携帯にセットしていた目覚めの時間が何時も通りにベットのサイドテーブルの上で鳴り響く

眠い目を擦りながら、何時もの場所に手を伸ばし画面を見つめる

ラインのトークが残っている

漸くお目当ての人物からのラインは、送ってから24時間が過ぎていた

「シン、どういう事?何時でもいいから電話頂戴。」簡単な言葉

ソウルタワーの南京錠の画像と言葉は、冷静な彼女も驚いたのに違いない。

段々目が覚めていき、ベットの中から彼女の電話番号を選んだ

数回のコールで電話が繋がり久々な彼女の言葉に、フランス独特な発音が混じる

発音に違和感を感じなら「今の時間は大丈夫か?」

「返事が遅くなってしまってごめんなさい。昨日はバレエの昇級テストを合格したので、クラスメイト達がお祝いしてくれていたの。」

生粋な韓国語じゃなくなった彼女の言葉に眉間に皺が寄る

「シン、急にあんなラインよこしてどうしたの?離れていても心は一緒だって言ってたのは数日前だわ。」言葉の奥から動いている音がする

「そうだったな。あのソウルタワーに掛けた南京錠、もう2回も外れているんだ。」

この部屋にはオレ以外誰もいないので、シーンと静まり返った部屋にオレの声が響く

だから、相手の電話の微かな音に違和感を覚える

「ヒョリン、誰かいるのか?」素直に聞いた

「・・・いないわ。」少しの沈黙の後の声は上ずっている。

「そっかー。じゃあ、話を続けても良いんだな?」何かを探ろうとゆっくりと言葉を言う

「良いわ。」語尾に彼女特有の言葉の甘さに気が付く

「ヒョリン、どうやらお邪魔なようだ。失礼する。」

彼女の良い訳も聞かずに、通話ボタンを切る

寝ながら話していた体を起こし暫く項垂れていたが、手を顔に当て確認をする

あのヒョリンの声はアノ時に出す声だ。

何度も聞き覚えている彼女の声と癖。

その声は自分じゃない相手に発せられていて、一気に彼女に嫌悪感を感じた

握りしめていた携帯が鳴り響く

画面を見ると、ヒョリンの名前がでる。

出る気はなかったが、思わず通話ボタンを押しスピーカーにする

「シン!お邪魔ってー?、私一人しかいないからー。」

気になっていた音がスピーカーにすることにより鮮明に分かる

ヒョリンの色々な言い訳を聞いていたが

「言い訳はもうイイのか?している最中の女となんか話もしたくない!」通話を切った

クソっ!携帯をベットの上に投げつけ掛け布団を自分に掛け蹲った







朝の電話の後大学に行き、インとファンにヒョリンの事を言った。

ヒョリンに会って別れをちゃんと告げたかったが、自分は韓国を離れることが出来ない

「そっかー、ヒョリン寂しかったのかなー。」ファンがポツリと言う。

「俺が行って確かめて来るから、シンそれまで別れるなんて決めるなよ。」

インから肩を叩かれた

インはヒョリンの幼馴染で、オレにヒョリンを紹介したのもインだった。

「嫌ッ。浮気したのならもう終わりだ。インお前だって自分の女が浮気したら嫌だろう?」そんな事を言いながらも、オレの心はヒョリンからもう離れている

本気に惚れたオトコができたんだ

恋だと勘違いしていたのを終わらないといけない。

「俺はそれでも自分の女を許してしまうだろう。」インがボソッと言う。

「僕も、もしかしたら許しちゃうかもなー。その子が好きで好きで仕方なかったらさー。」ファンはまだ一度も彼女を作った事がない夢見る男子だ。

好きで好きで仕方なかったらーかー、確かにチェギョンが浮気をしてしまったら許してしまうかもしれない。

インとファンの言葉に、本気の恋は今までの自分の理念を崩していく

「何を言われてもヒョリンとはもう終わったんだ。」

机の上を片付けてカバンを持ち上げた

「イン、お前パリに行くってもうクリスマスだぞ。間に合うのか」

「ギリギリ間に合わせる。」親指を立てて笑う

「そっかーじゃっ、もう行く。」

足はソウルタワーでバイトしているチェギョンに会いたくて、駆け出しそうになっていた。






