この道は、城北洞へ向かっている。

大使館や高級住宅街が並ぶ街なので、私レベルなんか来た事もなかった場所

歩いている人達も中々いなくて、すれ違う車達も皆外車か高級車ばかりだった。

「シン君、ここは?」どうやら目的地に着いたみたいだ。

車を高い塀に囲まれた所に停めた。

車の運転の時に掛けている眼鏡を外して、シートベルトを外している。

メガネ外しちゃうんだー。

シン君って、眼鏡掛けていると3割り増しでもっとカッコ良くなっちゃうから眼鏡姿をもっと見ていたいな。


降りて助手席の扉を開け「降りなさい。」大きな門の所でカードをかざすと、扉が開く音がした。

開いた先には、この間のカン・インさんの家と同じくらいの大きさの韓国伝統の韓屋があった。

そして庭が綺麗に整備されていて、この家とのバランスが良かった

ふとシン君を見るとスーツを着ている筈なのに、何故か王様の韓服を着ている姿に見えてしまった。

目をパチパチとして、もう一度シン君を見るとちゃんとスーツを着ている。

見間違いだよね、シン君のアジアンクールの顔とこの韓屋の雰囲気がとても合っていたからかなー。

「此処は、親から譲り受けた家だ。」私の手を取り、中に招き入れる

「シン君の家?」シン君ならマンションみたいなところに住んでいるかと思っていたのに、韓屋なんて意外だけど似合うなーと、家の中に入ろうとしているシン君に見惚れていると

「チェギョン。お出で」

招き入れられた先には、古びた内装ではなく、それとなく伝統も残しながらモダンな感じな部屋だった。

「すっごーーい。」周りを見渡し目がキラキラしてしまう。

「部屋見ても良いですか?」雑誌に出て来そうなくらいに素敵な部屋に興奮してしまう

「良いけど、家を空けていたから汚いぞ。」キッチンに向かいスーツの上着を脱ぎヤカンを取り出している。

「私がやります。」慌てて手伝おうとしたら

「今日は僕がやるから、キミはこの家を探索してなさい。」頭をポンポンされた。

「シン君に頭撫でられるのが、すごく好き。」

好きな行為をされて私は素直にカレに伝えた。

「キミは、無邪気で可愛い。」ヤカンをガス台に乗せてスイッチをひねった。

色々な部屋の扉を開けていき、中をチョッとのぞくと物が置いていなくて生活感がなかった。

又部屋かなと思い開けた先には、寝室で2面に大きな窓があり、そこから見る外の景色は木々が沢山あり素敵だった。

そして大きなベットの掛布団が少しずれている所に、ここにシン君がーーっと赤面してしまい、慌てて隣のドアを開けたらバスルームだった。

黒いタイルのバスルームは素敵過ぎて、シン君の趣味の良さを改めて感じた

ドラマで良く見るバスタブがあり、1面大きな窓ガラスは庭の池の景色が見渡せれるようになっていた。

此処でシン君がお風呂入ってるんだー。想像してボボボッと真っ赤になってしまう。

扉を握りしめて真っ赤になっていると「コーヒー冷めるぞ」私の肩に自分の顔を乗せてくる

ビクッとしてしまった私は、一気に熱くなりどもってしまう

「はっ。はい。いますぐにー。」急に結婚と言う真実味が分かり、ままごとじゃない事を感じてしまう。

「いつも一人だったが、今度からはチェギョンも一緒だな。」

肩に響くシン君の声に、背中に電流が走ったようになり「っ!!」飛び上がってしまった私を、抑え込むシン君。

「驚かせたな」肩に顔を乗せていたシン君の顔が動き出す。

「コーヒー冷めないうちに飲まないとな。」

一人で熱くなってしまった私を置いていくシン君を、慌てて追いかけて行った。







シン君が淹れてくれたコーヒーをソファに座り飲んでいると。

「この家には祖父祖母、父母、姉とで住んでいた。

僕はこの家の跡取り息子という事で、甘やかされて育ち結構偏食になってしまった。

大人になっても、その食生活は変わらず食べるものは限られていた。

高校の時の先輩に泣き付かれて商店街の事で伺ったあの日

キミのお父さんの入院とか段取りをして帰ろうとした時に

店にいた可愛いキミに一目惚れしてしまった

そして、キミの作った食事は、僕があまり嫌、殆ど食べない物ばかりで作られていたが、世界一美味しかった。

好きな人が作った食事がこんなに美味しいモノだとは知らなかった僕は、凄い衝撃を味わった。

毎日キミの作った美味しい食事が食べれたらどんなに幸せかと願ったが、しょせん僕と君の年の差があり過ぎて、僕のキモチをキミに伝える気はなかったが。

「シン君がそんな思いでいてくれていたんなんて、あの時の私はちょっと面倒だなーって思ってたけど、ちゃんと料理の最後には愛情を入れなさいとパパに言われてたから、それだけはちゃんと入れてたの。」

