。

あの頃のような冷たいカレでは無い。

ちゃんと私を受け入れてくれた。

温かい心と温かい体に温められた私は「シン君の傍に居るから!大丈夫!」呟いた。

グーーーッ。

せっかくいい雰囲気なのに私のお腹は急に鳴り出した。

「お前ってヤツは。」

頭の上から低い声が呆れたように呟く。

「どうして、こうムードに掛けるヤツなんだ。」

魔王は呆れ始めた。

「これがシン・チェギョンです!お腹すいたから、もう行こう!」

彼の手を引いていこうとしたら。

「そんなにお腹すいてるのなら、オレの事食べるか?」

ニヤッと笑うカレがいた。

カレの魔王のような微笑に引きつった私は「イヤーーッ」と言ってカレから逃げ出した。