「シン兄貴!」

極寒の中ソウルタワーの入り口に立っているチェギョンの頬がピンク色染まり、あまりの可愛さに目が離せなくなった。

「シン兄貴ー、そんな寒いところに立ってないで、さっさと中に入らないとー。」

サンタの格好のチェギョンに誘われ、慌てて入り口に向かった。

間近にチェギョンを見下ろすと朝の嫌な出来事が忘れてしまうほど、ホッとする。

「シン兄貴。アルフレッドをボクに渡したはどういう事?」

目上げる眼差しはキラキラと眩しい

「アルフレットはオレが5歳の時におじい様から頂いた親友だ。」

ようやく会えた可愛い顔に寒さも忘れる

「そんな大事な友達をなんでボクによこすんだよ!」

可愛い顔の目が吊り上っている。

「アルフレットはずーっとオレの傍にいてくれた。オレの分身をお前に預ける。大事にしてくれ。」

「だから、何でだよ!」頬のピンクが赤色に変わっていく

ちょっと怒り気味のチェギョンも可愛くて仕方がない

「何でだろうな。」

笑いながら言う、本当の意味を言いたいがまだ早すぎる

真っ赤な鼻をギュッと掴み

「ハッピーとアルフレッドの世話を宜しくな。」

鼻を掴まれ痛がっていたチェギョンから手を離してやる

「今日は忙しいんだ。お前の顔を見に来ただけだから。」

手を上げ心残りなまま場を離れる

「シン兄貴!」

チェギョンの声を聞きながらロープウェイに向かって歩き出した







可愛いチェギョンの顔を見れて嬉しかったが、これから嫌な場所に向かおうとしていた

自分の運転している車は北へ北へと向かう

ようやく着いた場所は大きな門が聳えていた

観光客たちの見学時間も過ぎ、門番たちはオレの車と顔を認識して顔を引き締めていた

大きく開かれた門の間をゆっくりと進み、久々な場所に向かう

車から降り、重厚な建物に溜息を吐き「ここは何時も息苦しいな」

大学に通う理由でこの重苦しい場所から飛び出したのは数年前

それでも、1カ月に1回はここに顔を出すと言う条件だだった。

女官達の先導により奥の間を目指す

韓国の文化歴史が、ギュッと詰まった建物はオレのキモチを萎えさせてくれる。

何時もの場所に着き扉が開かれた

そこには、父、母、おばあ様がソファに座っていた

でも世間では、おばあ様は皇太后、父は皇帝陛下、母は皇后と呼ばれていて、自分も来年の春には皇太子として世間にデビューしないといけなかった。

「シン、久し振りですね」

にこやかに笑うおばあ様はオレの大事な人だ

「髪を切りましたね。スッキリしてイケメン度が上がりましたよ。」

笑い顔が可愛いおばあさま。

父も母も声を掛けてくれたが、淡々と言う言葉に愛情は感じられない。

「来て早々で悪いのだが、来年の春にはお前も皇太子として表舞台に立たないといけない」

「シキタリにより、皇太子妃とな。お前が連れてきていたミン・ヒョリンはバレエに夢中で皇太子妃の事は忘れているみたいだがー。」父上が言う

「そのような者が皇太子妃に選ばれるのは喜ばしい事ではありません」母の言葉も重い

「ところでシン。この間片付けをしていたら、あのお方の遺品が出て来たのだ。」

おばあ様が、テーブルに置いてあった古そうな紙を広げて中身の言葉を言い始めた

「どうやらお前には許嫁がいるそうだ。あのお方の言葉は亡くなっても絶対です。」

「許嫁?」初めて聞いた

「そうです。あのお方の本棚を整理整頓していたら、突然出て皆驚いているところなのです。だからシンお前は連れて来たミン・ヒョリンよりも。」

「おばあ様、私はミン・ヒョリンとは別れました。」皆が驚く言葉を言い放った

「なんですと!」三人が顔を見合わせひそひそと話し合っている

「では、突然の事でシン、悪いのだが許嫁と婚姻してー。」言葉を最後まで言わせない

「私は、皇太子を辞退いたします。」

深々と頭を下げ、目を閉じた先には、チェギョンの笑い顔が輝いて見えた。