「そっかーっ。」小さな呟きと共にコーヒーを飲み干した。

私は、コーヒーの入ったコップを手に持ちシン君を見つめていたら

シン君にカップを取られた

「キミとの初めてのキスは、チャプチェの味がした。2回目は」シン君の顔が近づいてきて、唇は重なり合う。

コーヒーの香りは一気に溶け合い、口いっぱいに広がる。

この人とのキスって本当にキモチ良く、そして私の性を目覚まさせ無我夢中に求め合う唇と舌は、絡まり淫らな音を響き渡らせる。

時間が分からなくなるくらいキスをしていたのに、突然シン君が離れていった。

「ぅっ。」まるで自分の半身が離れてしまったような感覚になってしまい寂しい顔になっていると

「2回目のキスは、コーヒーの味がした。」

真剣な表情に色気を感じた私は、もっとキスをして貰いたくてシン君にしがみつく。

「今日は、キスだけじゃ終わらない。」私が着ていたカーディガンが脱がされていく






ぐったりと体をソファに寝かされ、大きく熱い息を吐く

「キミの身体は計り知れない」乱れた前髪を直し、荒い息を繰り返すシン君。

「僕をこんなに興奮させてしまうなんて。」ワイシャツのボタンを1個二個と外し、袖のボタンも外す

体の自由が利かず、ボーっとシン君の様子を見ていた私は、カレの手が伸びて来たのを捉えた

「前の彼は、自分が良ければ良いタイプで。だから痛くて痛くて嫌いだった。」

「チェギョン。じゃあ、今日は止めよう。慌てずにゆっくりと。」シン君の指が離れて行こうとしたのを自分の手で止める。

「ううん。又痛くなるかと不安で怖いけど、シン君となら。」続けてとお願いする

「不安とか怖いそんなワードを抱えたままじゃ、ダメだ。」私の頬に大きな手を当てる

その大きな手に私の手を重ね

「もう子供じゃない。前のトラウマで体がビックリしているだけ。」真剣な目でシン君を見る

暫く睨み合っていたが

「全く。キミは結構頑固なところがあるんだな。」深い溜息

「嫌いになった?」下唇をギュッと咬む

「まさか、益々可愛いと思う。」シン君の指は咬んだところを直させる

カレの顔が近づいて来て、優しくキスをされる。

二人で何度も唇を交わし、お互いの気持ちを伝えあう

好き。

大好き。



























「ガンヒョン!待ったか?」ギョンが待ち合わせのチェギョンのおじさんの食堂にやってきた。

「ここ初めてだけど、味はどう?」椅子に座りながらメニュー表を見る。

「ここわねー、味が最高に美味しくて、量が半端なく多いの!」ウットリとしてしまう。

「おじさんが足の怪我でお店がお休みの時は、泣いてたわ。だから、ギョンの所で早く治ってくれて、本当に助かったの。」

「あっ、ギョン院長先生。こんばんは!」チェギョンのママがコップを持ってきた。

テーブルにある水のボトルからギョンのコップに水を入れてあげる。

「シンさん、お久し振りです。旦那さんはどうですか?」

ニコッと笑った皺が可愛い。私はこの皺にやられてしまった。

「足が治って、毎日散歩してますよ。ほんとこれもギョン先生のお陰です。」チェギョンママが笑う

そこへチェギョンパパもやって来た。

「ギョン先生。お久し振りです。入院中はお世話になりました。」

深々と挨拶を交わして、今日の食事は奢りだから好きなモノを頼んでくださいと言った後。

「あれ?今気が付いたんだけど、ギョン院長とガンヒョンちゃん、何で一緒なの?」チェギョンママが不思議がる。

私とギョンは顔を見合わせ「私達、付き合っているんです。」ギュッとお互いの手を握り合う


「へっ?」チェギョンパパママの目が落ちそうなくらいに驚く。


「二人の年の差、あるんじゃない?」チェギョンママが私達を見比べる。

「えっ?確か18です。気にしませんよ。」ギョンが私の手を撫でる

「おじさん、おばさん、大丈夫よ。ちゃんと真剣に付き合ってるから。」二人が心配しているみたいだから、大丈夫だって安心させた

「そっかー。ギョン院長はイイ人だし、ガンヒョンちゃんはしっかりしているからなーっ。2人が良ければ。良いかッ」チェギョンパパとママが頷き合っていると

店の扉が開いた

「ただいま。」チェギョンが扉を開けて中に入ってきた。

「あれ?ガンヒョン、ギョン院長。今日はここでデートなの?」

私達を見てちょっと驚くチェギョン

「うん。急におじさんのご飯が食べたくなったから、ここで待ち合わせしたのよ。」

「じゃあ、ちょうど話する手間が省けた。」

うん?チェギョンの頬がピンクに染まり色っぽく見える。それになんかフワフワとしているよ。大丈夫なの?

店の扉が開き又人が入ってきた。

確かッ「イ・シン准教授?」「シン!」「あれ?准教授?」皆の声が重なる

チェギョンが准教授の元に寄り添うと、准教授がチェギョンの頭を撫でてあげている。

チェギョンパパ達が「准教授お久し振りですあの時は本当にお世話になりました。お陰で早い退院になり、又食堂が開けるようになりました。これも皆准教授のお陰です。

イ・シン准教授の為なら何でもしますよ。」オジさんは丁寧にお辞儀をした。

「チェギョンなに?そこで一緒になったの?」

チェギョンママがチェギョンに聞いている

「シンさん。退院おめでとうございます。今日はお二人にお話をしようと伺いました。」頭を下げた

「はい?なんでしょう?」ニコニコと話を待っている


「では早速ですが、お言葉に甘えて、チェギョンさんと結婚させてください。」

准教授のしっかりとした声が食堂に響き渡った。